似たもの同士ほど仲悪い!?「横方向の敵意」について

一般に私たちは似たもの同士だと好意を抱きやすくなりますが、一方で差異を感じたときに嫌悪感も強くなってしまう傾向があるようです。

同じ価値観をもつけれど

ダートマス大学の心理学者ジュディス・ホワイト(Judith B. White)さんの研究で「横方向の敵意」という概念があります。基本的な目標を共有したグループは自分たちより主流派のグループを「偽物」「裏切り者」などと激しく罵倒する傾向が高いとのこと。

「横方向の敵意」は至る所にみられます。宗教間で各派の抗争が絶えないこと、音楽性の違いによるグループの解散。研究では障害者に一番厳しく当たるのが障害者であったり、黒人差別に敏感な黒人たちが「肌の薄さが黒人ではない」ことを理由に白人と黒人とのハーフを黒人として扱うことに差別したりします。

研究ではビーガン(動物性由来の食品はいっさい口にしない厳格な菜食主義者)とベジタリアン(菜食中心だが、動物由来の卵や乳製品は食べる)にお互いについての印象を一般人と含めて評価して貰ったところ、ビーガンのベジタリアンに対する偏見は、ベジタリアンのビーガンに対する偏見に比較して3倍も多かった結果が出ました。

より過激なビーガンたちにとって、主流を占めているベジタリアンは真のベジタリアンにあらず(=ベジタリアンもどき)と映ってしまうのですね。真のベジタリアンなら卵や乳製品も食べてはいけないだろう、と思うわけです。

ギリシャで行われた別の研究では、最も保守的な政党の党員は革新的な政党よりも自分たちに似通っている政党に対して非難を示すとのこと。

これらの態度に共通しているのは、
本当に何かを信じている信念があるのであれば、とことんのめりこんでしかるべき
という思考です。「二兎追うものは一兎をも得ず」ということわざの存在が示すように、私たちは一つの事を追い求めるのであれば徹底的に追求し、他の選択や考えを捨てるべきだと思ってしまう訳です。

人間関係では

自分たちと同じ信念を抱いているけれど、ちょっと違う差異がある。精神分析のジークムント・フロイトいわく、

非常に似通っている者同士のわずかな違いこそが、互いの間に違和感や敵意といった感情を生み出す原因になっているのだ。」ジークムント・フロイト

とのこと。

私たちは似ているけれど、自分とはちょっと違う人のことを激しく嫌悪する傾向があるのです。自分と似ている分、ちょっとの違いに敏感になってしまうのでしょうね。友達や身近な人と喧嘩してしまうのはこの「横方向の敵意」が要因かもしれません。

逆に言えば、私たちが誰かを嫌うのは、その対象が自分とどこか似ているところがあるのかも…?

参考・出典

「ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」が出来る時代」 アダム・グラント (著) シェリル・サンドバーグ (解説) 楠木 建 (監訳) 三笠書房 (2016/6/24)
Judith B. White and Ellen J. Langer, “Horizontal Hostility: Re lations Between Similar Minority Groups,” Journal of Social Issues 55 (1999): 537 –59; Judith B. White, Michael T. Schmitt, and Ellen J. Langer, “Horizontal Hostil ity: Multiple Minority Groups and Differentiation from the Mainstream,” Group P rocesses & Intergroup Relations 9 (2006): 339–58; Hank Rothgerber, “Horizontal H ostility Among Non-Meat Eaters,” PLOS ONE 9 (2014): 1–6.

 
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