今回紹介するのは人体をテーマにCGソフトでの造形テクニックをまとめた本です。出版されたのは2008年。コンピューターグラフィックスで10年前(2018年現在)の本はどうなの?と思うかも知れませんが、人体解剖学を中心に今に通じるアートの根本的な知識を得られます。ソフトの技術の移り変わりはあれど、アートの根本は変わらず。筋肉や骨格についての特集が豊富です。今回も3DCG初学者目線でレビューします。
◆書誌情報
「ヒューマンCGキャラクター―リアルな「人」のCG制作テクニック (CGWORLD ARCHIVES)」
ワークスコーポレーション別冊書籍編集部 (著, 編集)
ワークスコーポレーション 2008/9/3
目次(Contents)
解剖学に基づく人体CG解説書
人のモデリングをするに当たって解剖学は欠かせない知識です。この本は人体の解剖学をベースに説得力のある造形の方法を教えています。人体の仕組みをベースに、どのように説得力のあるポリゴンを組み立てていくかが複数のアーティストの方法論によって説明されていきます。
作例の分量は多いものの、解説はあっさりめ。各自3DCGソフトウェアは操作できることを前提に進むので対象はある程度3DCGで作品を作ってきた中級者以上の印象です。
文章も小さな文字で専門用語がびっしり。作例の過程の展開が早いため情報量に圧倒されて、全部吸収しようと意気込むと挫折しそう。昔の本なのでソフトのUI周りは古く感じます。やはり今の時代はソフトの使い方はネットのチュートリアル動画で学んだほうが頭に入ると思います。
時代に関係ない表情や人体の解剖学などアートの根本の知識は役に立つし、目の付け所が良い企画もあります。ただ全体としては人体モデリングに関して広く浅く扱ったソフトウェアの使い方本ですね。
気に入った作例ベスト3
本書で気に入った作例を紹介します。
幼さの残る外国人少年
リグ(骨組)の構成
想像以上に分量は多く、上記3点以外にも和服の女性や老人などたくさんの作例があります。
今から10年前の3DCGの作例をたくさん見る事が出来たので面白かったです。スーファミ世代としては、3DCGは10年前の段階でも十分凄いなぁ、と感じます。
総評
デザイン ★★☆
わかりやすさ ★★
お奨め度 ★★☆
先にも触れましたが、この本は既に業界に居て人体CG作成に試行錯誤している中級者向けです。作品過程の展開が早く、どんどん完成形が出来ていき、解説も簡素です。広く浅くと言った感じで、その代わり作例はとても多いです。
解剖学という普遍的なアートの知識をちょこちょこと学べるのが本書をだたのソフトウェア解説本にしない利点です。しかし、それぞれの専門書にはかなわない印象です。本格的に人体解剖学を学ぶには、粘土造形や美術解剖学の専門の本を読んだ方が詳しいし理解が深まります。…とはいえ本書もかなり頑張っている方ですけれどね。
初心者が読むには情報が多すぎて圧倒されると思います。読者層は中級〜上級者、もしくは業界人でパラっと眺めて自分のニーズにピンポイントで抑えた特集をつまみ食いするのが本書の良い使い方でしょう。それにしても3DCGソフトはこうした本を読むよりも、動画で学んでしまうのが一番だと思います。