整理整頓関連の本3冊と本(主に美術参考本)の電子化のススメ、 断捨離を実践して気づいたこと

今回は私が片付けについて影響を受けた3冊の本の紹介・要約と、主に本の電子化による整理整頓の実践記事です。日本の居住環境は広いとは言えず、普通に生活して買い物をしていればすぐに物であふれかえってしまいます。私の場合は本が一番多くて、一時期は床が抜けるぐらい本が溜まっていた時期がありました。現在は電子化により物としての本の量はずいぶんとスッキリしました。身軽である事は人生の行動力を高め、新しいチャレンジに向かうエネルギーを生み出します。片付けに悩んでいる方にとって参考になれたら幸いです。

「ガラクタ捨てれば自分が見える」カレン・キングストン

最初に紹介する本はカレン・キングストンの「ガラクタ捨てれば自分が見える」(小学館2002年5月1日)です。これは風水をベースにした整理術の本で、私が10代前半の中学生ぐらいの頃に人生で初めて出会った片付け本です。当時整理術なんてものには無縁だった私はこの本から大きく影響を受けました。あの頃は自分の物を自分で管理して処分するという発想が無かった時期で、部屋がかなり物で溢れていました。「自分の物はとりあえず取っておく」みたいな感じで学校から配られたプリントやら工作やらノートやらを捨てないでいたら、いつの間にか部屋が物まみれになっていました。あまりの自室の物の多さにうんざりしつつも、たまたまAmazonで目にとまったのが本書です。価格も600円しないぐらいで中学生にも買いやすい値段だったことも大きいですね。(…みなさんいつごろ片付けを意識するようになるのでしょうね?)

この本は片付けをする際の気の持ち方・精神面についての多くの記述があり、心の内面から片付けの動機を高めてくれる良著です。自分にとって不要なモノである「ガラクタ」が溜まると、いかに精神面や人生の活力を奪っていくのかが語られ、片付けをする根本マインドが育まれる感じです。なぜ物が溜まっていくのかについての分析も示唆に富んでいます。今みると風水整理術を全面に出していることもあり、科学と言うよりもスピリチュアル的な要素が目につきますが実際にガラクタが溜まることで起こる停滞感と、それらが無くなりスッキリしたときの快活な気持ちを想起させる描写が上手いのでそういったのに抵抗がない人ならやる気を引き出してくれる本だと思います。片付けの科学本と言うより、東洋思想的片付け本ですね。

私は10代の頃はこの本を何度も読み直して片付けを実践していきました。この本に背中を押されて片付けができたと言えます。多くの人が片付けをする時に直面するであろう物が捨てられない迷った背中を後押ししてくれる本です。今でも読み返して気づきを得ることもあります。Amazonでなんとなく見つけたこの文庫本は、今でも大切に取っています。既に紙や背は退色して黄ばみ色あせていますが、ずっと手元に残していこうと思います。

「人生がときめく片付けの魔法」近藤麻理恵


次に紹介するのは一時期テレビにも出ていた近藤麻理恵さんの「人生がときめく片付けの魔法」(サンマーク出版2011年1月15日)です。タイトルからも分かるとおり、やや女性向きで、「感覚」で片付けを捉えるタイプの人にお勧めの片付け本です。ちなみに私はこのやり方が一番実践しやすく、自分に合っていました。

本書で特徴的なのは、片付けを「何を捨てるか」ではなく「どんなモノに囲まれていたいか」を重視していることです。そして片付けにおいて意識することは、「自分にとってときめくものだけを残すこと」だといいます。「ときめくもの」とはそのモノを見たり触れたりしている時にワクワクする気持ちや活力・元気が湧き出てくるような物のことです。それらの「“ときめくもの”だけに囲まれる人生はなんと充実して素晴らしいものだろう」というのがこの本の趣旨です。

本書には他にも個別具体的に服の処分の仕方、本の処分の仕方などが書いてあり、片付けに迷っている人の背中を押してくれます。私はこの「自分が好きなモノ(見ていてワクワクするモノ)だけ残す」というシンプルで明快な軸を持てたことが、その後の人生における片付け能力の向上や実践に大きく役立ったと確信しています。20代はこの本に大きく押された形で片付けのモチベーションを高め実践をこなしていきました。片付けを通して自分自身と向き合うことができる、そんな示唆にとんだ本です。

「人生を思い通りに操る片づけの心理法則」メンタリストDaiGo

最後に紹介するのはメンタリストDaiGo「人生を思い通りに操る片付けの心理法則」(学研+2017年12月6日)です。片付け本としては後発であり、これまでの片付け本を総括したような内容になっています。先に紹介した2冊はちょっとスピリチュアル色が強かったのですが、今回のDaiGoさんの本はさすがというべきか、どれも科学的根拠(科学論文のエビデンスベース)に基づいているため理論的かつ説得力があります。(当ブログもエビデンスベースを目指していきたいところです。)

本書の特徴は片付けを「人生の本当に大事なことに集中するための手続き」と捉えているところです。「片付けの過程で自分の人生の本当に大事な価値に気づき、使える時間やお金をそれらに集中して使っていきましょう」というのが本書の趣旨です。あれもこれも捨てるのでは無く、自分にとって大事な物は残すという主張は近藤麻理恵さんの本と共通していますが、こちらの方がより人生の目的を最大化することに焦点を絞っている内容です。ですから片付けをする「目的」が重要となります。「目的」以外の色んな物が身の回りに存在していると、注意散漫になり、本当に達成したい「目的」にエネルギーを注ぐことができないのです。だからこそ、片付けを通して「いかにお金や時間という限られた人生のリソースを達成したい目的に集中できるか」についての方法が数多く書かれているのが本書です。

私としては片付けに関しては先に紹介した2冊で充分身についていたので本書は参考程度に買ったのですが、片付けを「人生の目的を最大化する」ためのものとして捉える見方は自分には無かったので読んでみて得るものはありました。

どの本も片付けは自分の人生と向き合うことが述べられていますが、最初のカレンさんの本が「心の内面・マインド」を深く取り扱い、次の近藤さんの本は「ワクワク・ときめき」を重視して物を整理するやり方を述べ、最後のDaiGoさんは「人生の目的の最大効率化」を片付けを通じて目指すといった感じで、それぞれ片付けの違う側面に着目しているのが面白いです。

実践編:本の電子化のススメ (主に美術・ビジュアル資料本)

ここからは実践編です。今回は本の処分に絞って考えます。まずは大量の本をどのように処分したかについてですが、私は本の電子化(紙の本を裁断し、スキャンしてpdfすること)をしました。大量に本があると言っても私の場合はちょっと特殊で、蔵書しているほとんどの本が美術・アート・デザイン関連の本でした。特にデザインの勉強していたときには展覧会の図録やPhotoshop・illustratorといったソフト関連の本、イラスト集や画集、グラフィックデザイン関連やアート本、ゲームの攻略本・設定資料集など洋書も含めて集めまくっていたので、部屋が本であふれかえって床が落ちるぐらい溜まっていました。こうした視覚芸術系の本はハードカバーだったり大型で場所をとるものが多く、更に本を参照するにしても重くて、模写をするにしても広げっぱなしにしづらくて、結局しまわれたまま、全然活用されていなかったのでした。

しかし、あるとき大量の本に囲まれている中で気づきました。

いくら本を所持していても、その内容を自分の血肉としないと意味が無い。本のコレクターになっていてはだめだ。ちゃんと活用できる形で電子化して、自分の血肉とすることで、そこから何かを出力したい。そもそも本から学べたことを自分がアウトプットして、結果を出すためにこれらの本は買ったのだから。

そもそもこんなに大量に本を買ってコレクションしていたのは、私自身に何かしら不安があったからです知識のなさや、技術のなさを本を買うことで埋めていたのです。だから、本のコレクターを辞めて、最も活用できる電子データという形にすることにしました。電子データにすればタブレットやモニターで拡大しながら絵が見れますし、本立ても要らないので模写にも便利です。なにより将来引っ越したり、また海外に留学や働く事になったときに大量の資料本をタブレット一つで持って行けるというのは大きなアドバンテージです。

電子化した大量の本の例(冗談ではなくこの写真の100倍ほどの量を電子化した。それぐらい数年掛けて集めてきた本は大量だった)。将来的にはこれらの本を全部レビューしてブログ上でカタログをつくりたい。(海外Parkaブログのように:参考 https://www.parkablogs.com/)

 

せっかく買った本(しかもほとんどが新品)、しかも画集やデザインといった視覚系の参考書を電子化するのはもったいないかもしれません。しかし、活用しないで眠らせたままだともっともったいないと思います。活用せずに本棚やクローゼットに入れたままでホコリを被っていては、ただの場所を取るガラクタです。私も最初は断腸の思いで電子化に踏み切ったのですが、今では電子化して本当に良かったと思っています。

一冊4万円近い「ルーブル美術館とパリの素描」も全巻電子化しました。

 

大量の本を電子化したことで生活の質が一気に向上しました。これまで部屋に漂っていた停滞感が無くなり、気持ちも軽くなって本来自分がするべき勉強や目的に向けて集中した行動を取ることができるようになったのです。特にゲームの攻略本は私自身愛着があり、デザインやイラストの資料面でも非常に価値があるのですがずっと保存場所に困っていました。しかし電子化したことでだいぶスッキリして管理も楽になりました。

電子化は自分で行う時間と手間を考え、代行業者にお願いしました(なお、自分で本を裁断しスキャンして電子化することを自炊するといいます。)。私は「電子化本家」をフル活用しました。サポート対応が完璧で、本の折れページ(大きなイラストページ)などかゆいところに手が届くスキャンをしてくれます。値段も満足できる範囲ですし、何より納期をきっちり守ってくれます。私が持っていた大量の本を満足なクオリティで電子化してくれた彼らには感謝してもしきれないぐらいです。なお、マンガに関しては「マンガスキャン王」が高クオリティかつ低価格でサポートもしっかりしており、納期を気にしない方はマンガスキャン王をおすすめします。

■参考:私がフル活用した電子化業者
電子化本家 https://www.densyoka.jp/
マンガスキャン王 http://mangascanoh.com/

電子化の難点

画集など美術資料を電子化する難点として、色味は多少失われます(黒く潰れる)。光速のドキュメントスキャナーで取り組むので、どうしても紙に印刷された時のような色の輝きは再現できません。私としては許容範囲ですが、色味の繊細さの完璧な再現に関しては諦めるしかないでしょう。(銀や金箔の印刷も黒く潰れる。)また物としての存在からデータとしての存在になるので、パソコンが壊れた時などデータ消失で一気に財産が消えて無くなることもあります。200~300万の価値のある蔵書データが一気に無くなることも想定できるので、かならず複数のHDDやSSDに保存したり、自分だけのクラウドストレージにコピーするなどしてバックアップは必ず取りましょう。問題となるかは分かりませんが、電子データとなると中古として売ったり出来なくなるので、「電子化する=そのデータを本の著作権含め最後までしっかりと自分で管理する」点は意識しましょう。

また、電子化代行業者は著作権的にグレーな領域のようで、ちゃんとした業者を選ぶことが重要です。(さきほど紹介した二つは問題ないです。)基本的に業者は既に裁断された本は取り扱わないですし、一度電子化して裁断をすると本は戻ってきません(自分の手元にはpdfデータだけが戻ってくる)。本を裁断しないで電子化を行う非破壊スキャンを依頼できるところであれば大丈夫ですが、その分値段が高額になります。業者によって図版メインの本は扱っていない場合もありますから、しっかりと見定めることが重要です。また、電子化代行に反対する著者の本は業者では電子化を依頼できません。例えばジャンプ漫画「NARUTO」の作者岸本斉史さんといった人気作家も含まれるので、それらの本を電子化したい場合は自分で自炊するしかないです。

■それでも電子化は素晴らしい!特に絵の資料本は。
しかし、それらの欠点や手間があったとしても電子化のメリットは素晴らしいです。旅行や海外の際に手軽に自分の全蔵書ライブラリーを世界中に持ち運べるのはもちろんのこと、絵の資料本では紙の画集では小さく印刷されている絵を拡大して大きく見ることが出来るのが最大のメリットです。Amazonで販売されている電子本の中には「GRANBLUE FANTASY グランブルーファンタジー GRAPHIC ARCHIVE」や「たのしい インフォグラフィック入門」に見られるように図版メインなのに低解像度で販売されているものもあって、kindle版のグラブルの画集を返品し、紙の本で買い直したあとに自分で電子化したほどです。(「たのしいインフォグラフィック入門」は返品期限が切れたため渋々低解像度のkindle版で我慢しています…。出版社もビジュアルメインの本でKindle版を製作する時は容量では無く常に高解像度を優先するべきです。)

紙の本では小さい図版が拡大して大きく表示されることが電子化の利点。図はGRANBLUE FANTASY GRAPHIC ARCHIVE II(ポストメディア編集部)150ページよりシャーマンの図 kindle版ではなく、グラブル画集第1弾の失敗から、紙の画集を買ってからそれを電子化したもの 基本解像度は300dpiとなる。

 

ただ、何でも電子化すればいいというわけではなく、実物を眺めているだけで創作意欲が湧いてくるようなワクワクするような本は残しています。また音楽関連の本も大量にありましたが、実用性の観点から楽譜はすべて紙の本のまま残しています(非破壊スキャンで電子データのpdfは欲しいけれど、お金との相談ですね…)。

終わりに:処分して後悔した物 真に大切な物は残すべき

片付けをしていく中で大量の物を処分するかと思いますが、「唯一これは後悔した」というのがあります。私にとっては「昔のゲームのソフト」を処分してしまったのが唯一の後悔です。当時はすごく精神的に追い詰められていて、それを反映するかのように部屋も物で溢れ「とにかく物を減らさなくては先に進めない」と思い込むほど切羽詰まった状況でした。昔のゲームなんてもうこれから使うことも無いだろう、と当時の私は思ってしまったんですよね。だからほぼ新品同様のコンディションで保存してあった箱付き・説明書付き・はがき付きの思い出が詰まったゲームソフトを近所のブックオフや駿河屋で10円~50円で投げ売りしてしまいました

…これが大失敗でした。数年経ってから、私にとってそれらがどんなに価値があったかに気づいたんです。そもそも私は人生の多くをゲームによって支えられていた部分がありました。学校は上手くいかなかったし、一般的なレールからも外れてしまったし、苦しいときや寂しいときもゲームがあったからどうにか乗り越えることができたのです。だから今でもゲームが一番好きですし、ゲームに愛着を持っています。私にとってゲームは人生を支えてきた糧であり、それらを処分してしまったことで心に大きく穴が空いてしまったような、大きな虚無感を抱くようになってしまったのです。自分にとってゲームの本当の価値に気づき、あとから買い直すも、昔のゲームほど状態がいい物はプレミアがつき高価格。いくつか買い戻しましたが、あのとき両親に買って貰ったゲームと同一の個体では無いし、あの頃友達と遊んだ時間が詰まったセーブデータもないから、喪失感は埋まらず余計にむなしくなりました。

今回の片付け失敗の原因は、精神的に追い詰められて不安定だったときに片付けをしてしまったことです。実際片付けをしていくと「物が減り、スッキリして自分はちゃんと仕事をしている&人生が前に進展していく」感じが得られてドンドン物を処分していきたくなりますが、判断力が鈍った時に勢いで物の処分を決めると私のように後ほど後悔することもあるのです。

ただ、先ほど述べたこととは矛盾するようですが、実際に片付けをして処分して後悔することはほとんど無いです。ただ、そのごくごく一部の捨ててはいけない物、自分にとって本当に大切で価値のあるものは処分してはいけません。それらは人生を支えてくれる大きな価値・糧を提供してくれるのです。人それぞれ大切な物はあると思いますが、私にとってはそれが子供の頃遊んだゲームでした。何でもかんでも処分すればいいって訳ではないのです。極端なミニマリストとの違いはここにあると思います。片付けは精神的に落ち着いている時に行いましょう。そして本当に大切な物だけはしっかりと残してあげましょう。

参考文献・リンク

・「ガラクタ捨てれば自分が見える」カレン・キングストン (小学館2002年5月1日)
・「人生がときめく片付けの魔法」近藤麻理恵 (サンマーク出版2011年1月15日)
・「人生を思い通りに操る片付けの心理法則」メンタリストDaiGo(学研+2017年12月6日)

 
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