「ルーキー・スマート」(リズ・ワイズマン著)は初心を持って、ルーキー(新人)のような柔軟な思考と挑戦する行動力が人のパフォーマンスにどう影響するかに焦点を当てた本です。多くの人が年を重ねるにつれ守りに入り、新たな物事に挑戦しない傾向がありますが、本書ではどんな年代の人でも初心者のように新たに物事に取り組む態度を身につける事で新たな可能性や視野を広げ、パフォーマンスを高める事が出来ると説きます。マンネリを打破したい人の後押しとなる本です。
目次(Contents)
著者について
著者のリズ・ワイズマン(Liz Wiseman)さんは元オラクル幹部でシリコンバレーに本社を置くワイズマングループの社長。グローバルリーダーの育成と養成を手がけるリーダーシップ教育者です。
全体の要約・まとめ
・ベテランが全てにおいて優れている訳ではない。経験があると新鮮なアイデアが出なくなる。
・知識が豊富になるほど新たな事を学ぼうとする姿勢は薄れ、守りに入ってしまう。
・年齢に関係なく初心を忘れずに挑戦する力、ルーキーのように考え行動する力がパフォーマンスを引き出す。
・マンネリを打破したいのならルーキーのように学び、考え、行動せよ。
ルーキーが持つ特徴と力 (各モードは著者の命名)
・ベテランに比べて重責がないため身軽に動ける (バックパッカーモード)。
・経験が無いため慎重に行動し、周囲に注意を払う (狩猟採集民モード)。
・自信が無いから知識を埋めようと必死に動く、人から教えを請い、学んだことはすぐに実践する。慎重に素早く行動する(ファイアウォーカーモード)。
・地図のない土地を切り拓いていくかのような、状況にアドリブで対処し、乏しい知識や経験を欠乏感を持って追求する姿勢(開拓者モード)。
ルーキースマートを持つ人は、自分が知らない・分からない状態である事を卑下せず、その状況(新人である、未経験であること)を活かして素直な心で身近な専門家に教えを請うたり、自発積極的に新たな情報を集めたり、自分から動く姿勢が強い人と言えるでしょう。
ルーキーが活躍出来る場面
・イノベーションや革新を起こしたいとき。
・素早く成果を上げたいとき。
・正解が複数あるとき。
・情報が多すぎて個人では対応しきれない時。
■ルーキーが活躍出来ない場面
・一度の失敗が命取りとなるような場面。要人の警備などが考えられる。こうした状況はベテランに任せた方が良い。伝統やしきたりを重んじる場面でも同様です。
基本的に新たな価値観が求められるエンタメやITソフトウェア業界や、普段の日常で刺激や活力、学びを得て成長の喜びを実感したい人にはルーキースマートは有利に働きます。
どう実践していくかについての考察
ルーキースマートは初心者や新人の時に抱いていたある種の緊張感を持って何か物事に取り組む態度なので、実際に何かに挑戦する事が実践に繋がります。これまでやりたかったことを習い事として始めたり、小さな事から一歩を踏み出して行くのもアリでしょう(参考)。
例えば私の場合は3DCGを学び始めた事が例に挙げられますね。専門学校に行っていないので右も左も分からなかった。でも知り合いに3Dアニメーターをしている人がいて、その人の教えを請うたり、自分でもネットで集められる3DCGの教材をとりあえず買って集めてやり方を模索しました。結果として動画教材を一通り通して見る事で基礎知識を身につけ、徐々に全体像が掴むことが出来、実際の作品作りに落とし込めるようになっています。
年齢を重ねれば重ねるほど何かと理由を付けて挑戦しない人が多いので、今一度自分の状況を見直してマンネリに陥っていないか?と考えるのも有用かと思います。マンネリで変化もなくダラダラ毎日が過ぎていないでしょうか?ルーキースマートはマンネリを打破するには持ってこいの考えですね。
まとめと感想
マインドセットや知的謙遜にも通じる話で、「自分はこれこれこうだから(もう歳だから、もうこの分野については充分)」と決めつけて保守的になるのではなく、もっと若々しい思考であれをやってみようこれをやってみようとする態度が思いもよらない可能性を生み、成長に繋がるという内容。ルーキーは自分が知らない事、経験が無い事を武器とします。年齢性別は一切関係なく、ルーキーが持つ特有の態度を強みとしながら物事に向かうことで見えてくるものがあるのですね。ルーキーだからといって萎縮する必要は無く、知らないことを武器に成長していけば良いのです。ルーキー(新人)の心の態度が持つ新たな価値や可能性について知る事が出来る一冊です。
■日本語版「ルーキー・スマート」リズ・ワイズマン/池村千秋 海と月社 2017年04月
■原著「Rookie Smarts (Enhanced Edition): Why Learning Beats Knowing in the New Game of Work (English Edition) 」
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