【書評】不老長寿メソッド 科学的エビデンスに基づいた王道の基礎健康知識を学べる一冊

【書評】不老長寿メソッド 科学的エビデンスに基づいた王道の基礎知識を学べる一冊

サイエンスライターの鈴木祐さんの『不老長寿メソッド』を読了しましたので、自分なりに気づきや感想をまとめていきます。

最新科学に基づく王道の若返りのやり方とは

『不老長寿メソッド』と本書のタイトルは怪しげですが、実際に紹介されているのはどれも真っ当なエビデンスのある現代科学の厳しい検証で示された王道のテクニックです。具体的には睡眠や運動、食事や学び、対人関係などを通して、良いストレス(苦痛)とそこからの回復を繰り返すことで人という生物本来が持つ力を最大限に活かすことで、まさに節度ある、節制生活こそが不老長寿につながることが示されています。

苦痛から回復するときに人は若くなる

健康長寿のためにはストレス(苦痛)がなければいい…というのは間違っていて、若さを保つにはストレス(苦痛)と回復がセットであり、その両方が重要であるといいます。つまり、良いストレス(苦痛)を体に与え、十分に回復するまで心身を休ませるというストレス(苦痛)と回復の往復こそがアンチエイジングの原則であり、その方法がまとめられているのが本書です。

本書から読み取った良いストレスと悪いストレスを私なりにまとめると以下のような感じになります。

■良いストレスの一例
・運動、筋トレ、水シャワー
・新しいことを学ぶこと、技術を磨くこと
・食事の内容に気を配ること(野菜、果物、魚介類を多く摂取する。加工食品を控える、一時的な断食、カロリー制限など。)
・誰かと対人関係を持つこと
・苦手だな、困難だなと感じている環境にあえて身を晒して乗り越えること

筋肉の成長がわかりやすいですが、一旦トレーニングで傷ついた人の体はそこから回復しようとして以前よりも頑強になろうとします(超回復)。脳の認知機能にも同じことが言えて、ストレスから回復(克服)する過程が重要なのです。

個人的に印象的だったのは植物に含まれるポリフェノールは人体にとってその本質は毒物であり、渋みとして感じられ体内に微小の炎症を与える存在であるということでした。しかし、その微小の炎症こそが人体の抗酸化力を高めてくれるのです。普段からポリフェノールは体に良いと思って摂取してきましたが、ポリフェノールを摂取することで体に小さなダメージを与えてそのダメージ修復のプロセスで肉体の若返りのスイッチが入っているという、なぜポリフェノールが人体に有益に働くのかの背景を知ることができたのは大きな気づきでした。

■悪いストレスの例
・長時間のテクノロジーに接している(ゲーム、スマホ、SNSのやり過ぎ)
・睡眠の乱れ、睡眠不足、睡眠の質低下
・運動不足
・食の乱れ(果糖ぶどう糖液糖などの加工食品、カロリーオーバー)
・人間関係の悩みや将来への不安や心配などメンタル面での長期化するストレス
・社会的な居場所がない孤立感による精神的ストレス

一方で悪いストレスは慢性的で、悪癖など長期化する苦痛のことです。すぐに改善できる不摂生もあれば、なかなか解決できないメンタル的(認知・考え方)な問題も多いです。健康長寿のためには、これらのストレスを排除し、良いストレスを生活に組み込むのがポイントです。

できる人ほど休息(回復のプロセス)を重視している。回復の段階をないがしろにしないこと!

忘れてはならないのは、回復のフェーズです。本書では能力が高い人ほど休みの時間を計算に入れて行動していると指摘しています。

考えてみれば、私たちは何かをしている時のほうが前に進んでいる感覚もあるし、達成感もあって、ついつい「何かをしている事実」ばかりを重要視してしまいます。でも何かを学んだり、トレーニングばかりしていても、そこから知識を定着させるための時間、筋肉を回復させる期間がなければ逆効果となってしまいます。何もしないことや休むことを怠けだと考えてしまったり、落ち着かないという理由で常に何かをしがちですが、ちゃんと休むことの重要性を実感しました。

何か難しい仕事に挑む時ほど休憩もしっかりと確保する必要があります。

エイジズムは断固拒否すべし

本書の中で一番私の中で印象に残ったのは、老いを衰えといったネガティブなものに捉える認知(エイジズム)それ自体が老いを加速させている事実です。実際に年齢を重ねていくことよりも、年齢を重ねることへの認知の仕方で実際の老け方がまるで変わるのだそう。

健康的で活発な100歳を超える人たちが多い地域では決して老人たちを役立たずで庇護を受けるべき存在だと扱っていません。本人も社会も老いをネガティブなものと捉えず(エイジズムが少なく)、知識が深まったことや経験が深まったことによる思慮深さがあると前向きに捉えてるとのこと。

これは個人的な見解ですが日本は世界でも有数のエイジズムの国だと思っています。LGBTなど性的多様性への理解が出てきても、相変わらず履歴書には年齢の記入があり就職での差別は根強いです。テレビや新聞といったメディアでは強迫症のように必ず名前のあとに()をつけて年齢の数字を付け加えます。この前行われた東京オリンピックの実況で選手名+年齢を機械のように連呼するのを聞いて、選手の年齢を伝えなければ罰則でもあるのか?と思うぐらい日本では年齢という属性が重要視されています。

「最年少」が過剰な意味を持ち、若さ至上主義が喧伝される世の中において、年齢を重ねることによる衰えの側面(身体中にガタがくる、物覚えが悪くなることや、頭が固くなることなど)に人々が注目してしまうのも無理はないのですが、加齢によるポジティブな側面があまりにもないがしろにされていくのは健全ではありません。

個人的な経験から、冗談じゃなく日本にいると25歳、30歳を超えたらおっさん、おばさんと自分を卑下するエイジズムに毒された人がなんと多いことかを実感します。そういう人は自分の老いに対するネガティブな認知を周りに撒き散らし押し付ける人も多いので厄介です。

老化に対する考え方、受け止め方がポジティブであればあるほど認知症のリスクが低減し、健康長寿につながり、それが科学的に示されている。この事実は年齢という属性が無駄に意味を持ち続ける日本で暮らす上で深く心に刻み込む必要があると思いました。

まとめ 不老長寿に裏技はなし。正しく節制することで健康長寿への道が開かれる。

本書の内容は端的に言ってしまえば不摂生やめて、節制生活を送ろう、ということになるかと思います。健康的な生活を送る上で当たり前のことしか書いていないのですが、その当たり前を実際に行動に起こすのがいかに難しいかの気づきにもなるでしょう。

運動はそもそも人に苦痛を与えるものだから、運動が嫌いで長続きしない人が多いのも当然のことです。体に悪いと思っても、美味しいものや甘いものだって食べたいのが人間です。でも、それらの欲望を我慢し、苦痛を乗り越えてこそ健康で快活な人生が送れるのです。

本書を通じて自分の欲望と向き合って、健康のために正しく節制するためのモチベーションや具体的な方法を得ることができます。健康長寿への確かな知識を得ることができるおすすめの一冊です。

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