【書評】自信がなくても行動すれば自信はあとからついてくる 不快な思考や感情と共存しつつ価値ある行動を実践する大切さが学べる一冊

【書評】自信がなくても行動すれば自信はあとからついてくる マインドフルネスと心理療法ACTで人生が変わる

何かをするのに「自信」は必要なのでしょうか?

自信がないから行動できない、何かに挑戦しようとすると恐れや怯えで行動できない…そういった問題を解決するヒントとして、医師でありセラピストのラス・ハリスさんが書かれた本書「自信がなくても行動すれば自信はあとからついてくる」が参考になります。

本書のテーマはまさに自信がないために行動を起こせないと思い込んでいる人に向けられたもので、自信があってもなくても、不安や心配事があったとしても、それにとらわれずに価値ある行動を実践していく大切さが説かれています。

自信がなく、不安を感じるのは自然で正常だ。

未知の分野への挑戦で自信のなさを感じたり、変化に対しての不安や心配は当たり前の感情です。まずはこの不快に感じる感情をそのまま認めてあげるのがこうした感情を乗り越えるための一歩となります。

不安や心配、自信がないという心のメッセージに対していちいち反応して判断したり、消そう無くそうとするのは逆効果で、ますます自分の自信のなさや気分に振り回される結果となります。こうした感情や思考は自然に湧き上がってくるものだから、気にしすぎないことが重要。確かに今の自分では自信がなくて不安で心配ではあるけれども、自分にとって目の前の価値ある行動を実践することが大切です。

自信も経験もないし、不安。人からバカにされるかもしれない(嫌われるかもしれない)。だけどやることはやる。自分のするべきことはちゃんとやる。」の精神で行動を積み重ねたもののみが自信を育むことができます。

気力がみなぎってから、心の準備ができてから、気分が良くなる時を待ってから行動しようとするのでは、いつまでたっても行動できず、困難な人生となる。

気分が乗らないから行動できない、自信がないから行動できない、万全とした準備ができていないから行動できない…こうした完璧主義と失敗忌避からくる考え方ではいつまでたっても行動を起こすことができません。

その結果として成長がなく停滞して「自分にはどうせ無理」という思考に囚われて、ますます行動しなくなるループに陥ってしまいます。

気分の良し悪しに関わらず、するべき行動をきっちりこなしていくことの大切さ。作曲家の久石譲さんの著書に書かれていた職業クリエイターは気分の波に左右されずに一定のペースで生産し続けることの大切さを思い起こします。
全クリエイター必読の書 久石譲「感動をつくれますか?」 まとめ・要約・レビュー

コンフォートゾーンから一歩踏み出した行動を積み重ねることで自信が育まれる。

自分を成長させ、良い方向に人生を向けたいのであれば今いる快適なぬるま湯(コンフォートゾーン)から一歩踏み出した行動をとる必要があります。コンフォートゾーンにいる限り自分が傷つくこともありませんが、成長もなく停滞していきます。コンフォートゾーンから出る際には必ず不安や心配、恐れといった不快な思考や感情が生まれます。

それらの思考や感情が浮かぶのは当然であり、その思考や感情から一歩距離を置くこと(本書でいう脱フュージョンと呼ばれるもの)が重要で、そうした感情が自分の中にあることを認めつつも、同時並行に自分のするべき行動がちゃんと行えていることが大切です。

自分にとって大切な行動(価値ある行動)が取れていれば、その積み重ねで自然と自信が生まれているでしょう。自信は意識して生み出すものではなく、自然と発生するもの…だと私は思います。

まとめ 自信がないことに囚われるのではなく、価値ある行動を積み重ねていくことの大切さが学べる。思考に囚われすぎない生き方を学ぶ一冊。

本書を端的にまとめてしまうと、タイトルにある通り「自信は行動を積み重ねていくことで後から湧いてくる」というそのままです。誰しもが薄々感じていることではありますが、なぜ実践できないのか。それは、行動を起こす際の自信のなさだったり、「自分にはどうせ無理だ」という心の声(判断)だったり、不安や心配といった不快な感情にとらわれてしまうからです。本書ではその囚われをなくすための実践的なヒントが満載だと言えます。

内容的には同著者の「幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない: マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門」と実質的にほとんどかぶっていて、紹介する事例が異なっていることぐらいでしょうか。前著を読んで、普段から前向きに行動を実践できている人には本書の内容は当たり前のことが書かれて退屈だと思うかもしれません。

私が思うに、自分に厳しく、過度に現実主義的に世間の評価やら基準やらを自分にあてはめたり、自分の失敗を認めない人ほどこうした考えすぎて行動できない罠に引っかかる気がします。失敗や挫折を過度に重大なものとして捉えてしまう認知傾向があるというか。最初は誰もができなくて当然で、初心者・未熟である状態があるのですが、完璧主義傾向が強い人ほど「できない自分、未熟な自分」を受け入れられないものとして、挑戦すらしなくなるのでしょう。

出来損ないで未熟な自分、不快な感情や思考を抱く自分、すべてそのまま認めるしなやかな心が重要だと感じます。自信がなくても、気分が落ち込んでいても、不安があっても、それはそれとして自分のするべき行動を起こせるかどうか。不快な感情や思考も自分の中にあってもOKと許可を出すことでそれにとらわれない(不快な思考や感情と共存しつつも自分にとって必要な行動をとる)境地が重要という感じです。

何かをするのに自信ができるのを待ってから行動しようとしても自然に湧いてくることはありません。なんらかの行動や変化は必ず必要です。

変化が激しい現代を生きる上で挑戦と失敗は必要不可欠なもの。本書はそんな人たちの背中を押してくれる一冊と言えます。

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