「静かなリーダーシップ」という本を読みました。組織の中で働く中間管理職に向けての本、といった感じの内容です。様々な立場や環境に悩まされながらも自分の正しい事をどうリスクを回避しながら成し遂げるか、そのための事例が紹介されています。
「静かなリーダーシップ」/原著「Leading Quietly An Unorthodox Cuide to Doing the Right Thing」
ジョセフ・L・バダラッコ著(Joseph.L. Badaracco Jr.)
高木晴夫 監修/渡邊有貴 解説/夏里尚子 訳
翔泳社 2002/09/06
目次(Contents)
要約&まとめ
これまでのリーダーシップ論では「英雄的リーダーシップ」がもてはやされてきました。成功するには人よりもポジティブで抜きん出ており、リスクを顧みず、社交的で周囲の人々の気持ちを鼓舞するような人物像が理想とされ、物語やドラマの主人公に在るような、戦隊もので言う「レッド」タイプの人物像がリーダーとして在るべき姿だともてはやされてきました。
本書の提示するリーダシップ像はそれとは真逆です。実社会のリーダーを調べたところ、多くの場合に英雄的リーダーシップでは無く、内向的で静かなリーダーシップを持つ人こそが、現実社会の地味で複雑な問題を丸く収め、組織にとってより良い結果を残している事が判明しました。こうした人達は私たちの周りにたくさん居ます。
本書はこうしたごくごく一般的な人達に焦点をあてて、「自分にとって正しいことをコツコツと実践している人々」が世界を動かして行くのに欠かせない力だと主張しています。
世界をより良くしていくのに、何も無理して性格を変える必要は無いのです。そして崇高で利他的な理想を掲げる必要もありません。自分の信じる正しいと思う事を忍耐強く、我慢強く続けている事の方が重要です。直ぐには結果が見えないような、目立たない実践的な努力の積み重ねが組織や会社の成長に繋がっているのです。
静かなリーダーの特徴
本書では主にケース&スタディという形で様々な事例を通して静かなリーダーシップの事例を取り上げています。本書で取り上げられた静かなリーダーシップの特徴をまとめました。
静かなリーダーシップの特徴
・現実主義でリスクをしっかりと考える
・忍耐強く、粘り強い
・自制心が強く、謙遜している
・個人的な倫理、感情を重視する
・大事な決断に直ぐに決断せず、時間稼ぎをする
・周囲の人々の言葉に耳を傾けて学ぶ
・自分が世界を変革しているとは考えない
・妥協しつつも着実に自分の行動範囲を広げていく
世界を救うとか、誰かのためとかではなく、自分の保身のためという動機も充分な動機であると本書では指摘します。
静かなリーダーは穏健さと自制心を持ち、素晴らしい業績を成し遂げることが出来る。一見すると目立たなく、進歩も遅いが一歩一歩確実に組織や世界を向上していく事が出来る。
静かなリーダーシップの重要性を示すために、ヒーロー型リーダーの典型であるアルバート・シュバイツァーさんの言葉が紹介されています。彼は音楽家と神学者の成功する道を捨て、医療伝道師となりアフリカで人道支援に人生をかけました。その行動は多くの人の目に英雄型リーダーの模範的行動として映ったのですが、その彼曰く、多くの人は人生の大半を一目につかない(地味な)行動に甘んじているが、その小さな行いの積み重ねこそが大衆に広く認められる活動よりも何千倍も強く、価値があるものだと言いました。
身近で目立たない人達こそ世界にとっては重要な役割を果たしており、平凡だが難しい問題に対処しているのは彼らである。
静かなリーダーシップを持つ人達は、勇気のある大胆な行動は最後の手段としてとっておきます。平々凡々とした毎日のつまらないことを忍耐強く続けていく事は難しいことで、それが出来ればほぼ全ての事が達成できるのです。
私たちはつい目立つ行動ばかり注目してしまいますが、その背景にある目立たない行動にこそ価値があるとの指摘は心に響きました。
私たちは幼い頃から英雄的ヒーローを称賛するように思い込まされており、毎日のタスクを黙々とこなす努力を下に見てしまっている。しかし、その小さな努力が世界を変えていく。今している行動の結果は数年後に現れるかも知れない。つまらない些細なことなどないのだ。
偉業を成し遂げたとされる人達も、何年何十年単位で目立たない努力を積み重ねています。この節を読んで、自分がつい結果ばかりに意識しがちなのに気づきました。
評価・感想
充実度 ★★★★★★★
満足度 ★★★★★☆
具体例などは豊富ですが、翻訳本特有の読みにくさがありました。組織で立ち回る人に向けての内容で、フリーランスの人にはあまり響かないかもしれません。私は内向型のリーダーシップについてどんな事が書かれているのか興味を持ち手に取りましたが、基本的に同じような内容の繰り返し(ケース&スタディの繰り返し)で、途中で眠くなってしまったことも。文章量は多いですが、エッセンスはシンプルです。
本書を読むことによる効果は自分の長所やあり方を再認識できることです。成功するのに無理に性格を英雄型に合わせる必要は無く、内向型でもその利点を活かせば社会でも充分に役に立つことが出来る。今の自分のあり方を見つめ直すことでこれから先の自分のあり方を前向きに考えられるようになるのではないでしょうか。
静かなリーダーシップを持つ人は英雄型リーダーのように物語映えしないものの、忍耐強く目立たない努力を続けることで組織にも世界にも影響を与える結果が出せる。その力を本書を読んで強く認識出来ました。
組織で働くことは様々なストレスにさらされます。中間管理職でストレスを抱えている人ほど本書を読んでみると自分のキャリアを考える上で参考になるのではないかと思います。
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