時間が足りない、焦りや不安がある、感情の波があり、過去への悔恨や将来への心配にとらわれてしまう。そういった過去や未来の出来事、不安や心配といった感情の波にとらわれてしまい苦しむ人は多いと思います。そんなとき、今現在を受け入れ、今この瞬間に注意を払うマインドフルネス(mindfulness)という考えが役に立ちます。不安症や心配性で苦しむ人にはとても有効な概念です。
目次(Contents)
マインドフルネスとは?
マインドフルネスとは、今現在の体験を価値判断などせず受け入れ、思考や感情にとらわれずに意識的に現在に注意を向け続けることです。
古来より瞑想などでこのような心のあり方は実践されてきましたが、マインドフルネスはそれらからヒントを得て、悟りや精神修行といった宗教観を排除し、一般の人が実践できるようエッセンスを取り出したものと言えます。科学的エビデンスに基づく有用性も確かめられており、痛みの治療やストレス低減などの研究が行われてきました(ジョン・カバット・ジン,1979)。
マインドフルネスと瞑想は混同しがちですが、マインドフルネスは今自分がどこに注意や集中を向けているのかに気づき、その注意に関心を払えれば手段はなんでも良い(食事時の箸の動きや喉の感覚、歩くときの足の裏や動作の感覚に注意を払うなど)ので、瞑想それ自体とは違います(マインドフルネスを鍛える手段として瞑想を利用している)。
マインドフルネスはフローやリラックスや無になる状態でもない。
また、マインドフルネスは何かに没頭して時間が忘れる感覚になるフローや緊張が解かれたリラックス状態、自分の思考を一切なくす何も考えない無の状態を目指すものでもありません。
マインドフルネスは現在の自分の思考や感情の流れをただ眺める、観察するものであり、自分が何かを考えたとすると、それに気づき流していく感覚です。自分の思考や感情に気づいたら、それに反応しないでただ眺め、本来自分が注意するべきところに意識を向ける。マインドフルネスは「観察」に一番の重きを置いています。
・不快なニュースを目にしてしまった→嫌悪感や不快感という情動が湧いて来たことに気づく(観察)→不快感が自分の中に来訪していることを認識しつつ、本来するべきことに注意を向ける。
怒りや不快感といったネガティブな感情を判断したり否定するのではなく、ただ眺め、受け入れ居場所を与えていく。自分の中に感情の居場所を与えて、しばらく眺めることで、そうした不快な感情が過ぎ去っていく。
余計な関心ごとや雑多な思考、不安や焦りといったとらわれからの解放が目指せるため心理療法の世界でも広く採用されており、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)や「あるがまま」を目指す森田療法などにはマインドフルネスの考え方が採用されています。
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自分の価値観、成し遂げたいものにマインドフルになろう。
自分が何をしたいのか?自分が人生で成し遂げたいものはなにか?自分の人生で最大化したい価値観につねに注意を払う(マインドフルになる)感覚を持てるようになると生活の質が大幅に高まります。
世の中には多くのニュースや情報刺激にあふれています。自分とは関係のないニュースを見ては怒りの感情にとらわれ、自分より優れた同世代をみれば嫉妬や羨望、焦りを感じ、未来への不安や過去の失敗へのとらわれで、今現在の自分を十分に発揮できない人も多いでしょう。
マインドフルネスは観察と気づきの能力です。今自分がどのような状態で、どのようなことに意識を向け、何をしているのかに気づく力。気づくことさえできれば軌道修正もできますし、自分がどのようなとらわれや感情に支配されかかっているのか観察し、判断せずに受け入れることでそれらに引きづられることなく対処できるようになります。マインドフルネスの力が高ければ、今現在の自分が今するべき仕事に注意を向け、それに集中することができます。