暖かみのある美しいグラフィックに定評のあるヴァニラウェア開発、日本一ソフトウェア発売の「グリムグリモア(gRiMgRiMoiRe)」(2007年)をクリアしたのでその感想をまとめたいと思います。元々私はヴァニラウェアのグラフィックが大好きで「オーディンスフィア」や「朧村正」をプレイしてきましたが、このソフトの存在は全く知りませんでした。2019年9月に知人からグリムグリモアの存在を聞かされ、早速購入してプレイしてみました。
目次(Contents)
ストーリー:魔法学校を舞台に永遠に繰り返す5日間。ループもの好きにはたまらない内容
魔法に秀でた少年少女を集めた魔法学校が舞台・・・といえばハリーポッターのような学園的な世界観をイメージしますが、本作は学園要素よりもミステリー要素が強く押し出されています。
主人公リレ・ブラウは弟たちを養うために魔法使いとして出世する事を夢見て魔法学校に入学しました。希望に輝かせて入学したのもつかの間、奇妙な事件に巻き込まれることになります。なんと、入学して5日目に世界を震撼させ封印されていた魔王が復活してしまうのです。
魔王に襲われそうになったその瞬間、鐘の音が鳴り、リレ・ブラウが目覚めるとなんと入学初日に時間が巻き戻っていました。なぜ魔王が復活したのか?なぜ自分だけ時間が戻ってしまったのか?プレイヤーは繰り返される5日間の間に魔王復活を阻止するために動きます。
本作はループものストーリーとして先が気になる展開がよくできており、リレ・ブラウだけが記憶を持ったまま過去に戻ることで、一周目には失敗して成し遂げられなかったことを2周目、3周目…と解決していく物語展開は読んでいて没入しました。時間が巻き戻っても記憶と持っている魔導書(グリモア)は失われていないのがポイントで、繰り返す5日間の中で物語の鍵となるピースを集めて魔王の復活に備えていきます。シナリオは一本道だけど、先が気になってどんどん進めてしまうプレイ感覚でした。
世界観設定 魔王復活を阻止する王道魔法ファンタジー。
魔法学校のある塔はもともと魔王の住処でした。魔王の名前はカルヴァドスで、魔法学校の校長ガンメルと今では幽霊となって彷徨うルジェと同じ偉大な魔法使いの一人でしたが、3人の力を合わせて作りだした賢者の石を独占しようとした結果、ギムレットという悪魔と契約し、ダークサイドに落ちてしまいました。
名前がややこしいですが、要は強大で狡猾な悪魔のギムレットとその悪魔と契約した魔王カルヴァドス(人)の悪役二人をどうにかして、無限ループの謎と原因を突き止める、というのが本作のゴールです。
世界観は王道魔法ファンタジーに錬金術を含んだ感じで、ヴァニラウェアの温かみのある美しいグラフィックと非常に調和しています。魔法や錬金術、悪魔や妖精など伝統的なファンタジーの世界観が好きなら楽しめるでしょう。
悪魔が魅力的に描かれている。
本作では個性的な先生が登場しますが、その中でも印象的なのは悪魔のアドヴォカート先生でした。アドヴォカート先生は校長のガンメルと契約しており、黒魔法を教える先生。校長のガンメルいわく、悪魔から黒魔法を教わるのは画期的で素晴らしい…とのこと。
最初は嫌味で狡猾さを感じさせる人物として描かれていますが、ループを繰り返していく中で彼の人柄がわかり、彼が持つどんな悪魔でも従える「ソロモン王直筆の小さな鍵」というグリモアは物語のキーとなってきます。主人公リレ・ブラウがアドヴォカート先生から「小さな鍵」を入手する場面は本作の中でもひときわ面白かったところです。「悪魔を使役するには対価として魂と契約書が必要で、契約を破った悪魔は力を失う」という設定も印象的で、物語に生かされています。
ゲームシステム:リアルタイムシミュレーション(RTS)は本作で初体験した。
本作は物語が紙芝居形式で語られるシナリオパートと戦闘パートの二つが交互に進んでいきます。その戦闘パートでは珍しいリアルタイムストラテジー(RTS)が採用されています。
これはグリモア(魔法書)を使用してリアルタイムに精霊や妖精、悪魔を召喚・使役して自分の砦や陣地を守り、敵の陣地を攻略していくものです。主人公が使えるグリモアは物語を進めるにつれて増えてきます。行動エネルギーの源であるマナを集めながら、マナを消費して強力な悪魔や精霊を召喚し敵の陣地を落としていく。状況がリアルタイムに進んでいくため一旦始めると慌ただしくあっという間です。その分一戦あたり結構疲れます…。
気になったところ:戦闘パートの時間拘束が長い!
物語は非常によく出来ていますが、戦闘パートが大変で早く物語の先を読みたいのに長い戦闘パートを強制されるのでモヤモヤしました。実際に20分防衛戦では20分守りきることが求められますし、時短として敵の魔法陣を全て攻略するのも骨が折れます。開始してしまえばあっという間ですが、一戦あたりのプレイヤーの消耗が激しいのが難点。
■PS2を今更起動するコストがかかるのでPS3のアーカイブスがオススメ。
ゲームとは直接関係ないところですが、本作はリメイクもされておらず、PS3にアーカイブが配信されたのみです。PS2を今更起動するにはコストがかかり、ヴァニラウェアの美しいグラフィックを堪能するのならPS3のアーカイブをするか、コストはかかりますがHDMI変換を使った方がいいでしょう。
音楽はベイシスケイプが担当。サウンドトラックが入っているのはPS2の初回限定版のみ。
透明で情緒豊かに世界を彩る美しい音楽制作が特徴のベイシスケイプが本作のBGMを担当していますが、サントラは発売されておらず、PS2の初回限定版のみです。そのサントラもタイトルに誤記があります。私が気に入った曲は7と12番ですね。
01 グリムグリモア メインテーマ
02 BOOK OF DAYS
03 魔法教室
04 SINCERELY
05 練習開始!
06 成績優秀者発表!
07 古代の秘法
08 決意と衝撃
09 疑惑
10 戦闘
11 赤点落第者発表!
12 焦燥
13 緊迫の渦中で
14 深刻な事態発生!
15 暗の障壁
16 魔王と絶望
17 回帰線の彼方に
18 Congratulations!
参考・出典:サントラCD公式お知らせページ(古いページなので文字化け注意)
感想・評価 ループものが好きで、魔法ファンタジーの世界観に浸れるのなら是非体験して欲しい。
クリア時間は12時間程度。シナリオがループもので面白いですし、最後の意外な展開も衝撃的でクリア後の印象はすごく良かったです。キャラクターたちのまるで生きているかのような呼吸表現。敵キャラや召喚する精霊、背景のグラフィックも素晴らしいです。男の子キャラの二人があまり活躍出来なかったのが残念ですが、ヴァニラウェアの神谷さんのインタビューによると続編を前提とした内容だったようです。それでも本作を自分で実際にプレイできてクリアまでいけたのは満足しています。
でも、まさか2007年にこんなゲームが発売されていたとは気づきませんでした。ヴァニラウェア開発の作品はだいたいプレイしてきたつもりでしたが、本作は盲点でした。
今からプレイするのは敷居が高いですが、機会があれば是非プレイしてみてください。
画集は出ておらず、攻略本がアートブックの役割を果たしています。
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