PS2で2007年に発売され、2016年にPS4でリメイクされた「オーディンスフィア レイヴスラシル(odin sphere leifthrasir)」(開発:ヴァニラウェア、発売:アトラス)は非常に美しく温かみのある2Dグラフィックで描かれた創作ファンタジーです。グラフィックを見てピンと来た人は絶対に体験するべき作品です。私のプレイ時間は50時間ほど。大満足の出来で個人的には2016年のベストゲームです。
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北欧神話を元にした物語は甘く、切なく、美しい。
本作は北欧神話、特にワーグナーの楽劇「ニーベルングの指輪」をモチーフに開発元ヴァニラウェアが得意とする温かみのある絵本調グラフィックスで描いた創作ファンタジーです。北欧神話を元にしたゲームでは「ヴァルキリープロファイル」(発売:スクウェアエニックス、開発:トライエース)が有名ですが、あちらは神の視点から冷酷かつシリアスに人の生と死を描くのに対して、こちらは劇場型にそれぞれの主役キャラクターのエピソードを一つずつ紐解いていく形となっています。複数の操作キャラクターがおり、描かれる物語も異なります。ゲームは少女アリスが物置部屋で見つけた本を開いていくところから始まるのですが、その一冊一冊がそのキャラクターのエピソードが書かれた本という設定。演劇チックで舞台的なセリフ回しは好きな人なら溜まらないでしょう。BGMや音楽、サウンド面でもクワイアを利用した楽曲など神話的世界観が綺麗に演出されています。
ストーリーは章ごとに主人公が入れ替わる。演劇チックなセリフ回しは好きな人にはグサッと刺さる。
偉大な力を持つ父オーディンの元でヴァルキューレ(戦場で戦う槍戦士)として戦場を駆け巡るグウェンドリン、とある王国の王子であったがウサギ(プーカ族)の呪いにかけられてしまったコルネリウス、妖精の国の小さなお姫様のメルセデス、竜殺しをやってのけるほどの実力を持つ黒き戦士オズワルド(ゲルマン伝説に登場するジークフリートがモデル)、滅亡を遂げた国の王妃であり、今は森にひっそりと暮らしている森の魔女ベルベット。この5人の主人公それぞれにドラマが用意され、みな自分の宿命に立ち向かっていきます。
リメイク版についている「レイヴスラシル」(Leifthrasir)は生命を受け継ぐ者という意味で、古ノルド語のリーヴスラシル(Lifthrasir)が元になっているとのこと。5人の主人公達が織りなす物語は交錯していき、世界の命運を分けるほどになります。最後はどういう結末を迎えるのか、世界はどうなっていくのか…私は止めどきが分からない程没頭しました。
絵本のような温かみのある美しい手書きグラフィックは極めて美しい。美味しそうな食べ物、料理は成長要素。
本作ではステージに加えて小道具やアイテム、UIなどすべてにおいて可愛く綺麗にディフォルメされた2Dの手書き風グラフィックスで統一されています。素材となるアイテムを集め、科学の実験みたいに調合することで新たなアイテムを作り出していきます。
本作を語るのに食へのこだわりは外せないでしょう。本作では主に食事で経験値を得て成長します。休憩所にあるチャイムを鳴らすことでコックを呼び寄せてその場で食事を作ってもらえます。持ち運べる料理とそうでない料理があり、持ち運べない料理はとても高い経験値がもらえます(一気にレベルが4~5ぐらい上がることも)。道中で拾える貴重な材料を使った料理ほど効果も高いです。持ち運べる料理はケーキやクッキーといったお菓子類で、ボス戦でHPが減った時の救世主だったりします。こうして改めて振り返ってみるとファンシーなゲームだなぁと思います(私は大好きですけれど)。どこかで読んだ開発者インタビューによると、食へのこだわりはヴァニラヴェアの個性だそうです。
スキルの成長は敵を倒すことなどで得られるフォゾンを消費して行いますが、これまた宝石箱のような意匠が施されたUIでとても綺麗です。しかもキャラごとに異なるテーマカラーと宝石グラフィックが用意されています。全体が視覚的に美しくまとまっているアート性のある作品です。
システム面について。2Dスクロールの爽快感のある戦闘が特徴だが、周回要素が多めで飽きが来る場合も。
本作は横スクロールアクションで簡単な操作で爽快感のある戦闘が味わえるのが魅力です。欠点としては操作キャラが入れ替わる(チャプター)ごとに同じステージ&同じボスを何度も巡る事になるため、周回要素を感じやすく単調で飽きがくることでしょうか。難易度もアイテムを多めに用意して攻撃ボタンを適当に連打していれば突破できるためそれほど高くはありません。難易度変更も可能で、イージーモードならより簡単になります(トロフィーを取得できないなどのデメリットは特になし)。
ステージのエリアごとに戦闘があるステージとそうではないステージが分けられており、クリア時間などで評価されます。こうした戦歴はMAP画面に残るのでやりこみ要素としても機能します。
MAP画面を開くと評価実績やどこでアイテムが手に入るのかが一目でわかります。操作するキャラによって空を飛んだりジャンプや技で敵の攻撃を交わしたり、アクションの変化を楽しむことができます。
まとめと感想
クリアしたのは数年前ですが、今思い返しても本当に素晴らしいゲームだと思います。私はリメイク版で初めて本作の存在を知ったので、リメイクされたことに感謝ですね。美しい上質なアート作品に触れたかのような充実したプレイ体験でした。性別年齢問わず、感性を養うにはとても良い作品です。温かみのあるグラフィックで描かれる群像劇は時にシリアスで切ない展開を見せます。特に物語の最終盤には謎かけのようなものがあってプレイヤーがしっかりと考えないと選択を間違えて取り返しのつかない展開となることも(私は初回プレイでやらかしました)。でもその展開も含めて、真のエンディングにたどり着いた時のカタルシスは大きいもの。グラフィックにピンときてまだ本作を体験していない人は絶対に体験するべき名作です。
動画資料
■公式PV1
■公式PV2
PS Vita版も出ています。
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参考・出典
・オーディンスフィア レイヴスラシル 公式サイト
・開発元 ヴァニラウェア有限会社
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