選択の心理学「選択肢が多ければ多いほど選択できない」事実 後悔しない選択をするために

人生は選択の連続。進学・就職・転職・結婚などの大きな選択に限らず、夕飯はどうするか、誰と今日は会おうか、いつ寝るか、など人は人生のあらゆる局面で選択をしています。今回は購買行動の分野で後悔しないものを選ぶための選択とは何か?について見ていきます。

人は選択肢が多いと選べなくなる。「選択のパラドックス」

まず知っておきたい事実の一つに「人は選択肢の数が多ければ多いほど選ぶのが難しくなる事実」があります。人は多くの選択肢を提示されるほど良い選択をするのが難しくなってしまうのです。人は与えられた二択の選択肢なら比較して選択することができますが、選択肢が多くなればなるほど決め方が適当になり選択が甘くなってしまうのです。与えられた選択肢の数が多いほど現状維持の圧力が高まり、これまでと同じような選択を選んでしまう傾向があります。

たとえばジャム屋に行ったとしましょう。手持ちにあるのはジャムを1個しか買えないお金です。そのジャム屋の品揃えがブルーベリージャムといちごジャムの2択しかなければどちらを買いたいかはすぐに決められますが、10〜20種類といった多くの品揃えがあった場合はどうでしょう。その場合、どれを買うのかすごく迷って時間がかかる上、悩んだ結果選んだのはいつも食べていた無難なジャム…になってしまいがちです。

選択の科学」の著者、シーナ・アイエンガーは私たちは与えられた選択肢が多くなるほど不幸になると言っています。私たちは一度にたくさんのものを比較検討できないのです。ウンウンどれがいいのか悩んでいる時間が多くなればなるほど不幸になり、「あのときあっち選んでいたよかったのに。」と、かつて自分が選ばなかったほうの選択を良いものだとして思い込んでしまうのです(隣の芝生は青い)。

後悔しない選択をするには比較で選ぶ。

では後悔しない選択をするにはどうすればよいのでしょうか。結局はその選択に自分で納得感を持って選んだかどうかです。納得感をもたらすのに有効なのが少ない数に絞っての優劣比較です。

人はたくさんの選択肢の中から良いものを選ぶのは苦手ですが、二つなど数を絞った対象での比較判断は得意です。集中して脳のリソースを二つのものの間にある欠点と長所に向けられるため、どちらが優れているかを決めていくことはできるのです。これを利用して比較する対象をランダムにピックアップして決めていく方法が一番後悔しない選択の方法です。

例えばスマートフォンを選ぶのならAppleかAndroidかでます比較します。そしてどちらか決めたら今度はその中での容量の違いで比較します。そこから選んだ中で料金が納得出来るものやカメラの画質などを1対1で比較検討していきます。たくさんの候補から一度に選ぼうとするのではなく、一組ずつ比較して選択していきます。パソコンやカメラ、車など少し高い買い物をするときはこんな形で長所と短所を検討しながら優劣を付けていくのがお勧めです。

まとめ

・人は選択肢が多ければ多いほど選択できず、後悔するようになっている。
・人はあまりにも多くの選択肢の前に立たされると、ウンウンと悩むことが多くなる。この悩む時間が多ければ多いほど不幸を感じる。
・良い選択をするには、選択肢を少数に絞り、要素の比較で決めていく。

参考・出典

・「選択の科学」 シーナ・アイエンガー 文藝春秋 (2010/11/12)
・選択肢数と選択の繰り返しが選択結果の主観的満足度に与える影響 八木 善彦 立正大学心理学研究所紀要 第12号(2014)87-92

 
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