デザイナー必携のHの本といったら…今回は「Helvetica: Homage to a Typeface」をレビューします。
◆書誌情報
「Helvetica: Homage to a Typeface」 (「ヘルベチカ タイプフェイスへのオマージュ」 未邦訳)
Author(s): Lars Müller ラース・ミューラー:著
出版社: Lars Mueller; 2nd版 (2002/11/15)
Design: Integral Lars Müller
ISBN:978-3-03778-046-6
急にHな本と言われて何のことだか分からないかもしれません。この本はタイトル通りヘルベチカ(Helvetica)というスイスで生まれた万能書体をテーマにした作品集です。ヘルベチカはサンセルフ体の単純明快な印字体で、広告や看板、文学作品などで非常によく使われています。デザイナーが欧文書体に困ったら、まずはこの書体を使うといっても過言ではありません。現代で普通に生活していれば、このヘルベチカという書体を目にしない日は無いといってもいいでしょう(身近なところでは駅の看板など)。それぐらい幅広い分野で活用される美しい書体です。
この本はヘルベチカが使用されている400以上の作品が収録されています。文章はほとんど無く、その全てが作品の図版で埋められています。デザイナーにとって、インスピレーションソースとして活用できるのは間違いないでしょう。
洋書なので海外の作品がメインですが、海外のタイポグラフィセンス(文字をどう美しく扱うか)について学べる1冊です。これを見ればあらゆる分野での活用法を参照することができます。
本のサイズも日本で言う文庫本に近く、手頃なのが良いですね。
ヘルベチカは私がデザイン学校に通っていたころ、同級生の書体マニアの人から話を聞いて知りました。確かにあらゆる分野でメッセージを明確で効果的に伝えることができる最高傑作の書体だと思います。
どこでも使えるし、とりあえずヘルベチカを選べば問題ないことも多いです。万能でありながらスタイリッシュです。私がずっと長年愛用していたWindowsからMACユーザーに乗り換えた理由も、この「Helvetica」が最初からインストールされていることが大きいです。
Windowsには「Helvetica」の代わりに「Arial」という書体が最初から入っていますが、これは「Helvetica」と比べてちょっと個性が強いし、どこでも万能に使えるとは言えない印象です。Appleを一流企業に押し上げたスティーブジョブズが母校のリード大学でタイポグラフィの授業を勝手に聴講していたというのだから、Macにはデザインに関してのこだわり、美意識が高いということもあるのでしょう。デザインする人にMacユーザーが多いのはこうしたデザインに関しての美意識に共感するのかもしれません。(一方で映像やゲームなどでの3DCG(Mayaとか)はWindowsの方が主流なのが不思議ですけれど)。
マックス・ミーディンガーによってスイスのハース社のために1957年にデザインされ、 当初はハース社のグロテスクと呼ばれていたこの書体は、19世紀後半のグロテスク体をもとにしたものであったが、改訂によりサンセルフの一種ネオグロテスクの仲間に入れられた。そして1960年代にはヘルベチカ(ヘルベチカとはラテン語でスイスの意味)と改名され、米国に紹介された。最近、再び人気のある書体として、若手デザイナーがポスターやイベント広告に使用することが多くなってきている。本書はラース・ミューラーがこの現代デザインのアイコンに対して敬意を表するために出されたもので、もちろん、ミューラー自身も自分の作品にこの書体を好んで用いている。(Amazon商品説明より引用)
ヘルベチカに興味を持った人、もしくはデザインに興味を持った全ての人に手に取って欲しい「Helvetica: Homage to a Typeface」のレビューでした。