東京上野の国立西洋美術館で2018年10月16日(火)~2019年1月20日(日)開催しているルーベンス展に行ってきました。ルーベンスといえば画家の王とも言える存在。ローマ、ルネサンスなどの古典作品を熱心に研究し、自分の作品に応用し昇華しました。当時としては類を見ないほどの卓越した技術。(「フランダースの犬」で最後に主人公が見た絵はルーベンス作。昇天するのもうなづける画力)
これまで何度かルーベンス作品を見ていますが、結果として今回も大満足。絵から得られる栄養がものすごくて。アートやデザインに興味ある人は必見です。
チケットはスマートフォンを持っている人はe-tixが便利ですね(チケットぴあは登録がめんどくさい)。→ルーベンス展-バロックの誕生 e-tix購入ページ
内容
日本の美術館あるあるですが、写真撮影が全面的に禁じられているので(日本が所蔵していない借り物作品は撮影できない。例えば所蔵作品が多いアメリカのメトロポリタンやMOMAは基本写真取り放題。)ルーベンスにちょっと興味がる人はGoogleArtに行って彼の作品を見てみましょう。■参考→グーグルアート ルーベンス
実物作品と画像、図録でここまで違うのか、という印象。間近で見るルーベンスの絵は色彩やタッチから受ける視覚情報が多く、これは写真ではまだ汲み取れない領域なのかもしれません。モニターや印刷では感じられない迫力、まるでそこに血が通った人物が生きているかのような作品群。
ネットの画像は実物から受ける印象ともだいぶ違いますね。上に引用したAbundanceも実物は全然色合いが違います。
感じたのが、やはり西洋絵画はキリスト教、宗教、神話などの教養がないと理解するのが難しいということ。それがないと感想も「ただのうまいですね!」で終わってしまいます。当時の絵画は聖書がインスピレーションとなり、文字が読めない人でもわかりやすく聖書や神話のストーリーを伝えていく役割が多かったといいます。ルーベンスも取引先の貴族らと教養を深めていったそう。宮廷画家として教養が必要なんですね。その製作者の意図するものを汲み取るためにも宗教の教養って大事だな、と思いました(聖書は大学時代に買ったけど分厚くて全部読めていない)。
画力でいえば日本の漫画家だと小畑健先生が歩く画力として尊敬されていますが、ルーベンスも当時としては相当卓越した画力でした。宮廷画家として受け入れられ、教会の宗教画を依頼されていることから当時から世間の評価も高いです(音楽でいうバッハとはえらい違いだ…)。完璧主義なところもあって、一緒にコラボレーションした作品を作る相手に強い要求をして険悪な仲になったこともあるそうです(「誰があんたについていけるんだよ」ってよく言われたでしょうね)。
絵描きや3DCG、デザインなど視覚芸術を仕事にしている人は見て損はないです!絵から得られる栄養素がものすごい。目の経験値を積むためにもルーベンスは絶対に押さえておくべきだと思います。
図録は表紙はカッコいいものの、印刷の質が気になり買いませんでした。実際に見ていただくとわかるのですが、ルーベンスの実物はたくさんの色彩や陰影の表現描写で構成され、それを肌で感じることができます。図録に印刷されたものは紙の質の問題か、バッサリとそうした情報が削ぎ落とされて、悪い意味で非常にわかりやすくなっています。(例えば境界線のぼかしがなくなり輪郭がはっきりくっきりしている。)音声ファイルでいう元の音質のWAVEファイルから一気にMP3の低音質にチューニングしたあの感覚に近いものを感じます。
図録よりも併設している西洋美術館の本屋にあるタッシェン(ドイツの美術出版社)の本が安くて印刷の質も良いのでオススメ(実際に自分で手に持って見てくださいね!)。
あと、私がデザインスクールに行っていた時、海外の巨匠のデッサン集を大量にコレクションしていました。素描は印刷も綺麗に出るし、腐らないのでオススメです。
↓ルーベンスの素描集。洋書に多い素描集は美術の宝。素描は絵画の設計図。素描は印刷もよく出て、腐らない。
参考・出典
・Google Art Project – Rubens
・国立西洋美術館 ルーベンス展
・ルーベンス展-バロックの誕生|TBSテレビ
・ピーテル・パウル・ルーベンス(Wikipedia)