完璧主義に効くクスリ「セルフ・コンパッション」クリスティーン・ネフ【まとめ要約レビュー】

今回はありのままの自分を受け入れる能力をテーマとした「セルフ・コンパッション」クリスティーン・ネフ(著)のまとめ要約レビューです。完璧主義に悩んでいる人ほど読んで欲しい一冊となっています。

完璧主義に悩む人は自分の欠点や失敗を許せずに苦しんでいるといえます。そのため失敗を恐れ、行動することを避けてプライドばかりが高くなり生きづらくなってしまう。本書は自分を受け入れ許せる力、セルフ・コンパッションについての研究をまとめた本です。本書を読めば「(欠点も含めた)あるがままの自分を受け入れる」こと、「自分に優しく接する」ことがより良い幸福な人生を送るのに欠かせない態度であるかが分かります。

セルフ・コンパッションとは

セルフは自己で、コンパッションは慈悲のこと。私たちが普段他者に対して慈愛の心を向けるのと同様に、自分自身に対しても思いやりの心で接しませんか?というのが本書のメインテーマです。他人には優しく気を遣って接することができるのに、自分に対して冷酷で厳格な態度を取ってしまう人が多く、それが抑圧や不調に繋がっているとのこと。自分の一度の失敗や判断ミスを許せなかったりして生きづらい人生を送っている人も多いです。

自分に対して慈悲の心を持つのは、「自分を甘やかすことではないか?」「人をダメにしてしまうのではないか?」との意見もあります。しかし、実際はダメになるどころか、まるっきり逆の効果をもたらすことが研究で示されています。自分を受け入れ、許せる心を持つこと。ありのままの、本来の自分を受け入れる態度がパフォーマンスの向上やより良い人間関係、満足感のある幸福な人生を築くのに重要なのです。

自分の失敗を許せない態度は不幸になる


自分に厳しく接する態度、自己否定的な態度は不幸をもたらし、人生全体の満足感も低下することが研究で示されています。自己批判をする人ほど挫折や失敗からの立ち直りが遅く、全体的なパフォーマンスも低下し、物事を先延ばしにする傾向が高くなっていたのです。

自分の失敗を許すことが出来ないから、失敗に繋がる行動を避けるようになります。自分に厳しい態度を取るほど、テスト前に部屋の掃除や夜更かしをしたりしてセルフハンディキャッピングが発生しやすくなります。一見矛盾しているようですが、彼らは自分の失敗を直視して受け入れる事が出来ないため、失敗をすることに言い訳を作る必要があるのです。

他者と自分を比較し、外部の価値基準で自分の価値を判断してしまうので、競争社会でどんどん擦り切れていきます。今の自分に満足することはなく、常に強迫的に厳しく自分を追い込んでしまうため、燃え尽き症候群(Wiki)や鬱病に悩まされる人も多いです。

上記のことはまさに完璧主義の人によくある傾向で、自分の弱みを受け入れる事が出来ないから誰かに頼ったり、相談したりすることができず、悶々と一人で孤立して悩み続けてしまいます。悩みと後悔で行動をするエネルギーが枯渇するので、頭の理想だけが膨らむばかり。過去や失敗を嘆いて実際に行動を起こすことができません。

自分の弱みを受け入れる事ができると、人に頼れる


セルフコンパッションは自分の欠点も、弱みも受け入れる態度です。自分を受け入れる事が出来るからこそ、他人に自分の欠点や弱みをさらけ出すことができ、困ったときに素直に人に頼れるようになります。自分の弱みをさらけ出すことは他者を信用する事でもありますから信頼関係を築くこともできます。セルフコンパッション能力が高いほど他者を許し、許容することができるため、これまで以上に思いやりを持って他者と接することができます。人は全ての面で平均して優れている事は不可能である事を認識し、何か欠点があったとしても自分の存在価値がなくなる訳ではない、ことをキチンと認識しています。

セルフコンパッション能力と回復力


セルフコンパッションが高い人ほど、失敗からの立ち直りが早く、睡眠や休暇、遊びなどを取り入れて自分の心のケアをちゃんと行うことができます。心のバッテリーをしっかりとチャージすることが出来るから、仕事での生産性も高くなります。

一方でセルフコンパッションが低い人は、自分を甘やかすことを自分で許さないから、ピリピリして神経をすり減らして、いつもどこか緊張しています。常に理想と現実の間で戦争状態、と言えるのかも知れません。昼寝やだらけること、遊びに罪悪感を感じるので、気分転換が苦手で失敗や挫折からの立ち直りも遅いです。自分に自信が無く、継続した不安に悩まされているから、自分本来の能力を発揮することが難しくなります。

セルフ・コンパッション具体例

セルフ・コンパッションを取り入れることの具体例を考えてみました。
・昼寝は怠けだ、として昼過ぎの眠い時間帯に昼寝を自分に許さない→昼寝を自分に許した方が結果的に夜のパフォーマンスが上がり、一日全体の生産性は向上する。
・最初は楽しくピアノや楽器、スポーツをしていたが、大会を意識するようになり、厳しい競争社会のなかでだんだん嫌いになっていく。比較や競争の中で自分に批判的な態度が身に付き、結果として辞めてしまう(音大や美大卒に多い)。→他者と比較するのでは無く、誰かからの評価を求めるのではなく、自分がやってて楽しいから行うことを意識する(競争をしない自分を受け入れる)。
・全てにおいて完璧な成果を出さなくてはならない。→完璧主義は幻想。実際にすべてにおいて完璧な人間など存在しない。
・失敗許容力を高め、弱さを受け入れる力を持つ。悩みを言語化し、認識できるようにしていく。
・人生の無駄を許容する心の余裕をもつ。

まとめ・書評

ただでさえ世の中には多くの意地悪や否定的な態度をしてくる人がいるのに、唯一の絶対的な味方である自分まで自分に対して否定的な態度で接してしまったらすごく生きづらいですよね?この本は競争社会でおざなりになりがちな「自分を思いやり、いたわる態度」がどんなに大切かを思い出させてくれます。

摂食障害の例も多いです。自分を受け入れる事ができず、理想的な体型を追い求める余り、多くの女性が自己否定のループに陥ってしまうとのこと。

全体的に具体例が多く、ページ数の割にボリューム感があって海外本によくある冗長な箇所も多かったです。エクササイズとして認知行動療法をベースとしたセルフコンパッションを身につけるための取組が随所に掲載されています。基本的に自分の思考をノートに書き出して思考の偏りなどを視覚化していきます。事例研究などで長ったらしく感じる部分も多いので全部完璧に読もうとするのでは無く、心に響いた箇所をさらっと読む感じがいいと思います。

セルフコンパッションを高めるための取組として、自己批判的な考えが浮かんだときにそれに気づくための仕掛け(輪ゴムを引っ張ったり腕をつねったりする)、慈悲の瞑想や自分を受け入れるための日記、自分の心地よい動作や動きによる接触(胸に手を置くなどのセルフタッチ)などが紹介されています。ただ、本当に悩んでいる人は本書のテクニックを一人で実践するのはなかなか難しいんじゃないかな、と思います。セルフコンパッションという概念の全体像を知るには良書です。

完璧な人はいない。今存在していること、生きているだけでも価値があること。ありのままの自分を受け入れ、認めてあげることが人生の幸福度を高め、結果的に生産性を高めることなど、今を忙しく生きる人が忘れがちな自分をいたわる心を持つことを意識させてくれた本です。

「セルフ・コンパッション―あるがままの自分を受け入れる」/ 「SELF-COMPASSION」
クリスティーン・ネフ (著) / Kristin Neff
石村 郁夫 (翻訳),樫村 正美 (翻訳)
金剛出版 2014/11/26

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