今回は特徴的な美しいグラフィックに定評のあるヴァニラウェアが開発、マーベラスエンターテイメントが発売した2DアクションRPGゲーム朧村正(英題Muramasa: The Demon Blade)をレビューします。ヴァニラウェアのソフトでは以前オーディンスフィアを取り上げましたが、それがあまりに素晴らしい出来だったためにヴァニラウェア開発の過去の作品をプレイしようと始めた作品です。
私はVita版でプレイし、プレイ時間は一部の隠しエンディングを除いて本編20時間、DLC4本で10時間の合計約30時間で消化しました。
目次(Contents)
朧村正(おぼろむらまさ)とはどういうゲーム?
元々はWii用のソフトとして2009年4月9日に発売されました。その後PSVitaにて追加要素が加えられた作品がリリースされ、DLCも新たなキャラとストーリーで4本発売されています。
ゲーム内容は、日本の元禄時代を背景に妖刀村正を巡る和風ファンタジーとなっています。個性的で美しい2Dグラフィックは様式・形式化された和風デザインの良さを十分に堪能できるでしょう。2Dグラフィックの良さは色あせないこと。これが3DCGのゲームだったら古いゲームほど時代を感じさせますが、本作ではそんな心配は不要です。
序盤の出だしが説明不足でストーリーを追っていきづらいのが難点ですが、進めていくほどに物語がどういう展開を迎えるのか気になっていきます。だんだんと世界にハマりこむタイプのゲームですね。
登場人物とストーリー
本編では百姫(ももひめ)と鬼助(きすけ)の二人の主人公を操作し、それぞれの物語を追っていきます。
プレイする前の最初の印象では百姫は喧嘩に強い女性かと思ったのですが、実際は朧流(おぼろりゅう)の剣豪、飯綱陣九朗(いづな じんくろう)に魂を乗っ取られてしまったか弱き女性でした。剣を振るっている時、外見は女性ですが、中身(魂)は男性ということに。
鬼助は記憶喪失の抜け忍として自分のルーツを探る旅に出ますが、道中、虎姫(とらひめ)と出会うことで自分のルーツを思い出し、妖刀の力を借りて目的を果たしていきます。
キャラクターデザインも素晴らしいですが、刀を収める時やしゃがむ時などアニメーションの作り込みも魂が入っています。ストーリー自体は王道ですが、特定の条件を満たすとエンディングが変わるので違う結末を楽しむこともできます(全3種類x2キャラクター)。サウンドデザイナー崎元仁さん率いるベイシスケイプが担当した背景音楽も場面を情緒的に盛り上げ、朧村正の世界観を美しく描写しています。
ゲームシステム:2Dアクションと刀鍛冶
ゲームシステムはアクションRPGで戦闘はボタン連打で敵をなぎ倒して進んでいきます。難易度選択もあり、いつでも切り替えられますが、古い作品からか、単調という印象はあります。3つの刀を切り替えながら攻撃しますが、難易度ノーマルの無双モードではボタン連打や回復アイテムのごり押しでどうにかなってしまう事も多いです。アクション初心者には優しい点でしょうか。刀は想像以上の頻度で折れます(妖刀なので復活する仕組み)。プレイする前までは消費アイテムのようにこんなにも大量の刀があるとは思ってもみませんでしたね。名前などは結構かっこいいものが多いですが、使う刀はすぐに切り替わるので一つ一つに愛着は湧きにくいです。
育成要素は敵を倒した時の経験値によるキャラクターのレベルアップに加え、魂収集と食事を取ることによる生気を集めることがあります。魂と生気は武器を生成(鍛冶)するのに必要となっていきます。
食べ物や料理のグラフィックと作り込みは最高水準で、見るからに美味しそうといった感じですが、後半の武器を作るのに必要となる程度で本編クリアに必須ではありません。オーディンスフィアでは経験値も入るレベルアップに欠かせないものでしたが、本作は生気を得る目的で利用します。作り込みは世界最高水準なので、一度は鑑賞しておくと目の保養になるでしょう。(最後の刀を作るには大量の生気が必要になり、暴飲暴食の限りを尽くすことになります…。)
移動と同じ事の繰り返しが面倒くさい
本作の一番の難点が、長距離移動のだるさです。ストーリーが進む度に同じ道中を行き来することとなり、いくら美しい背景グラフィックスといえども似たような風景や使い回しが目につきます。ワープ機能は本編クリア後しか使えませんし、使ったとしても同じ所を行ったり来たりする移動の手間があります。プレイ時間のけっこうな割合を移動で占めているのが残念なところです。
真のエンディングに到達するためのレベル上げ作業がだるい。
本編では各キャラクターごとに3つのエンディングがありますが、そのうちの二つはすぐに達成可能です。問題は最後のエンディング。このエンディングの条件は最後に鍛冶で生成できる朧村正の帯刀が必要になるのですが、そのための条件がきつい。本編をクリアするだけならそれほどレベルは必要ではないものの、この刀を装備するにはレベル80後半までキャラをレベルアップさせなくてはなりません。
最後のエンディングを見るためのレベリング作業が本当に苦痛で、挫折しそうになりました。Youtubeでネタバレを見ても良かったのですが、やはり物語の結末は自分の目で体験したいと思ったので合間合間にコツコツ少しずつレベリングをしてどうにか条件を達成。徒労感に襲われながらもなんとか消化できた次第です。
エンディングによって印象が大きく変わるのも本作の特徴の一つですが、やりこみが必要になります。
DLCについて
本作には本編とは別に、別売りのDLCコンテンツがあります。内容はどれも濃く、新たな操作キャラクターとシナリオが用意されています。プレイ時間は2時間~3時間でクリアできるボリュームで、明るい内容から切なく悲しいものまで一つ一つお話として完成されています。
エンディングが2種類あり、どれも大きく印象がガラリと変わります。二つ目のエンディングは本編含む全ボスを倒すというとてもやってられないものだったので、Youtubeで補完しました。エンディング達成条件に面倒臭い作業を要するものは設定しないで欲しいですね。
■津奈缶猫魔稿
津奈缶猫魔稿(つなかまねこまたぞうし)は猫を操作するのですが、思いの外お話が暗く、考えさせられる内容でした。エンディングが本編にも繋がる内容で、そうだったのかと驚きました。日本の妖怪が好きなら是非ともお勧めできる内容です。
■大根義民一揆
大根義民一揆(おおねぎみんいっき)は農家の権兵衛(ごんべえ)を操作します。回避に癖があり、操作しにくいですが、元禄時代の日本の百姓の直面する問題や悩み、文化などの世界観を体験できます。最初のエンディングは予想外の展開を迎えましたが、二つ目のエンディングは想像を絶する内容でショッキングなものでした。権兵衛の妻、お妙(おたえ)が美人で良妻ですが最初になかなか恐ろしいことを言います。
■七夜祟妖魔忍伝
七夜祟妖魔忍伝(ななやたたりようまにんでん)は抜け忍となった嵐丸(あらしまる)とふとしたことで出会った白蛇の神様の物語です。嵐丸は神社を荒らした白蛇の祟りとして死の宣告をされますが…。最も切なく、救いがない内容ですが私は大好きなエピソードです。こちらも2つめのエンディングが想像を絶するもので、江戸時代後期の読本「自来也(じらいや)」伝説をモチーフとしたお話とつながっています。王道で美しい物語である一方で、最後の展開が切り替わることでこんなにも印象が変わる演出ができるのか、と考えさせられました。忍者なので道具を多用したアクションが特徴。
■角隠女地獄
最後のDLCは角隠女地獄(つのかくしおんなじごく)で、地獄の閻魔大王の末娘、羅邪鬼(らじゃき)と寺から脱走した元坊主の清吉(せいきち)の物語です。これまでの3つのDLCはどことなく暗く、重いお話でしたが、本エピソードはとても心が温まり、最後にプレイして良かった印象です。2つあるどちらのエンディングも明るく陽気な内容で、操作する羅邪鬼も強いのでプレイしていて楽しかったですね。
まとめと感想
本編とDLCを全体を通して、美しい背景やキャラクターデザイン、語り部による和風ファンタジーの様式美を堪能することができます。雰囲気を味わうゲームとしては満点ですが、ゲーム自体は単調で無駄に移動させられたり、エンディング条件に極めて厳しいものがあるのが残念。エンディング関連は自分で達成したいのですが、相当のやりこみプレイを要求されるので、さすがにDLCの二つ目のエンディングは自分で消化するのは諦め、Youtubeで消化しました。この点、オクトパストラベラーと近い部分を感じます。やり込み作業をストーリーを味わうための必須条件にするのはちょっと違うなと思いました。でも、内容は丁寧に描かれた和風の世界観を堪能できたのでとても満足しています。
動画資料
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