ポートレートスカルプティング 粘土で作る頭部:アナトミーから表情まで【アート参考本レビュー】

今回は人体の中でもヒトの頭部・顔に焦点を当てた粘土造形の本を紹介します。同シリーズでは前回レビューした身体を扱ったものがあります。本書はポートレート(顔のパーツ)に重点を絞って、これまでに無い徹底的な解剖学の知識と図版で、どうヒトの顔が成り立っているのか解説しています。

◆書誌情報
「ポートレートスカルプティング 粘土で作る頭部:アナトミーから表情まで」
フィリップ・ファラウト (著), チャリシー・ファラウト (著, その他), Philippe Faraut (著), Charisse Faraut (著), 平谷 早苗 (編集), 株式会社Bスプラウト (翻訳)
ボーンデジタル 2016/10/31

要点のメモ

・写真もリファレンスとなるが、アナトミーをしっかり理解した後に補助的に使う。
・適度な照明の下、100mmのレンズを使って撮影した写真が理想。
・リファレンスの意味では色は邪魔にしかならないので色つきの写真はモノクロに変える。
・「この対象の形状はこうなるべき」という思い込みを捨てること。純粋にフォームとボリュームそのものに注意を払う。
・全てのボリュームは面に分けられるため、面をしっかりと意識する。
・顔にばかり集中して他のボリュームバランスが乱れてしまうことが多い。しっかりとよく観察する。
・他ここでは書き切れない圧倒的な量の粘土造形&解剖学の知識。

気に入った作例ベスト3


少女のポートレイト

 


兜を被った戦士のポートレイト

 


表情のポートレイト

 

総評

網羅性   ★★★★★★★★
作品例   ★★★★★★★
読みやすさ ★★★★★★
有益性   ★★★★★★★★★
満足度   100%

粘土造形の本ですが、解剖学の知識を学びたい人にはとても有益な本です。作例のレベルがどれも高く、図版によって段階を示しながら詳細に解剖学の知識を適用していきます。これまでに多くの美術解剖学の本を読んできましたが、美術解剖学は粘土造形で学ぶのが一番身につくのではないかと思います。この本は頭部がメインですが、人の顔は最も複雑で学ぶべき箇所が多いパーツです。本書では目、口、鼻、耳、髪、頭蓋骨などそれぞれのパーツに対して徹底的な解剖学の知識で造形に取り組んでいます。

こうした色あせない知識は美術全般の知識の底上げに繋がります。ちょっと高い本でしたが、買って良かったです。

関連記事

フィギュアスカルプティング 粘土で作る全身像:アナトミーと面からの構築【アート参考本レビュー】

 
前の記事フィギュアスカルプティング 粘土で作る全身像:アナトミーと面からの構築【アート参考本レビュー】
次の記事大畠雅人作品集 ZBrush+造形テクニック【アート参考本レビュー】