ジャンプ流vol.3尾田栄一郎 ONEPIECE -ワンピース- 創作の秘宝がこの中に! まとめ

ジャンプ漫画家の創作の秘訣を探るジャンプ流。今回は「ONE PIECE」で有名な漫画家、尾田栄一郎さんの創作の秘訣を探ります。尾田さんが漫画家になった経緯や、創作活動・クリエイティブ活動のヒントとなる知識をまとめました。

◆書誌情報
「ジャンプ流 vol.3 まるごと尾田栄一郎」
集英社 2016/2/4

デビュー秘話

・絵を趣味にしていた父親の影響もあり、幼い頃から絵を描くことが大好きだった。4歳の頃には絵を描いて暮らせるマンガ家という職業を知り、将来はマンガ家になる!と心に決めていた。
・中学生から本格的にマンガを描き始めた。
・17歳にジャンプの手塚賞に応募し、「WANTED!」で準入選を果たした。第104回ホップ☆ステップ賞でも「一鬼夜行(いっきやこう)」が入選。読み切り作品「神から未来のプレゼント」の執筆を経て上京した。
・久島担当と共に、約3年の修行生活。
・賞を取っていたからすぐにトップをとれると考えていたが、描いたネームが全然通らず苦しんでいた。とにかく面白いストーリーが書ければ良いと思っていたが、編集はマンガの柱になりうる魅力的なキャラクターを求めていた
・編集者との打ち合わせはケンカのようだった。頑固で自分の正しいと思ったものを貫き通そうとしていた。今も頑固だけれど、昔はもっと生意気で自信過剰だった。
編集から絵についての指摘で、「おまえの描く女は全員可愛くない!」って指摘されて、悔しくてその夜はずっと女の子を描く練習をしていた
・画力向上のため、「ピーターパン」などディズニーアニメーション作品を見てきっちり描き写したりしていた。手書き時代のディズニー作品は作画が素晴らしい。「リトルマーメイド」では、ビデオをコマ送りして全てのキャラクターと気になった表情全部を描き写していた。
・マンガ家は漫画的な絵だけでなく、写実的な絵も描けないといけない。その練習のために映画雑誌を買ってきて、載っているたくさんの映画スターの顔を似顔絵ではなく写真のように正確に描いていた。
・アシスタント時代に学んだことも多い。徳弘正也(とくひろまさや)先生、甲斐谷忍(かいたにしのぶ)先生、和月伸宏(わつきのぶひろ)先生と言った数々のジャンプ作家のもとでアシスタントを経験した。
・徳広先生の元では線の太さについてたたき込まれた。「画面の手前にいる人間の線がなんでこんなに細いんだ」、と。「手数を使って書き込めば思いは必ず読者に伝わる」という言葉も心に残った。
・アシスタント作業自体は救いだった。マンガ好きの仲間と泊まり込みで絵を描いて過ごす楽しい合宿のようだった。でも自分がのたうちまわって苦しんで生み出す次の自分の作品については黙っていた。アシスタントは楽しい仕事だけれど、そこにいるみんなはライバルだからだ。
・久島担当編集とは打ち合わせに熱が入りすぎて飲食店で大声を出し合いケンカみたいになったことも。でも面白いマンガを作るための激突だったので、人間的に仲が悪くなるとかではなく、今となってはお世話になったという気持ち。
修行を積むほどに連載デビューを果たすために乗り越えるべき壁の高さを感じ、絶望感を覚えたこともあった。描いても描いても自信のあるマンガを認めて貰えないことに、気持ちが打ちのめされてしまって、今からサラリーマンになれるかな、ってことも考えたりしていた。それで心労で1週間ぐらい身体が動かなくなったりもした。
・苦しいときに久島担当から「俺は、お前みたいに頑張って、報われなかったヤツを今まで見たことがない」という言葉に本当に救われた。気持ちが楽になり、また頑張ろうと思えるようになった。
・持てる力の全てを込め、がむしゃらに新しいことをする!という情熱が込められた「ROMANCE DAWN(ロマンスドーン)」は読者から大きな人気を獲得。その内容を下敷きに新担当浅田と打ち合わせを重ね、97年からONE PIECEの連載をスタートさせた。
ひたすら考え抜き、描き込んで、自分が納得できるものを生み出すという真摯な意気込みがあって初めて読者に思いが伝わるという。

作画技術

・主人公の目が光彩を持たないシンプルな「点」であるのは、他の人が描いていない絵を描こうと思って意図的に作り出したもの。
・単純化、記号化されたルフィの目元は、目元だけでルフィだと分かるようになっている。
・マンガらしくよりディフォルメされた絵柄。大胆に人物の特徴を誇張している。
・絵の面では、要所にパワーを持った決めゴマを配置することで絵が決まる(「どんっ!!」という演出など)。多くの作家ひしめくジャンプでは直感的に読者を惹き付けることができるのはメリット。
まず描きたい決めゴマの絵を思い浮かべ、それに向かって人物を動かし物語を展開させていくという。
・登場人物が多いワンピースにおいて、キャラが埋没しないために「キャラの「名刺」ともいえる登場シーンを大事にする」こと、「一人一人のドラマをきちんと描ききる」こと、大勢のキャラクターを動かすときは「チーム単位で動かす」こと、といった工夫をしている。特に一人一人のドラマエピソードの中にまた新たなキャラクターが登場したりして、無限にドラマを深められることは挑戦でもあり、上手に矛盾無く処理していく過程ではやりがいも生まれているという。
・尾田先生は「描き込む」タイプで、コマや背景のほんのちょっとした隅っこに遊び心を持たせている。
自分が子供だったら楽しめるか、理解できるか、を常に自問自答しその答えを指針としている。
・もし舞台に10万人のキャラが登場するのなら、ちゃんとそう見えるような書き込みをしていくのがワンピースだという。

付属DVDよりメモ

・軽く鉛筆で構図を作る、練り消しで軽く消す、その上から下書きをする。
・彩色はコピックで重ね塗りをする。重ね塗りをしないとムラが出るので、紙面に印刷されるときは2回塗らないと見苦しくなる。
・キャラクター配置は思いつくままに。描きながら、塗りながら、その場その場で思いついた感じで。
・長年色鉛筆を使っている。印刷にも乗る色鉛筆を見つけた。白の色鉛筆は薄くハイライトに使えるので便利
・作業環境は好きな物に囲まれて仕事をしている。フィギュアや玩具は絵の資料にもなるのだという。
・キャラクターの傷や装飾、舞台の場所設計などをアシスタントさんたちと共有している。みんなでミスがでないようにチェックしている。
・鳥山明先生のサインは宝物。
・風景の写真集や海外の画集などからインスピレーションを得ることもある。
・Gペン・丸ペンに使っているお気に入りのペン軸は今はどこにも無いので大切に使い続けている。
・設定ノートはシリーズごとにまとめて管理している。
・骸骨のフィギュアがお気に入りで、どんな角度からでも骨の形を確認出来るから。
・ジャンプで掲載されることは、たくさんの人に一番読んで貰える。それが大きい。
普通のこと、普通の感性が分かることが大事。ジャンプの読者は普通の人が多いので、普通の人の気持ちが分からないといけない。若い世代や子供の頃の気持ち、普通の人の気持ちが分かることが大事。(尾田先生は)世間で流行ったもの全部に流されるだけ流れてきた。今では普通の人の気持ちがよく分かるのが強みだと思っている
・今の新人は読者に合わせようと思って迷っていることがある。自分が生きてきちゃった道は仕方が無いどうすれば自分の好きなものを流行らせるかが大事。漫画家にはそれが出来る作家が読者に合わせてはダメ。一歩先を行って、自分からブームを作るつもりで挑む。読者に合わせる必要は無い。

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参考

尾田栄一郎(Wikipedia)
ジャンプ流vol3 まるごと尾田栄一郎

 
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