失敗が怖くて行動できない人に効くエフェクチュエーションという考え方(「許容可能な損失」(Affordable Loss)の原則)

失敗が怖くて行動できない人に効くエフェクチュエーションという考え方

新たな行動を起こそうにも、うまくいかずに失敗するかもしれないと思い悩んで行動できない人は多いと思います。現状を変えるために、今よりも良い生活を送るために行動の変化は必要ですが、成功の確信が持てず不安と心配に押しつぶされて行動できない…そんな人にエフェクチュエーション(Effectuation)という起業家研究から生まれた考え方が参考になります。

エフェクチュエーションとは

エフェクチュエーションとは、インドの経営学者であるサラス・サラスバシー(Saras D. Sarasvathy)が2008年に体系化した起業家研究から生まれた経営学の概念です。時代や地域を問わず、優れた起業家に共通するマインドについて調べ上げ、まとめられたものです。起業家となるには変化を受け入れ新たな行動を起こす必要があります。そのマインドを知ることで私達のなかなか行動できないくせを見直す知見を得ることができます。

この理論にはいくつか原則が有るのですが、その中の「許容可能な損失」(Affordable Loss)の原則が失敗を恐れて行動できない人に有効な対処法を示唆しています。

成功するかどうか考えて判断するのではなく、失敗を想定し耐えられるかどうかを考えて判断せよ

多くの人は自分の行動が成功につながるのかどうかを計算して行動するかどうかを決めます。しかし、実際に人間は成功の喜びよりも損失や失敗を大きく見積もることがダニエル・カーネマンらのプロスペクト理論の研究からも証明されています(参考)。人は成功よりも失敗したときのことを重く受け止めるために、いくら自分で成功する!上手くいく!と暗示を掛けても、見えない漠然とした失敗するリスクや不安が大きくてかえって身動きが取れなくなってしまうのは自然なことなのです。

「許容可能な損失」(Affordable Loss)の原則の考え方は、これとは逆のアプローチです。自分が成功するかどうかよりも、自分が失敗に対してどれだけ耐えられるかどうかで行動するかどうかを決めます

行動して自分が失敗するまでを前提とし、どのような失敗をするのだろうか?その失敗に対して自分はどれだけ耐えられるのだろうか?を考えてから行動するかどうかを判断します。

失敗について予め対処法を考えておくことで、失敗を乗り越える自分を想像でき、モチベーションが高まり行動が前に進みます。漠然とした不安や心配を明確にし、言語化して対応策を考えることで失敗を乗り越えて行動するマインドが身につきます。

失敗をするにしても、これぐらいのリスクなら耐えられるだろう、ここまで大きなリスクだと今は行動するのは避けようかな、など失敗に対して冷静に対応策を考えることが、かえって成功をイメージするよりも行動力を高めてくれるのです。

これは心理学で言う防衛的ペシミズム(参考)に通じる考え方で、将来の最悪な事象を想像し、予め備えておくことで、実際にピンチに陥ったときでも冷静に最善の手が打てるようになります。

まとめ 人が持つネガティブな傾向を逆手に取り、失敗対処計画を建てる。逆境に耐えられる自分を想像することで前に進める。

成功するかどうかに悩むのではなく、自分が失敗に対して何ができるのかを考えること。

新しいことを始めるとき、
・収益がないときはこういう風に耐えていく
・転職先でウマの合わない上司にはこう対応する
・投資が無駄になったときはこういうふうに切り替える

など人が本来持つネガティブ思考の傾向を逆手に取って、失敗や挫折をたくさんイメージして対応策を計画しましょう。そうすることで失敗への恐怖が薄れ、自分は逆境でも耐えられる、乗り越えられる確信が得られて行動できるようになります。

参考・出典

・「エフェクチュエーション: 市場創造の実効理論」 サラスバシー サラス (著)
・「Effectuation: Elements of Entrepreneurial Expertise」 Saras D. Sarasvathy
・「The Antidote: Happiness for People Who Can’t Stand Positive Thinking」

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