運動が健康に良いことは今では常識となっていますが、これまで運動習慣がなかった人にとって行動を起こすのはとても難しいものです。健康に良いとわかっているけれどどうにも運動ができない、運動が億劫で続かない人はとても多いと思います。
本書「脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方」は運動が苦手で大嫌いな人でも、運動が持つ計り知れない価値を知ることで運動をせざるを得ない気にさせる力を持った一冊です。
人にとって運動がなぜ大事で、運動することによりどのようなメリットがあるのか。本書では圧倒的な量の実証研究が紹介されています。本書を読み込むことで運動が人体にもたらす良い変化と成長メカニズムへの理解が進み、その理解が運動への強いモチベーションとなっていきます。
1.運動によって脳が変化し成長していく
文明を築き、テクノロジーに満ち足りた生活を送るようになった人間もそもそも「動物」であり、体を動かすことで様々な変化があります。
その最も良い変化の一つが脳内にあるBDNF(脳由来神経栄養因子)の生成と促進です。人の脳細胞は運動することでニューロンを新生させ、年齢に関係なく脳をシャープに保つことができます。
人は古来より運動することによって学習し、サバイバルしてきた歴史があります。人は運動する中で学び、スキルを身につけていくのに最適化されているのです。
何か困難に挑戦する時、新しい分野や仕事を身につける時、運動によって脳を刺激することで大きな成果が望めます。脳それ自体が変化するので脳のスペックが向上=学業成績や仕事のスキル向上につながるのです。
2.不安や依存症対策にも運動が効果的
漠然とした不安や無気力さ、依存症にも運動は効果的です。いわば脳の機能不全に由来するメンタル的な落ち込みや疾患に運動は非常に大きな効果を発揮します。
例えば運動することによりGABAが活性化し、攻撃的な思考や不安発作を沈めてくれます。
また運動することで活性化するドーパミンやエンドルフィンによりやる気と幸福感が高くなり、ストレス苦痛耐性が高まります。ノルアドレナリンはシャキッとした鋭敏な感覚をもたらします。
そしてきつめのハードな運動をすることでヒト成長ホルモン(HGH)も分泌され、細胞の成長や若々しさを保つことができます。
以前筋トレで人生の悩みがほとんど解決するという本が流行りましたが、運動が脳によく健全な精神を養うことはまさに脳神経科学的にも実証されているのです。
運動を習慣化したい時に読むモチベーション向上のバイブル
本書の主張はシンプルに「運動は脳(身体機能や認知機能)に計り知れない恩恵を与える」ことなのですが、とにかくそれを裏付ける数多くの膨大な研究と事例紹介で埋め尽くされた一冊です。運動がなぜ体に良いのかのメカニズムを知ることで「運動はなんとなく体に良い」という浅い理解から「運動はこんなにも脳と体に良いのか」への気づきへと繋がり、運動へのやる気をブーストしてくれます。
分厚い圧巻の大ボリュームですが、何も律儀に全部読み込む必要はなく、自分が気になったところだけ読んでも得るものは多いと思います。
どこか気分に浮き沈みがある、心配や不安や焦りに囚われる、緊張に悩まされる、もの覚えが悪い、対人関係のストレスに悩まされている人は運動を習慣とすることで大きな改善の一歩を踏み出せるでしょう。本書を読む前と後では運動へのやる気が段違いとなるでしょう。
これまで運動が嫌いで、運動をしてこなかった人にこそ読んでほしい一冊。