MITメディアラボの所長を務める伊藤 穰一さんの一冊「教養としてのテクノロジー AI、仮想通貨、ブロックチェーン」を読了したので気づいた事や学んだこと、その感想などをまとめます。全体として知識を得るというよりかは、テクノロジーに精通した伊藤 穰一さんのエッセイ集といった感じです。
目次(Contents)
AIは労働をどう変える?お金以外の価値が重要性を持つ
科学技術やコンピューターは人間の夢や希望を実現してきたものの、万能ではありません。ムーアの法則で知られるコンピュータの性能が18ヶ月ごとに2倍になるとするインテル創業者の一人であるゴードン・ムーアが提唱した半導体業界の経験則は今では鈍化しています。
技術特異点(シンギュラリティ)と呼ばれる人工知能が人間の知能を遙かに上回るほど発展する2045年にはAIが何でも解決してくれると信じるのは違うということです。
そしてコンピュータやAIが進歩していくとき、人間は何を幸せに生きるのか?自分にとって何をしている時が最も幸せなのか?について考えることが求められます。
労働について考える事は重要なテーマであり、お金のために働くよりもお金では得られない自分の価値を重視して働く事が求められます。
仮想通貨について
「仮想通貨の成り立ちは国家の監視を抜け出すため」という視点はなるほど、と思いました。国家が発行するお金も「ありとあらゆるものと交換できる」という信頼の元で成り立っているので、その意味ではヴァーチャルな(現実には無いが、実質存在する)もの。昔のように金本位制で金と交換できる訳ではなくなったものの、こうした信頼の上にお金の価値は成り立っています。
ブロックチェーンについて
ブロックチェーンは仮想通貨の取引データを暗号化して一つのブロックとして記録・管理する方法です。低コストで情報を持つコンピューターが分散しているためセキュリティ性もあります。こうしたブロックチェーン技術は電子的な資産(デジタルアセット)の管理に使われています。
マグロの量やCO2排出量など、自然の資本もテクノロジーで見える化して管理する視点はなるほど、と思いました。例えばCo2排出量などはテクノロジーが管理することで売買の対象となりました。
人間拡張の技術でパラリンピックが進化する
人間と機械の付き合い方も変わっていき、例えばパラリンピックでは義足の進化で健常者よりも速いタイムを出せるようになりました。こうした人間の能力を拡張する方向に機械が進化して行く可能性は夢があるなと思います。
宗教によってロボットとの付き合いも変わる
キリスト教文化など神(創造主)を前提とする宗教が文化に組み込まれたところでは、人間のように話すロボットに違和感を感じる、というエピソードが印象的でした。日本ではドラえもんや鉄腕アトムなど、人間のような話すロボットがとても身近で会話する存在として親しみを持って受け入れられますが、そうでは無い感覚を持つ人も世界には多いのだそう。一方で西洋は奴隷の歴史的経緯があるので進化したロボットに人間が支配される発想があるのに対して、日本はその視点が希薄だといいます。
教育について
学校教育はただ言われたことを黙々とこなすロボットのような人材を生み出すのでは無く、自分自身が興味を持ち、大切にする価値を最大化することが重要とのこと。普段から感じているテーマですが、海外にはアンスクーリングといって学校には行かせずに子供の興味を持ったものを徹底して大人がサポートする取組が行われているらしく、そのアンスクーリングで働く人は元教師が多いのだそう。
感想 全体として多様性とお金では買えない価値が意識された内容。読んでいる時はなるほど〜と思うけれど、それを個人でどう活かしていくのかは曖昧模糊
読みやすい本で、実際読んでいる時はなるほど、ふむふむ、こういうことがあるのか・・・と思いますが、読後はあっさりしていて余り印象に残らなかった一冊です。
というのも、ある程度専門的にテクノロジーに精通している事が前提?で、本書の内容はその技術を既に自分で使いこなしたその先の理想を語っているからです。
全体としてはテクノロジーの進化により今後ますます多様性が求められ、お金では得られない価値が重要性を帯びてくるので、自分なりに人生で何を大切にして生きて行くのかを考えていこう、といった感じです。
大きな理想を語っているものの、ちょっとぼんやりとしていますね。専門外のいち読者の印象としては特に日常で活かせるような知識は得られず、本著の著者である伊藤穰一さんやアンドレー・ウールさんの考えや思考、どこを目指しているのかが分かるという読後感でした。
■教養としてのテクノロジー―AI、仮想通貨、ブロックチェーン (NHK出版新書 545) 伊藤 穰一 (著), アンドレー・ウール (著)
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