ジャンプ流vol.2岸本斉史 NARUTO -ナルト- 創作の秘密に刮目せよ!


ジャンプ漫画家の創作の秘訣を探るジャンプ流。今回は「NARUTO」で有名な漫画家岸本斉史さんの創作の秘訣を探ります。岸本さんが漫画家になった経緯や、創作活動・クリエイティブ活動のヒントとなる知識をまとめました。

◆書誌情報
「ジャンプ流 vol.2 まるごと岸本斉史」
集英社 2016/1/21

デビュー秘話

・絵が好きになったきっかけは「子供の頃親戚のおじさんが絵の上手な人で、お絵かきを一緒にしていくうちに自分も絵がうまくなりたいと思った」こと。
・当時からジャンプがマンガ雑誌の頂点だと思っており、ドラゴンボールの鳥山明先生に憧れていた。
・中学生の頃に一旦漫画家なんてなれるはずがないと諦め野球部に入るが、街角に張られた1枚の大友克洋先生の「AKIRA」の映画版のポスターに、あまりのかっこよさとセンスの良さに衝撃を受けた。その絵との出会いから本格的にマンガ家を目指そうと行動を始めた。

AKIRA 大友克洋 岸本斉史先生は遠近感の付け方に特に感銘を受けたという。1時間ぐらい立ち尽くしてポスターに見入っていたとか。

 
・絵で飯を食っていくことを心に決めた岸本先生は芸術系の大学に進学。漫画制作に没頭していく。
・大学2年の時、ジャンプのホップステップ賞に自分の「カラクリ」が入賞。ようやくプロとしてのスタートラインにたてた。
・矢作(やはぎ)担当の元で、マンガ修行の日々。ジャンプ作家の登竜門である読み切り作品のネーム作りの毎日を送る。
賞を取ってから本当の戦い、苦しい生活が始まった。気持ちも落ち込んでしまい、一番つらい時期だった。
・自分の意識を根本から変えないといけないと思い、「マンガとは何か?」を自分の頭で考え直すところからやり直した
・人気映画の台詞を全部書き出したり、近代小説からテーマの扱い方のパターンを学んだり、自分がエンターテイメントだと感じた物に対し、何がどう面白いのかを考えるようにした。物語の作り方や見せ方も一から自分のやり方で勉強し直した。
・気になったポイントや思いついたアイデアはノートに書き出し、その結晶として自分なりのノウハウをまとめた虎の巻を作っていた。
・これらの自分の学んだことの集大成として「NARUTO」を描いた。「これがだめなら別の雑誌に行くか」との思いをこめて。「NARUTO」は見事にジャンプの編集会議を通過し、連載デビューが決定した。
・当時は没に苦しんだが、提出したネームの数はそれほど多くはなかった。当時は作品ごとにジャンルを変え、そのたびにきちんと資料を集めて調べて描いていたので、没になるとそれが使えないのがキツかったという。ただ、当時のアイデアは「NARUTO」連載途中で活用したり、決して無駄ではなかったとのこと。
・NARUTO連載開始当時は19時間机に向かっている状況だった。緊張で体調不良や嘔吐など、重圧に苦しんだこともあったという。
・マンガ家になりたい人へのアドバイスとしては、「自分の作品を好きになり、その世界が本当に実在していると思えるくらい自分でノッていけることが大切」だという。あとは根性が大事とのこと。

技術面

・「NARUTO」のテーマは「認め合う」こと。異なる価値観を持った人がお互いを「認め合う」大切さをテーマにしている。
・動画の演出や効果をマンガに昇華させた表現を用いている。描線で動きの流れを作り出していく。
・キャラクターを描くときはしっかり地に足を着けていることを意識している。下半身、足の重心がかかる位置はポーズにより微妙に異なる。自らが描き出すキャラクターがどうやって関節や筋肉を動かしているか、どこに力がかかっているのかを理解し、的確に描き出す。シンプルな立ち姿でも重心と地面との接点が意識されていれば、おのずと佇まいがカッコよくなり、人物が放つ重厚感も表現できる。ファンタジー作品だからこそ、リアルな部分では嘘はつかない
・アニメのエフェクト演出は技の演出の参考になる。アニメを見ながら技のエフェクトが描かれたシーンを止めて模写することも多い模写をすることで自分のストックも増える
・脳内で生み出された技のイメージを的確に表現するためにわざとペン先が開いてしまったGペンや複数のコピー機なども活用していく。
・カメラワークもアニメ、映画と言った映像の研究から影響を受けている。漫画のコマに落とし込む際のカメラレンズの使い分けは見事で、映像的な表現は高いデッサン力と正確な物理計算力の証である。
絵は静止画であるが、マンガはその絵を使って「動」の表現をしなくてはならない
・俯瞰の絵をゼロから描くときは印刷に出ない青鉛筆でパースの線を書くこと。パース線を参考にひずみを入れたり、細部を意識することで上達していく

付録DVDよりメモ

線画について

・最初に下書きできっちり書き込む。ペンはなぞるだけ。このほうが気持ち的に楽でデッサンが狂わない。
・ペン入れのコツとしては、自分なりにストローク、描きやすい方向が決まっている。描きやすい方向(例えば左下から右上)に沿うように紙の方を回していく。
・下書きの消しゴム入れる作業は今ではほとんど自分でしない。昔は消し残しが印刷に残って怒られていた。
・シャーペンを使って、飽きると鉛筆を使ったり、その逆もある。筆圧の変化を楽しむようにしている。
・POSCAの極細ペンがちゃんとホワイト塗れるので活用している。

彩色について

・彩色はコピックを使っている。ムラが出来やすいので、広いところを一気に塗ってしまう。
・キャラごとにアシスタントさんと色の設定を共有している
・作画時間は何を描くかによって決まる。
・色の変わり目を暗くすることを意識
・学生時代に石膏デッサンをやったので、明るいところと暗いところの境目を最も暗くしたり、影の下の方は照り返しで明るくなることを意識するようになってから立体感を出せるようになった。
・ハイライトは好きではないが、カラーの時には入れる。光っている感じが出る。
・コピックは、パレット使わなくていいから楽。今はみんなデジタルで色塗りをしている。アナログかデジタルかはこだわるところではないので、めんどくさくないほうで進めていきたい。

漫画と漫画家について

・絵を描くのは好きだが、描き始めるまでが億劫の時も。でも描き始めると楽しくなってくる。
・伏線については、大まかなやりたい事は変えずに、描きながらその場その場で細かいところは変えていく。
・最初の頃、なかなか連載が取れなかったとき、担当さんにジャンプ連載を諦めないように説得された。週刊少年ジャンプは若いうちに挑戦するのが良くて、他の雑誌に行く前にもう一度頑張って見て欲しいという。その結果として「NARUTO」が生まれ、世界的な大ヒットに繋がった。何度も繰り返し少年ジャンプで描くことを進めてくれた担当さんがいたから「NARUTO」は生まれた。
・「漫画家になる」それしか考えてなかった。他のことはできないというか、そこにいくしかなかったというか。そこに行ったら楽しい人生だろうなぁという思いがあった。
・漫画家は悔しいことも一杯ある。軽装備でジャングルに放り出される感じだ。事前にジャングルでも生きていけるノウハウや力をつけてから行かないと苦しいことになる。本当に漫画家になりたい人は勉強した方がいい。ジャングルに慣れてくると楽しくなってくる。簡単には漫画家になれないが、やる気があって自分で武器をそろえて頑張れる人がマンガ家になったら凄く楽しいと思う。描いてるときは苦しいけれど、いいネームや物語が描けるとめちゃくちゃ楽しいし、嬉しい

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参考リンク

岸本斉史 Wikipedia
ジャンプ流! vol.2 まるごと岸本斉史