【書評と感想】エマソン名著選「自然について」「精神について」彼の思想の神髄はどんな状況、環境でも自分らしくあることにある。

【書評と感想】エマソン名著選「自然について」「精神について」彼の思想の神髄はどんな状況、環境でも自分らしくあることにある。

【書評と感想】エマソン名著選「自然について」「精神について」彼の思想の神髄はどんな状況、環境でも自分らしくあることにある。

今回は以前まとめた「自己信頼」の著者エマソンのエッセー集「自然について」、「精神について」を取り上げます。これらの本は私がまだ大学生だったころの悩み多き時代、私が自己という抽象的概念の沼に陥っていたときに手に取った2冊ですが、今から思うと良く読めたよなぁ、という本です。エマソンはアメリカの思想家ですが、形骸化した教会を辞め、作家として生きました。己の内にある信念・真実を徹底的に信じることを是とする彼の思想は、インド哲学のラマナマハルシのいう真我の思想とも共通していて、自分の中の真理に気づいてその通りに生きる事を主張しています。彼の思想は「自己信頼」のエッセーに全てが詰まっているので、それだけ読めば十分ですが、過去に自我とか自意識とか抽象的な概念を考えすぎていた時期、その頃の自分に区切りを付けるべく本書もレビューして自分なりに消化してみようと思います。

彼の教えの神髄はシンプル。己の中の真実をひたすら信じること。

エマソンの思想は極めてシンプルです。それは、自分自身の中にある真実を信じる事、どんな状況でも自分らしく行動する自己信頼こそが人間本来があるべき態度だといいます。

キリスト教では唯一絶対神を自分の外に見いだしますが、キリスト教の教育を受けたエマソンは個人の内面に神を見いだすというのですから、教会に関係する者として相当過激な思想をしていたことが推測できます。

実際に彼の思想哲学は超絶主義(Transcendentalism)として自然現象や森羅万象をある精神(魂)の現れであるとし、神の意志はそこに宿っているとしました。

エマソンの思想はクエーカー(Quaker)というキリスト教プロテスタントの一派である自分の中にある内なる光と一体化するという思想にも共通する概念で、エマソンは自身のことを誰よりもクエーカー的だったと言います。(クエーカーは神と直感的に一体となることで霊的な一体感を得て体を震わす=クエイクさせる所からその名が取られた)。

自然について」では有限の世界の森羅万象の中に共通する神の精神を見いだす超越主義の考えが論考されていて、自己信頼も収録されている「精神について」では個人のうちにある精神性、普段の日常生活の行為までもが神が生きていることを示していると主張しています。個人の中に真理(個人個人が体験する光)を見いだして、堂々と生きろと問いかけているかのようです。

全体としてキリスト教や宗教に関する言い回しが多く、訳も直訳的で古風で尋常じゃ無く読みにくいのですが、彼の思想を簡単に言ってしまえば自分の内面に神がいて、その声に従ってどんなときも自分らしく振る舞うことが重要、ということです。自己信頼とは自分の内面にある神を信じると言うこと。他者に迎合したり、自分に自信が無い態度は自分の中にある直感(真理=神)を信じないということになります。

また、この自分の中の光というものは表面的な自我(私)とは区別されていて、よりもっと直感的なものだと説明されています。こうした点はインド哲学の中でも真我の思想に強く影響されていると感じます。また、今考えると「嫌われる勇気」のアドラー心理学と親和性があるな、と思います(嫌われる勇気は言い換えれば人に好かれようと迎合しない態度)。

書評・感想 非情に読みにくい翻訳本。よく読めたなと思う。概念的で抽象的な思考は現実世界で行動するきっかけにならなければ役に立たない。

さて、今回の日本教文社から出ている2冊ですがとにかく読みにくく、分かりにくいです。英語の原文はシンプルで詩的なんですが、良くもまぁこんなに難解で小難しく訳したよなって思います。

今から読み返すと凄くスピリチュアル的で概念的という感想を持ちます。自己とか哲学的な概念は浸っている時は面白いけれど、やっぱり現実を乗り越えるには実践行動あるのみですから、考えただけで納得しても行動出来なければ意味がありません。抽象的な思考で満足して真理を掴んだ気になって行動しないでいたら停滞につながります。

今だから思う事として、科学的にエビデンスのある心理学の知識を身に付けて本当に良かったと思います。集中力や習慣行動、やる気、生産性やパフォーマンスの改善につながる様々な科学的根拠のある知識を身に付けたからこそこうした概念的な本から脱却できたというか。知識が無かった頃はこうした漠然とした概念的な自己啓発本や精神世界といったものに足を踏み入れ、一時の安心を得られたものの、得られた結果はとても少なく、限定的でした。こうした知的な内面の探求は一つの思想としては面白いし、創作に活かされたり、興味深いものだけれど人生で直面する悩み解決や人生をより良く変えて行くといったものを求めるのは効率が悪いです。

概念的な、形而上学や哲学的な概念をこねくり回したい人にはこうした本は向いているかもしれませんし、昔この本を読んだときはそれこそ達成感を感じたものですが、冷静になって考えてみたら、シンプルなことをわざと小難しく語っているだけで、本の装丁や難解な文体がいかにも高尚なことを伝えているようだけど、もっと簡単に説明できる事を分かりにくく説いて仰々しさを出すのはなんか違うな〜と思います。

個人的にはエマソンは以前まとめた自己信頼だけで充分で、エマソンのことを知りたければ「精神について」に含まれている入江勇起男さんの訳者後書きがコンパクトにエマソンの思想や生涯の変遷についてまとめているのでエマソンに興味がある人はそこだけ読んでみるのもアリでしょう。本書はアメリカの思想やキリスト教文化、哲学の教養を身に付けるには役には立つでしょうが・・・無駄に難解で読みにくいので、読むにしてもシンプルな英語版を読んだ方が良いと思いました。

■「自然について」ラルフ・ウォルドー エマソン (著), 斎藤 光 (翻訳) 日本教文社; 改装新版 (1997/1/1)

■「精神について」ラルフ・ウォルドー エマソン (著), 入江 勇起男 (翻訳) 日本教文社; 改装新版 (1997/01)

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