【書評と考察】GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 ギバーになれば誰もが得をする。生き方の転換をもたらしてくれる画期的な本。

【書評と考察】GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 ギバーになれば誰もが得をする。生き方の転換をもたらしてくれる画期的な本。

【書評と考察】GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 ギバーになれば誰もが得をする。生き方の転換をもたらしてくれる画期的な本。
組織心理学者アダム・グラント(Wiki)さんの「GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代」を読了しました。前回まとめた「ORIGINALS」と同様に、今回も多くの学びと気づきを得ることができた有意義な読書でした。大成功する人に多いギバーの特質なのですが、大失敗してしまうのもギバーです。成功するギバーと失敗するギバーについての考察もあり、ただのいい人に陥らないための知識も得られてとてもためになる一冊でした。

ギバーとマッチャーとテイカーについて

本書では人を三つのタイプに分類しています。

・ギバー:人に惜しみなく自分の時間や知識を与える人

・テイカー:真っ先に自分の利益を優先して、利益の総取りを狙う人

・マッチャー:損得のバランスを考慮して行動する人

多くの人がギブアンドテイクと聞くとマッチャーを思い浮かべるのではないでしょうか。実際、多くの人がマッチャーに分類され、自分の利益と損益のバランスを考えて行動する人だそうです。本書ではギバーとテイカーの対照的な二つのタイプを対比させながら、それぞれにどういった特徴を持ち、どういう強みを発揮するのかについて心理学的な研究やエピソードからわかりやすくまとめられています。

ギバーとは何か?ギバーの利点と欠点について。


本書は一貫してギバーになる利点を説明していますが、まずはギバーについて私なりに簡単にまとめてみます。

■ギバーの特徴とは:惜しみなく自分の知識と時間を他者のために与えられる人
ギバーは与える者。自分の知識や時間を惜しみなく相手に捧げる人で、全体的な利益の配分(パイ)を増やすことができる特質です。自分のことではなく、全体の利益を考えた時に力を発揮します。他者の成功や喜びに関与できることを自分の喜びとします。

全体の利益につながるのなら、自分の過ちも謙虚に認められる柔軟性も特徴で、本書ではNBAのスカウトコーチの事例を通じて自分の過去の失敗を受け入れ全体的な利益につながるような行動を取れるのが強みであると主張しています。

誰かと接する時にはまずは性善説の立場で相手を見ます。

進化心理学的にサイコパスを除けば人は利他的な行動をすることに大きな喜びを感じるように生物学的にできているので、誰もが意識してギバーになることができる、と私は考えています。

■ギバーの利点とは:信頼とゆるいつながり、リコネクトによるチャンスの拡大
ギバーになる利点としては、多くの人から信頼され、ゆるいつながりを保持できることです。このゆるいつながりは成功するために欠かせない要素で、少し疎遠になった知り合いと再び繋がること(リコネクト)することで新たなビジネスチャンスやアイデアを得て大成功するきっかけを得ることができます。多くの人に信頼されるため、困った時は誰かが助けてくれます。「情けは人の為ならず」ということわざが示すように、誰かに何かを与えたことが巡り巡って長期的なスパンで自分の利益になる感じです。周りの人の信頼が厚いため、成功したらその成功が持続しやすいです。飛び抜けて大成功した人にはギバーの特質を持つ人が多いそうです。

■ギバーの欠点とは:誰かに利用され、結果として自分が損をしてしまう。
ギバーの欠点は、謙虚に振る舞い、常に相手の気持ちを考えて譲歩してしまうために、自分の利益しか考えないテイカーの人たちから都合よく利用されてしまうことです。信頼する相手を見誤ると失敗してしまうタイプです。また、コンサルや交渉など競争が激しい強いリーダーシップが求められる現場ではすぐに相手にゆずってしまうギバーの特質を持つ人は昇進が遅れたりします(きっぱりとNOと言えないからリーダーには向いていないと思われ、競争についていけなくなる)。大成功する人にギバーの特質が多いのですが、実は大失敗してしまう人に多いのも自己犠牲が強いギバーの特質です。

テイカーとは何か?テイカーの利点と欠点について


次にテイカーの特徴と利点と欠点をまとめます。

■テイカーの特徴とは:自分本位で利益を総取りしたい人
テイカーは真っ先に自分の利益を考えます。できれば利益を総取りしたいと考えるタイプです。誰かと接する時には性悪説の立場で相手をみますから、自分の弱みを隠して自分の不利益に繋がるようなことはしません。

■テイカーの利点とは:出世しやすく上司や経営者に多い
テイカーの利点は出世や昇進がしやすいことです。特に競争が激しい分野で顕著で、上司にゴマをすったり、他人を利用してでも出世する人が多いのだとか。

性悪説の立場で経営者の心理研究を行なっているジェフリー・フェファーさん(参考:「悪いヤツほど出世する」、「「権力」を握る人の法則」)によると、他者を出し抜いて、利用する悪いやつほど出世するのは事実でしょう。実際会社の重役にはサイコパスが多いのも事実であり、激しい競争に晒される分野ではテイカーの特質がないと生き抜けないでしょう。

■テイカーの欠点とは:成功するも、足元をすくわれ転落する可能性が高い。人に頼れず、人から信頼されない。
テイカーの欠点とは、他者からの嫉妬や恨みをかうために、何かに失敗するとそのまま転落していってしまうことが多いです。

自分の評判やメンツを大事にするため、サンクコストバイアスや自分の過ちを認めず結果として大きな損失を被ることになります。

人に弱みを見せられないため、人を頼ることもできません。

ギバーの成功者は賞賛され、テイカーの成功者は嫉妬される。

ギバーの成功者は、自分の成功は周囲の人のおかげだとするため、周りから賞賛されます。一方で、テイカーの成功者は自分の成功を全部自分のおかげだとして、他人の功績をも自分の手柄とするために嫌われます。こうした嫉妬や怨嗟の種が長期的にみてテイカーの成功の足を引っ張ることになります。

ギバーになるのは誰にでもできる。人は誰かを助けるとその人のことが印象に残る。

ギバーとして振る舞うためには、誰もが持っている時間を相手に捧げるだけで十分です。相手の話をよく聴いたり、一緒に過ごす時間を増やしたり。

そして人は自分がアドバイスした相手、知識を授けた相手を、我が身のこととして思うようになります。誰かにアドバイスを積極的に求める姿勢、誰かに助けを求める姿勢も相手からギバーとしての態度を引き出す上でのポイントとなります(甘え上手は世渡り上手に繋がる)。

いい人で終わってしまうギバーの罠と対策法


飛び抜けて成功する人にギバーが多い一方で、失敗してしまう人にもギバーが多いのは、利己主義のテイカーにいいように操られるから。本書ではこの対策も仔細に述べられており、これがなかなか参考になります。

失敗するギバーの多くは、自己犠牲に偏っているのが特徴です。人の役に立つ喜びを感じたいあまりに、自分のことをないがしろにしてしまっているのですね。

いわば「いい人」になってしまうから、「いい人」を利用して自分の利益を優先するテイカーとは相性が悪いわけです。

では、どうすればいいのか。

本書でアダムさんはギバーを優先しつつも、自分の中にあるテイカーの性質を目覚めさせることだ、としています。ギバーな態度を優先しつつも、自分本来の目的や利益を忘れないようにすることです。

そして、テイカーが何を考えているのか思考を読み取ってみることです。万一自分を利用しようとしている兆候が見えたら毅然とした態度をとることを勧めています。常にギバーとして相手と接するのではなく、時にはマッチャーになることです。

ギバーが強みを発揮するのは自分のためではなく、他者のためになる時です。そのため、自分の属している集団や大切な家族のために、と他者の利益を理由に自分の意見を主張することが強みになります。搾取されがちなギバーは自分の属している集団や家族の利益を考えることでテイカーに搾取されずに自らの利益を守れるようになります。

感想・まとめ 多くの人はマッチャーに留まっている。ギバーの最大の強みは利益を最大化することにある。みんながギバーな態度を優先すれば利益自体が大きくなる。

本書を読んで、

自分のことをギバーだと思っていたけれど、実は見返りを求めるマッチャーであったということ。
ギバーの最大の強みは利益を最大化すること。
結局はギバーであることが長期的に見て幸福や利益の双方を増加させる秘訣であること。

に気づかされ、強く印象に残りました。

ギバーの態度をとることは自分の利益ではなく、全体の利益を最大化すること。これは長期的に見て多くのメリットがあります。もちろん時にはマッチャーとして振る舞い自衛する必要はあるでしょうが、ギバーとなることで人間本来が持つ誰かの力になれることの喜びゆるいつながりによる思いがけないチャンスや巡り合わせの増加などテイカーでは得られない多くのメリットがあります。

ギバーとして振る舞うのは損ではなく、多くの人にメリットがあり、自分にも多くのメリットがあること。

余裕がない時ほど自分のことばかり考えてしまいますが、むしろ逆。自分のどんな価値が世の中に役立つのか考え、自分の強みがどのように他者の役に立つのか考えることで人生の活路が見えてくる良著です。文章も読みやすく、ぜひお勧めです!

■日本語版「GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代」アダム・グラント (著), 楠木 建 (監修) 三笠書房 (2014/1/8)

■原著「Give and Take: A Revolutionary Approach to Success (English Edition) 」 Adam Grant (著) Weidenfeld & Nicolson (2013/4/11)

参考・出典

GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代 三笠書房公式ページ *脚注、参考文献、アクションのための提言は「ダウンロードコンテンツはこちら」から取得できる。

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