シアマク・ハリリ 「神聖な空間を建築するには」 TED動画

概要

今回の動画は建築士シアマク・ハリリさんの「神聖な建物」を作るに当たってどのような着想を得て作業に当たったのか、その様子を垣間見ることができる動画の紹介です。

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スピーカー:シアマク・ハリリ/Siamak Hariri・建築家/Architect

建築における神聖な領域づくり

イェール大学大学院在学中であったスピーカーのシアマクさんは、たまたま警備員がコンクリートの壁を愛おしそうになでているところを見て建築には人を感動させる力があることを知ります。建築設計への熱意を強くしたシアマクさんは、2003年に南アメリカのバハイ教寺院の設計の公開コンペを勝ち取ることになります。

寺院を作ると言うことは、神聖な場所を作るということ。そこで、シアマクさんは日常生活において神聖さとはなんだろう?と考えました。ありとあらゆる宗教、人種に共通な神聖さはどのようにしてつくりあげるのでしょうか。

その着想を模索していく中で、バハイの書物の中の美しい祈りについての一文との出会いがありました。

祈りが神に届き 神が答えられたなら 心の中の柱が輝き始めるでしょう
どうすればこの言葉に基づいて何かを建築することができるのだろう?とシアマクさんは考えました。どのようにして、光と共にあるような建物を建てることができるのでしょうか。

またしても探求が始まり、その発見の瞬間をシアマクさんは待ちこがれました。そして、たまたま植物が光に向かって伸びている短いビデオを偶然見て「手を伸ばす」という動きの着想を得ます。神に手を伸ばすのと同じような動きを寺院に与えようというアイデアです。そして、その動きは具体的には円の動き=回転で表現されます。宇宙や頭皮のつむじなど、自然界にはありとあらゆる場所に円の動きが見られるのです。

ただそれだけでは不十分だと考えたシアマクさんは回転に加えてもっと完全な形を思いつく必要がありました。西洋に限らず東洋や日本での美術品を参考に、西洋にはない竜という存在から有機的で線が頂点になるにつれて重なって一つとなっていくような形を思いつくことができました。

設計ができたら、次の段階は材料集めです。シアマクさんは航空・宇宙工学の技術を使ってどうにか完成に持ち込むことができました。材料集めも難航し、理想とする材料を手に入れるまでに数年かかったそうです。

無事に完成した建物のオープニングセレモニーは原住民も含む多くの人が来てくれました。「私の建物を見た誰か一人でも、私の記憶に残っているあの警備員のように建物に感動してくれるのであれば、この寺院は真に彼らのものとなり、私はそれを願っています。」とシアマクさんは結びました。

考察

宗教建築は空間の中で最も神聖な空間です。神聖さをどう建築に落とし込み、現実に形あるものとして実現させていくかについてヒントを与えてくれる動画です

自然や古典の詩から着想を得るという着眼点や、西洋に限らず東洋の美術品からもヒントを得ることから私たちが何かアイデアに行き詰まった時に異なる文化に触れることの大切さを示唆しています。

建築の専門家としてテクノロジーの進歩や材質に関しての知識も重要ですね。動画ではどのような素材を使うかのリサーチに何年も時間をかけたそうです。実現したい理想があって、どのような素材を使えばそれを実現できるのか、なかなか妥協できない問題のようです

何かを生み出すには、自分の周囲をよく観察していき、ジャンルや文化にとらわれず多くの刺激を受けることが大事です。そこから結びつかないような物事を結びつけていくことで、新しくユニークなものが生まれていくことをこの動画から学びました。

英単語

 
sensuousness 審美性、感覚に訴える性質,
ineffable 言葉では言い尽くせない,
brief 要約、概要、仕様書,
pulpit 説教壇,
sermons 説教,
clergy 聖職者、僧侶,
emanation 発光、放射,
wonkiness ぐらぐらする、よろよろするさま,
dimple くぼみ、えくぼ,
drapery ゆったりとしたひだのある布、カーテン生地,
torquing トルキング(機械式ジャイロ、加速度計),
alabaster 雪花石膏,
borosilicate 硬化ガラス,
alcove アルコーブ、壁のくぼみ,
indigenous 土着の、先住の,
intimate 親しみ

 
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