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概要
今回はロバートサポルスキーの人間の行動についての考察動画を紹介します。前半は「行動」に焦点を当て、行動の背景を説明することの難しさを扱います。後半は「人の変化」に焦点を当てて環境・文化・脳といった観点から一人の人間の変化について考察をしていきます。スピーカーが作家だけあって、使われる英語の語彙は難度が高めです。
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スピーカー:ロバート・サポルスキー Robert Sapolsky
神経科学者・霊長類学者・作家 Neuroscientist, primatologist, writer
ロバートサポルスキーは、世界をリードする神経学者で人間を含む霊長類のストレスについて研究しています。
人の行動を説明するのはとても難しい
人は限りなく暴力的な種族であることは間違いなく、しかし、同時にどの種よりも利他的な種族でもあります。同じ暴力の力でも、それをどう使うかによって、英雄になるか、希代の悪人になるのかが決まっていくのです。たった一秒前のことでさえ、なぜそうなったのか説明するのはとても難しいのです。
攻撃的行動の生物学的背景を説明しようとすれば、あまりにも多くの理由があり、想像している以上に行動は複雑であることが説明できます。脳の状態で言えば、理性を司り、感情の安定を司る「前頭葉」の活動レベル、暴力を司る「扁桃体」の活動レベルが大きく人の行動に影響している上に、テストステロンというホルモンレベルによっても攻撃性が変わってきます。過去に遡れば、虐待を受けるような環境で育った子は反社会的行動をとることが多くなります。どのような両親の元で過ごしたのか、どのような環境のもとで、どのような体験をしてきたのかも大きな要因です。
「一秒前に起こったことから、遙か昔に起こったことまで考慮に入れなくてはならない」ほど行動の背景は複雑なのです。
「変化」について
「変化」も人の行動を説明する上で考慮すべき重要な要素となります。文化、生活環境、世にあるすべての物事に変化が発生しています。かつてはヨーロッパを荒らし回った最強の軍隊はスェーデン人でしたが、ここ200年間戦争は起こらず現代ではすっかり変わってしまいました。ジョン・ニュートンというイギリスの神学者で大英帝国の奴隷制廃止に中心的な役割を果たした人物は、かつては奴隷船の船長を勤めた後、奴隷商売に投資して財をなした人物でした。しかし何かが彼に起こり、すっかり変わったニュートンは、奴隷廃止運動というこれまでとはまるっきり反対の活動を行った上、現在では彼が作詞した讃美歌 「Amazing Grace」で彼自身が自身の変化を讃えるほどになりました。
「変化」は一瞬の間に起こることもあります。クリスマス休戦で目覚めた敵陣の相手との友情では、お互いの連絡先を交換する事態も起こりました。アメリカ軍の過去の大きな過ちであるソンミ村虐殺事件で、一人の軍人ヒュー・トンプソンが義憤に駆られて、村人を虐殺していく同僚のアメリカ兵に対して暴力に訴える強い制止をしました。阿部善次という真珠湾攻撃に関わった日本人は、数十年後、真珠湾攻撃の生存者にたどたどしい英語で謝罪をしました。こうした変化を起こした人は、同じ人間であり、同じ生物学的なニューロン、脳の構造をもっています。私たちが学ぶべきは、こうした驚くべき変化を遂げた人間の歴史、それはすなわち最悪から最善の行動へと私達を変容させる生物学的要因を学ぶことです。
まとめ・印象に残ったこと。
行動の背景と変化についての考察動画、いかがでしたでしょうか。ちょっと哲学的なテーマで難しい内容ですが、人間がいかに複雑な存在で、かつ変化する可能性を持った存在であるかが語られていて、面白かったです。語彙も難しいものが多いので、語彙力を高めたい人にもお勧めのTED動画です。
burst 集中射撃、(機関銃でうつ)
secret bunker 秘密の防空壕
lunges つっこむ(lungeの三人称単数)
Luger ルガー(ピストルの一種)
cyanide pill 青酸カリ
snarls うなり声をあげる
otherworldly 別世界の、空想的な、(それほどまでにすさまじいの意)
pin him down やつをねじ伏せる
handcuffs 手錠
arrest 逮捕する
imagery darkens 陰惨
sever 切断する
blunt instrument 鈍器
puncture 穴を開ける
respirator 人工呼吸器
tube-fed 経管栄養
cancerous 癌の
fester ただれる
pustulate 膿疱がおおう
agony 苦痛
wicked ひどい、邪悪な、不道徳な
wicked belongs 悪漢
schlocky 安っぽい
strict 規制する
when it comes to ~ ~のことに関しては
anthrax 炭疽菌
motoric 運動的、運動の
hooray 応援する、フレー!フレー!
appalling act ぞっとする、最低の行動、恐ろしい行為
causality 原因
rioting 暴動
agitated state 興奮状態
multitude 多くの
realm 領域
amygdala 扁桃体(脳の部位で不安や恐怖、暴力行為を司る領域。)
volleys 放射して
cascade 次々に起こる化学反応
frontal cortex 前頭皮質
sluggish 不活発な、にぶく
relevance 関係
plasticity 可塑性
atrophied 萎縮した、衰えた
full blast フル稼働
fetal life 胎児期
epigenetic 変化が遺伝子外で起こる。エピジェネティックな
fetus 胎児
retributive 報復的な
clan 氏族
vendettas 抗争
lush 豊かな
rampaging 暴れ狂う、荒らし回る
squadron 艦隊、飛行小隊
halting English たどたどしい英語
truce 停戦、休戦
trench 塹壕、陣地、第一線
faceless powers 顔の見えない権力者たち
pawns 駒
mutilated 切断された
appalling ひどい、ぞっとする
singular 単独の、一つの
mow 刈り取る
mow you down (刈り殺す)
inevitable cliche 避けられない決まり文句
incandescent 白熱する。