【書評と感想】「知のトップランナー149人の美しいセオリー」ジョン・ブロックマン[編] コンセプトは良いが、内容は質より量。読む人を選ぶ内容で一般向けではない。

【書評と感想】「知のトップランナー149人の美しいセオリー」ジョン・ブロックマン[編] コンセプトは良いが、内容は質より量。読む人を選ぶ内容で一般向けではない。

【書評と感想】「知のトップランナー149人の美しいセオリー」ジョン・ブロックマン[編] コンセプトは良いが、内容は質より量。読む人を選ぶ内容で一般向けではない。
知のトップランナー149人の美しいセオリー」は世界の最前線で活躍する第一人者達のお気に入りの美しいセオリーとは何か?という問いに関するエッセイ集です。ネットでの評価も高く、何かアイデアの参考にしようと読み進めたのですが…正直かなり微妙でわかりづらい内容でした。今回はなぜこんなにも満足出来ない読書体験をしたのか、という感想をまとめたいと思います。

本書の着眼点は素晴らしいが、一つ一つが短すぎる構成。玉石混交で、質より量を優先した内容。

本書の「世界で活躍する第一人者が考えた美しい理論を紹介する」テーマは凄くいいと思うんですよ。ただ…私は自分の知らない分野の知見を得ることが出来ると期待しましたが、内容がどれも短すぎて、専門用語のオンパレードで読み進めるのが苦痛でした。専門用語を専門用語で説明するといった流れが多く、分かりづらいことこの上ありません。短くて1ページ(短いもので数行)、長くて6ページほどで、殆どが2ページで収まる短い分量のもので占められています。限られた紙面にまとめるためには専門用語の羅列に徹するしか無かったのかもしれません。ただ、それでも高度に科学的、専門的で一般読者は置き去りにされてしまう内容だと感じました。

新しいアイデアや発見を楽しむというよりも、既に知識がある事前提で、「自分は○○の理論が美しいと思う、それはどういうことかというと〜」といった流れで進みます。

私の場合は心理学・哲学のトピックは理解できましたが、説明がだいぶ端折られているのでこんな短い文章を読むぐらいならそれぞれのテーマを扱った専門書を読んだ方がよほど得るものが多いと思いました。

話の内容も短い原稿スペースに合わせるためか起承転結でいう起で終わっているエッセイが散在し、後半の帰結があいまいで漠然としたり、抽象的です。専門用語をこねくり回して一見すると高尚な事を語っているように見えて、実態は分かりやすく説明する配慮がなされていないので著者の自己満足的・閉鎖的な印象を受けます。

ダーウィンの進化論に関する内容が多め

この本に出てくる人達は一流とされるどこかの教授か作家さんで、心理学で言うフロー体験のミハイチクセントミハイや「心のしくみ」・「暴力の人類史」などの著作で有名な心理学者スティーブン・ビンカーさんも出てきます。ただ、全体的に科学・数学よりの話が多く、中でも多いのはダーウィンの進化論でした。少ない記述で多くの事象を説明できる、というところが美しいとされた理由だそう。数学的な理論や理系の専門的な話が出てくるので、それらに関しての理解・教養が無い今の私が読んでもイメージしづらくよく分からない話が多かったです。

本書はどう活かせば良いのだろう?

本書を知ったきっかけは実はスティーブン・ビンカーさん関連の本を探している時にAmazonで見かけて評価が高かったからでした。大人として基本的な理数系の教養も身に付けたいし、サイエンス的な話も理解しておこうと思って買ったわけですが、実態は既にある程度の理数系の教養を身に付けていることが前提の内容でした。

本書を活かすとするならば、堅い日本語と小難しい専門用語の羅列の連続なので、脳みそのトレーニングとして音読用…がいいのかもしれません。翻訳本なので原著はずっと安く、専門用語を英語で読む訓練として原著に当たっても良いかもしれません(原著はTOEFL対策になるかも?)。

まとめと感想 3000円以上したけれど…

対象読者は理系の専門的な教養がある人。初学者には不親切で、本書で知的好奇心が満たされることは無かった。


帯にはシンプルな原理が複雑な世界を解き明かす、とありますが、肝心のそのシンプルな原理の説明がシンプルすぎてまるで見識を広げるのに役立ちませんでした。自然科学・数学的な定理や理論、アインシュタインの特殊相対性理論など、読者が知っていることを前提としているので非常にわかりづらい本でした。対象読者は理系の教育を経て理数系の教養を身に付けた人でしょうか。

こうした読み進めづらい本と向かうときは、自分はこの本からどんな情報を得ようとしているのか?なぜこの本を手に取って読もうと思ったのか?ということを自問自答しながら向き合います。本書の場合、最初は専門家による様々なトピックに触れる事で自分の見識を広げる事ができ、知的好奇心が刺激されることを期待していましたが、読み進めていくうちに内容がただ専門用語を連ねての知的な言葉遊びのように思えてきて、果たしてこの本を全部読むのに自分の貴重な時間を捧げても良いのか?と疑問に思いました。結果として全部読みましたが、それは自分にとって訳が分からない、よく分からない文章って一体何が原因なのか?という考察をしてみようと思ったからでした。

結論から言うと、自分にとって分からない・馴染みの無い単語を多く利用した断言調の文章は読みづらい、という発見がありました。そして、理解できない文章を何度読んでも分かるようにはならない(分かった気にはなる)こと、素直に入門書や図解辞典などから教養を身に付けた方が良いということを実感しました。

本書は私にとって、なにがわかりづらい本なのか?と考え、よく分からない文章とは何か?を考えるきっかけを与えてくれた本でした。

無理して専門用語の羅列で構成されたこの本を読むよりも、ストーリー性と世界観がしっかり構築されたゲーム作品(ゼノギアスとかゼノブレイド、FF9など)を遊んだり、SFなどの映像作品に触れる事の方が世界の視野や物事を捉える感受性が広がるのではないかと思います。

■日本語版「知のトップランナー149人の美しいセオリー」青土社 (2014/11/21)

■原著「This Explains Everything: Deep, Beautiful, and Elegant Theories of How the World Works」John Brockman (著)

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