【感想・評価】「ゼノブレイド2」 アニメ的な媚びた要素が目に付くが、素晴らしい世界観が魅力的な作品【ゲームレビュー Switch】

【感想・評価】「ゼノブレイド2」 アニメ的な媚びた要素が目に付くが、素晴らしい世界観が魅力的な作品
ゼノブレイド2(Xenoblade Chronicles 2)はモノリスソフト開発、任天堂発売のSwitch用RPGゲーム(2017年12月1日発売)です。クリア時間はストーリー重視で約61時間でした。

PV動画資料

どんなゲーム?素晴らしい世界観は健在。ちょい強めのアニメ的に媚びた要素が目立つ。

ゼノブレイド2イメージ
本作にも探索の喜びは健在。

本作「ゼノブレイド2」はWiiにて2010年6月発売された「ゼノブレイド」のタイトルを引き継ぐモノリスソフトの長編RPGです。広い世界を歩き回れるオープンワールド要素とアクション要素のあるRPGで、ストーリーは少年主人公が少女と出会い、騒動に巻き込まれながら困難を克服していく過程を描いたボーイ・ミーツ・ガールが軸としてあります。

本作の最も優れた点を挙げるなら、世界観の描写が素晴らしく、広大なフィールドを駆け抜ける疾走感や世界を冒険している探索感というプレイ体験でしょうか。

ストーリーはお約束の王道展開で先が読め、表現もアニメ的な表現が多い。ヒロインは無駄に肌の露出が多い。

ただ、前作とは違って今作ではかなりアニメ的に媚びた要素が目に付きました。レックスという少年が主人公で、極めて露出が高い女性キャラがヒロインですが、これがなかなかきわどい・・・というか、あからさま。いわゆる日本的なアニメオタク系の萌え要素の色合いが強く出ているため、そうした要素が気にならなければ大丈夫ですが、気になる人は気になるでしょう。前作ゼノブレイドは硬派だった印象があったので、この方向に突き抜けるのは意外でした。もちろんこれらの要素が好きならハマれるでしょうし、実際海外の日本のこうした文化が好きなJRPG(日本のRPG)ファンにとっては本作の評判は良いようです。

ベースとなるストーリー展開はシリアスですが、それを緩衝するようにギャグが入ります。本作のプレイが継続出来るかどうかはこの一緒に旅をする色々賑やかなパーティーメンバーが好きになれるかどうかでしょう。

なお、前作とは世界観が共通していますが、本作単体としてストーリーは完結しているので前作未プレイでも何ら問題ありません

後半になると世界観が様変わりする。ここまでくれば一気に物語の世界に引き込まれるが…。

印象に残ったのが、本作の序盤は自然が多い世界を冒険していき、これまでの「ゼノ」シリーズ作品にあったSF的な空気感が感じられませんが、ある時を境に一気にSF色の世界観が出てきます。本作はこの世界観のダイナミックな変遷がかなり良いです。序盤ではイマイチのめり込めなかったストーリーも怒濤の勢いでSF色が出て世界の真相が見えてくる。問題はその展開までプレイが続くかどうか・・・。序盤はダレましたが、後半はかなり勢いよく進めることが出来ました

ガチャという仲間召喚プログラム:ブレイド同調

コアクリスタルというアイテムを使用し、ブレイドを仲間に加えていくブレイド同調という本作のガチャシステム

本作ではなんと家庭用ゲームなのにガチャでパーティーメンバーを加える要素があります。(私は噂で知った仲間をガチャで加えるシステムが気になって本作を手に取った部分も強いです。)

本作はドライバーブレイドという概念があります。ブレイドは普通のRPGでいう装備する剣やハンマーなどの武器のことですが、武器(ブレイド)自体が人型だったりクリーチャー型だったりして人格を持ちます(ヒロインの女性キャラも人型のブレイドです)。人間であるドライバー(主人公レックスなど)はブレイドを召喚して、彼らからパワーを貰い戦闘を行います。少年主人公であるレックスが強大な敵に立ち向かえるのもブレイドからのエネルギーがあるからこそで、ドライバーとなるにはブレイドと同調できる素質が必要になります。そして、コアクリスタルというアイテムを消費して、ランダムにブレイドを召喚するのが本作で言うガチャの要素です。

レアブレイドは個別イラストがつき、それぞれ個性がある。しかし、どのブレイドが仲間になるのかは完全な運。とても低確率かつ完全ランダム。

ブレイドの数だけキャラクターがおり、性能も属性も多種多様。その中でも個別イラストがあるレアブレイドの確率はとても低く、プレイを通して全てのレアブレイドを仲間にするのは並大抵のことではできません。私は本作の発売から2年ぐらい経った後にプレイしたので、DLCでレアブレイドの確率が最高のエピックコアクリスタルを配布で入手することができ、最高レアの「KOS-MOS Re:」を最序盤に引き当てることが出来ました(リセマラするつもりだったが、その必要も無かった)。コアクリスタルの配布があってもストーリークリアまでにレアブレイドを半分埋めたかどうかぐらいで、後半レアブレイドが揃ってくれば来るほどレアブレイドの確率が下がる仕組みのようです。

どんなブレイドが仲間になるのかは完全な運で決まるため、どのレアブレイドが仲間になったかが旅のモチベーションに大きく影響してくるでしょう。極めて一部のレアブレイド以外は希望のレアブレイドを確実に入手する方法はなく、一度同調させると他のドライバーにブレイドが付け替えしにくいのも難しいところ。

最も出にくいブレイドとして設定されているKOS-MOS Re:(最高性能のレアブレイド)も運が良ければ最序盤に出てくる。

武器が人格を持つというアイデアに触れたのは1997年ナムコの「テイルズオブデスティニー(PS)」以来ですが、本作ではより人間に近い存在で物語と世界観のコアを成す存在として描かれています。本作ではブレイドとドライバーの共存もテーマの一つだからこそ、ブレイド同調というガチャで完全ランダムに唐突に仲間に加える仕組みはどうなのだろう・・・と思いました。(大量に生まれてくるコモンブレイド、いわゆるブレイド同調ガチャの外れ枠を使い捨てにせざるを得ないのはちょっと・・・。)

ゲームシステムはチュートリアルが一回しかないのがわかりにくい。自分で試行錯誤して追求していくバトルシステム。特に属性玉などの要素は強敵との戦いに必須。理解できれば爽快感、達成感が味わえ最高に面白い。

バトルシステムは理解できれば最高に楽しいが、私が属性玉システムを理解したのはラスボス直前だった。(ネットで色々調べて理解した)。ゲーム内では一回しかチュートリアルが流れないのでわかりにくい。

本作のバトルシステムは複雑で、一度しかバトル関連のチュートリアルが流れないので、よくわからないまま先に進める人も多いと思います。それでも一応ストーリーは進められるので、個人的には「エンドオブエタニティ」よりは優しい印象ですが。

問題はレベル差がある格上の相手と戦うときです。本作のバトルシステムの鍵は属性玉なんですが、それの活用の仕方が分かりにくいです。私がこの属性玉のシステムを理解したのはストーリークリア直前でした。決められた順番の属性攻撃の連携がポイントですが、この属性玉システムがわかってくると一気に戦略が開けて、なんと素晴らしいバトルシステムなんだ!と感動すると思います。

本作の良いところ、印象に残ったアイデア

武器が喋り人格を持つというブレイドと、ドライバーというアイデア雲海や巨神獣(アルス)などの世界観設定
・フィールドや村の作り込み。後半の怒濤のストーリー展開と世界観の変遷(ファンタジー→SF)
・達成感や緊張感も楽しめるよく練られた戦闘システム。格上の敵との長期戦で勝利した時の仲間との一体感は最高。(属性玉を使いこなすまで理解できれば、これまでにない達成感、充実感が得られる。)
・個性豊かなキャラデザとモデリング。(モデリングが不評だったゼノブレイドクロス(WiiU)よりも格段にモデリングが可愛く整った)
(・前作未プレイでも問題は無いが、前作をプレイすると分かるギミックや要素が一部あり、前作体験者は印象深い。考察とか好きならハマる。)

気になったところ

・アニメ的な媚び要素。ヒロインの無駄に多い肌の露出。
・UIが直感的ではない。
・ストーリーが王道で先が読める展開。序盤~中盤がだれて、後半の世界の真相が明らかになるところから一気にギアチェンジした感じ。
・ちょくちょくムービーが挟まれてしまうのでムービーゲーっぽいところがある。
・ポーチアイテムの効果があまり実感できないユーザー体験設計。また、ポーチアイテムは自動的に補給しないで欲しかった。
・ブレイド同調システム。レアブレイドの確率の低さ。完全なランダム性。→ガチャの演出はアップデートでスキップできるようになったが、レアブレイドの登場演出もスキップしてしまう。レアブレイドが出たときはスキップしないようにして欲しかった(スキップした時にレアブレイドが出てきて、ものすごく損した気持ちになった。)。
・一度同調したブレイドとドライバーの付け替えが気軽にできないこと。
・ソシャゲのような余ったブレイドを派遣させて仕事を達成する要素。→ほったらかしで達成できるが、ゲーム内でのプレイ時間が増えてしまう。
・キャラとブレイドの育成に時間がかかる。また、フィールドスキルで必要とするブレイドの付け替えがめんどくさい。
・ストーリーの中盤以降、どうしても納得出来ない展開が。イベントムービーであと数時間で今いるエリアが大変な事になってしまうのに、ゲーム内時間でどうやってもその時間にたどり着けない場所に目的地がある。直前のシーンで緊迫感を演出していたのに、宿に泊まれるわ、スキップトラベルで別の大陸にも行けるのはどうなのか・・・。一時期この矛盾が気になって一気に冷めてしまった。RPGとして物語展開とゲームシステムの整合性を絶対に守らなくてはならなかった箇所だと思う。

感想・まとめ 初代ゼノブレイドの方が引き込まれたが、相変わらず世界観が素晴らしいゼノシリーズ

アニメ的な媚びた表現が受け入れられればムービー多めの長編RPGとして楽しめる。

初代ゼノブレイドが個人的に神ゲーだったので、期待値は大きかったです。ただ、正直に言ってしまうと「ゼノブレイド」の方がシナリオ、ストーリー展開にぐっと引き込まれた感じがしました。本作はアニメ的な媚び要素が強めですね。アニメオタク的な文脈に触れてこなかった人がプレイしたらどんな感想になるか興味があります。

決して悪いゲームではないですが、しばらくはイマイチな感想のゲームでした。フィールドデザインや探索要素、世界観設定、演出は優れているものの、肝心のストーリーがムービーが多い割に王道すぎるし、先が読めてしまうことが影響しているのかもしれません。序盤から中盤にかけてはやや没頭できないプレイ体験が続きましたが、後半の世界の真相がわかってくるについれて一気に引き込まれました。やっぱりRPGはストーリーが何よりも大切だな、と思いました。

開発元のモノリスソフトの「モノリス」は1968年の映画「2001年宇宙の旅」から来ているというだけあって、本作もその影響を感じさせる世界観の造りです。そういったSF要素好きなら物語の後半に一気に引き込まれると思います。最後までプレイして自分の中で評価が良くなったゲームでした。

game image ©2017 Nintendo / MONOLITHSOFT

 
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