「ファイアーエムブレム風花雪月(Fire Emblem: Three Houses)」は開発をインテリジェントシステムズとコーエーテクモゲームス、任天堂より2019年7月26日に発売されたSwitch用シミュレーションRPGゲームです。内容は中世戦記物で、主人公は士官学校の先生となって生徒達を導きます。ストーリーには分岐があり、個性豊かなキャラとの交流を通して戦乱の時代を生き抜いていきます。
プレイ時間は、私は二つのルートをクリアして120時間以上でした(最初のルートで約62時間、2週目の別ルートで60時間以上~)。数字としては大きいですが、イベント回収や仲間との会話を楽しんでいたらあっと言う間で全篇通して非情に満足のいくプレイ体験でした。DLCやクリアしていない分岐ルートを楽しもうと思えばまだまだ遊べる大ボリュームの作品です。
目次(Contents)
どのクラスを最初に選ぶのかで人それぞれ違ったプレイ体験が味わえる
本作にはストーリー分岐があり、大きく士官学校編と戦争編の2部構成で展開されます。前半は士官学校編として、学園ゲームの色が強く出ています。
最初の分岐としてまず3つの陣営のクラスから自分の担当するクラスを選ぶのですが、これがまた究極の選択。この選択によって大きくストーリーが変わるのもそうですが、私の場合は初回プレイ時に最初に担当したクラスに愛着が湧きすぎてしまいました。本作は周回システムが用意されており、2週目以降は引き継ぎしつつ最初からプレイができ、もちろん別クラスの生徒を選ぶ事ができます。でも、最初のプレイ体験で選んだ最初のクラスのメンバーとの思い出はプレイヤーに根強く残るので、本作の印象は最初にどのクラスを担当したかで大きく異なってくるでしょう。
どのクラスにも個性豊かな生徒達がいるのが魅力的です。問題を起こす生徒や心に闇を抱えている生徒、引きこもりの生徒、更にファイアーエムブレムでは貴族と平民の階級がありますから、平民の生徒と貴族の生徒でそれぞれ抱えているものが違っており、彼らとの交流を通して心情の違いを聴いたりするのも面白かったです。
最初は何となく選んだクラスでも、授業や行事を通して生徒たちと交流を深めていく中で、どの生徒も良いところがみえてきて、かけがえの無い存在に感じられてきます。現実世界では絶対に付き合わないだろうなと思うタイプのキャラでも先生として指導して交流していくうちにだんだん情が湧いてきて、彼らの事情を理解していく過程で好きになっていくのは本作ならではのプレイ体験でした(共感力が高まってくる感じ)。
ストーリーは主人公の出自の謎が気になる作り。学園パートから戦争パートになった時のシビアなドラマ展開が良い
主人公の性別は男性のベレト、女性のベレスでプレイヤーが最初に選ぶことができます。プレイヤーを投影しているからか、無口系の主人公です。
主人公は記憶が曖昧で、出自が不明な点がストーリーの冒頭から示されています。主人公の正体は何なのか?冒頭から異世界のような場所で話しかけてくる緑髪の高飛車な少女は何者なのか?という点も徐々に明らかになっていきます。
主人公は教団勢力の運営する士官学校の教師として働きますが、その教団トップであるレア様は超重要人物。物語の冒頭から主人公に尋常ならざる愛着と信頼を寄せてきますが、ルート分岐によっては裏切ることもでき、まるで違った印象を持つでしょう。
前半の学園パートではそれぞれ異なる権勢の立場から同じ学園で学ぶ者として平和を維持していたものの、ある時を境に一気に展開が進み、戦乱パートに突入します。非常に引き込まれるストーリー展開であり、時間経過による生徒達の成長した姿も印象的です。本作に関しては是非ともストーリーのネタバレは見ないで、自分自身でプレイしてストーリーを隅々まで味わってほしい作品です。自分の担当した生徒たちがどうなるか、戦争はどう終結するのか、その行く末をこの先どうなるのだろう?とハラハラしながらストーリーを味わいました。
圧倒的なテキスト差分。メインコンテンツと呼べる支援会話の量と作り込み。ストーリー重視でテキストを読むのが好きなタイプなら絶対にハマる。
本作の最大の魅力は作り込まれたストーリーと分岐による圧倒的なテキスト差分の作り込みであり、それが本作には大きく3ルート、場合によってはもう1ルートあります。
他の陣営のクラスの生徒も主人公との好感度を上げることでスカウトすることができ、自分の陣営に引き込むことができます。その結果として第2部の戦争編での会話のやり取りが異なったり、スカウトすることでしか聞けない支援会話やテキスト差分が豊富に用意されているため周回プレイしても飽きませんでした。
プレイヤーのスカウト選択によっては親友同士、幼馴染同士を戦場で対決させることも可能で、専用の会話も用意されています。戦争編ともなると生と死に関しての選択が重くのしかかり、元生徒を相手に殺すか、殺さないかの究極の判断が迫られるシリアスなプレイ体験も本作の魅力です。
ゲームシステムとしてはどうなのか?難易度選択により上級者から初心者まで大丈夫。
戦闘パートはシミュレーションRPGで、それぞれキャラの持つ移動能力、攻撃範囲や弱点などを把握しながら敵の陣地を制圧していきます。学園パートの育成で生徒たちや仲間に加えた教員たちのスキル、素養を伸ばすことができ、ある程度の能力に達すると戦闘に有利な上級職にクラスチェンジすることができます。学園パートで育成した成果が戦闘パートで発揮される感じです。
軸となるゲームシステムは難易度選択が可能で、上級者から初心者まで対応しています。私が人生で初めてプレイしたファイアーエムブレムがゲームキューブの「ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡」(2005)で、その当時は一人キャラが死亡して、なんて厳しいゲームなんだと挫折していました。しかし、最近のファイアーエムブレムはキャラが死なないカジュアルモードが搭載され、ストーリーや世界観を楽しむ分には全く問題ありません。キャラの生死に関わるモード設定に加えて敵の配置などの戦闘自体の難易度設定も可能です。失敗した時に時間を戻すことも可能で、初めてシミュレーションRPGを遊ぶ人にもカジュアルに挑めて優しい設計になっています。
本作の良いと思った所、印象に残ったアイデア
・ストーリーの分岐と徹底的に作り込まれた会話パターン、テキスト、支援会話。
・学園パートから戦争編のシビアな展開。
・最初は好印象を持たなかった生徒達でも交流を続けていくうちに別の側面が見えてきて、かけがえのない存在に感じられる感情移入体験。(問題として、周回する時に別のルートを選択し、敵対するのが嫌になってしまうほど最初に選んだクラスに愛着が湧く。)
・ストーリーの変化やテキスト差分が多いので周回が楽しめる。分岐によっては思いもしなかった謎が判明する。
・周回しやすいようにスキップ要素がシステムとして整えられている。アップデートで引き継ぎ要素も強化され、より周回しやすくなった。
・一つの大陸を3つの勢力が拮抗する状況下にあり、後半はシリアスな物語展開だが、それぞれ立場をもつキャラ達の心理的葛藤や会話が充実して本作の世界に引き込まれる。スカウトによって他の陣営のキャラを引き込むことが出来るが、そのキャラの会話差分や支援会話もしっかり用意してある。どちらの陣営にいるか、キャラが死んだかどうかなどで変わるテキスト差分の作り込みは本当に凄い。
・キャラごとの個性の付け方がうまい。設定づけが悪くいえば記号的だけど、よく言えばお手本となるキャラ作り。私は感情移入できたし、とても楽しめた。
・世界観設定全般。ファイアーエムブレムシリーズに共通する竜族や紋章の設定に加え、敵対する蠢く者たちの存在やその理由に関連する設定(辛抱強くコツコツ計画しているところがリアリティがあって良い)。
気になったところ
・プレイ時間のかなりの割合で学園パート(生徒達との交流、育成)が占めるため、シビアな戦闘、硬派な戦記物を求める昔からのエンブレマー(ファイアーエムブレムのファン)には好みが分かれるかもしれない。交流要素をスキップすると戦闘にも影響があるので、広い学園内を走り回り生徒たちとの支援を高めるための作業が発生する。
・仕方がないとはいえ最高親密度のS支援会話回収が面倒。基本は1週に一つしか埋められないから、Youtubeのまとめ動画で済ます人が多そう。
・キャラクターたちとの交流がメインなので、ゲームのキャラに感情移入ができない人やキャラゲー的な要素が苦手な人は本作に向かない。
・異常に難しいティータイムの会話選択。
感想・まとめ ゲーム性も上級者から初心者に対応した一方でキャラゲーとして深化したファイアーエムブレム。引き継ぎ周回要素もあり、やり込もうと思えばとことんやり込める作品
先が気になるストーリー展開や分岐、仲間にしたかどうか、敵対したかどうかで変化するテキスト差分など、とにかくキャラ関連の作り込みが尋常ではなく、会話をニヤニヤしながら眺めるのが最高に楽しかったゲームでした。色々日常生活で嫌なことがあってもこのゲームのキャラたちと交流することで癒しがもらえるというか、良い意味で別の世界の人間関係を味わえるので最高の息抜き、気分転換になりました。
キャラの好感度を上げるために何度も一緒に食事をしたり、キャラ同士の支援の組み合わせを考えたり、ほとんどキャラたちとの交流や会話を聴きたいがためにプレイしていましたね。(主人公の胃袋には驚くばかり…。)
アップデートにより周回プレイもしやすくなっていますが、何度も周回をしてくるとだんだん学園(探索)パートが重荷になってくるかもしれません。スキップは可能ですが、戦闘や支援に影響が出るので難しいところ。とにかくキャラとテキスト関連の作り込みが凄いと思えたゲームでした。体験して本当によかった作品です。
Game Image © 2019 Nintendo / INTELLIGENT SYSTEMS Co-developed by KOEI TECMO GAMES CO., LTD.