不安は燃料 チャレンジ力を高める不安の心理学

当ブログではこれまでにも不安に関してのトピックを扱ってきました。今回は不安と行動をテーマに、不安を無くそうとするのでは無く、成長と行動への力に変えて行くための知識をまとめます。

不安やストレスを抱えることで一番マズいのは、行動しなくなることです。多くの人は挑戦する事を恐れ現状維持に甘んじています。マンネリとした日常から脱却し人生の変化を楽しむためにも、不安を味方にして、挑戦への燃料として行くための考え方を見ていきましょう。

変化は成長、安定は停滞

人は変化をする事に対して抵抗感を持つ生き物です。変化は痛みを伴います。人前で恥をかくかも知れないし、しなくてもいい苦労をするかも知れません。でも本当の人生の充実感は変化から来ています

人は変化を恐れると守りのループに入ります。挑戦しない、行動しないから成長や出会いも望めないですし、新たな分野への経験値を積めないから突然の変化や事態による人生の困難を乗り越える力が養われません。ずっと変化しない安定した毎日は不安やストレスを感じやすくなり「いつか悪いことが自分に起こるのでは無いか」という漠然とした不安を感じやすくなります。

変化が移り変わる現代において、ずっと今の幸福を維持し続けることは難しいことです。一つの会社に入ればずっと安泰という時代は無くなり、いつ事故や天災に巻き込まれ病気になるかも知れず、未来のことはどうなるか分からないのが人生です。人生は自転車やバイクと同じで、ずっと走り続けた方が楽だといえます。自転車やバイクは停まったままずっと立っていることのほうが難しいですよね(支えるためにかえって労力を使います)。

変化は成長と出会いと喜びを人にもたらします。変化し続けていることは、一見すると不安定なように見えますが、長い目で見ると安定しているのです。

行動しないから不安になり停滞します。不安だけど行動すれば、不安が燃料に変わっていきます。不安で行動出来ない人は、まずは行動して何かに挑戦する事が最も確実な不安対策だということを肝に銘じておきましょう。

ストレスの2面性 悪いストレスと良いストレス


多くの人は、不安やストレスから行動が出来なくなっています。不安を行動しない理由にしているのです。それは、ストレスや不安の一面しか見ない態度です。ストレスは悩みと幸福感の両方に相関しています。不安やストレスには2面性あり、マイナスな面もあれば、プラスになる面もあるのです。

ストレングスファインダーで有名なギャロップ社の調査によると、ストレス指標が高い国ほど寿命や幸福度も高い結果が出ています。ストレス大国、自殺大国とも呼ばれる日本に長寿が多いのはなぜか。それは、ストレスが健康にプラスに働いているからです。ストレス自体はネガティブでは無く、どう捉えるかなのです

例えば「やりがい」は人生の充実度に大きく寄与する要素ですが、人はやりがいを抱えると同時に必ずストレスも抱えます。やりがいを求めて自分の可能性に挑戦している時は必ずストレスを感じているはずです。

ストレスを避けるのでは無く、挑戦への燃料=ガソリンとして捉え人生の問題や課題を乗り越える力とする認識を持つことです。人生の難局を迎えたときに、ストレスはそれを乗り越えるための力を私たちに与えてくれます。

不安のメリット

不安に悩まされている人はとても多いです。しかし、不安にもメリットがあります。人は不安が高いほど、パフォーマンスが高まるのです。ただ、この場合は不安をエネルギーに変えられた場合です。

不安が強い人ほど洞察力や一つの情報から学び取る力が増加しています。細かいところに目が行き、普通の人なら気づかない部分も不安が強い人はそこから学び、成長するためのバネにしていくことができます。不安は判断力、分析能力の向上と深い洞察を生みます。不安な人ほど気づく力が高まり、他の人よりもたくさんの事を学べるのです

不安のメリットが活かせる場面
・確定申告などの書類作成、提出
・肝心なスピーチや発表、面接、試験
・舞台や公演
・取引先との営業、交渉
・芸術や工芸作品を創作する時
・体型改善のための取組(夏までに痩せる!など)

実際私も不安症なので経験があるのですが、ダラダラしているときよりも不安なときの方が本やネットを読む時などに慎重に言葉の隅々まで読んでいることに気づき、その内容がずっと頭に残っています。

1000人以上の10年間追跡研究によれば、ストレスや不安を避ける人ほど鬱になる傾向があり、人生に対する意義や幸福感が低下したといいます。ストレスに関する考え方を変えることが重要です。

不安は無くそうとしても無くなりません。むしろ肥大化してのしかかってきます。それならば、不安を強さに変えて行けばいいのではないでしょうか。人にとって、不安は無くてはならないもの。不安があるから人類がこれまで生き残っていたとも言えます。不安であることは、実はすごくいいことでもあるんです。

不安症の人は不安のメリットについて考え、どうすれば目の前の試練を乗り越え成長できるのか、このストレスや不安は何に活かせるのかを考えてみましょう。

不安とストレスを力に変える考え方

不安とストレスは成長促進剤で、ストレスや不安を受け入れる人の方が様々なメリットが得られるという様々な調査結果が出ています。以前記事に書いたリアプレイザルの心理テクニックや、ケリー・マクゴニカルさんのストレスを力に変える動画の話が関連しています。

ケリー・マクゴニカルさんの動画でも取り扱われたストレスに関しての3万人の追跡調査があります。ストレスと健康の影響を調べたのですが、ストレスが高い人ほど健康にも悪影響が出る結果となりました。しかし、健康に悪影響が出たのは「ストレスが害になると考える人」のみで、「ストレスが成長に繋がっていると考える人」はむしろ普通の人よりも健康的で若返ったかのように生き生きとしていたといいます。

ストレスを悪いものだと認識する前者は体を酸化させ老化させることで有名なコルチゾールを分泌させます。後者のストレスは試練を乗り越えるための燃料であると認識する人たちは若返りホルモンであるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)が分泌されたのです。両者ともストレスに対して放出されるホルモンですが、真逆の働きをしています。前者は逃げる為(逃走反応)に働き、後者は困難を乗り越える為(闘争反応)に働きます。

私たちの身の回りでも若々しい年齢不詳の人ほど何かに挑戦していることが見て取れます。健康サプリの効果はともかく、その中に出てくる若々しい老人の例は真実を得ているでしょう。何かに挑戦し、乗り越えてやろうという姿勢は人をドンドン若くみせるのです

緊張して普段のパフォーマンスを発揮できない人は、緊張は目の前の課題を集中して乗り越えるパワーを脳が指示しているサインだと捉えましょう。

乗り越えられるストレスはやる気や活力の源となります。挑戦できるメンタルは生き延びる力のベースとなります。ストレスを力に変え、困難を乗り越える時に私たちは幸福を感じることができます。

スカイダイビングで最も緊張しているのはインストラクター
空を滑空するスポーツであるスカイダイビング。このとき、誰もが一番緊張しているのは初心者である自分だと思いますが、実はインストラクターが最も緊張しています。緊張とは言い換えると心拍数が増大していること。心拍数を高めることで、彼らはベストなパフォーマンスを引き出しているのです。ドキドキしやすい人ほどそれを上手く活用できればパフォーマンスを向上させることができます。プロの人は心拍数をコントロールすることでベストパフォーマンスを引き出していると言えます。

※以前DeNAの株主総会で質問に立つとき滅茶苦茶緊張しましたが、今回の話を応用してどうにか乗り越えました。

悪いストレスを撃退する

一般にイメージされるのは、悪いストレスのことです。成長に繋がらない、必要性を感じないストレスなどが考えられます。

悪いストレスの例
・あまりにも強すぎるプレッシャーストレス
・直ぐには解決出来ない長期的な視野が必要とされるストレス
・就職・転職活動など面接官や運によって決まるような自分でコントロールできないストレス
・事務作業など工場労働的なストレス
・睡眠不足などの生理的なストレス

こうしたストレスに強くなる習慣としては、運動や瞑想(ヨガ)、睡眠が最も効果的です。ストレスとなる対象から離れ、友達と話したり、カラオケ行ったり、好きな趣味やゲームをするのが良いでしょう。

より具体的詳細的なストレス解消法はパレオな男ブログで有名な鈴木祐さんの以下のストレス対策本に詳しいです。当ブログでも後ほど内容の要約&まとめ記事を作る予定です。

反芻思考について

©Nintendo

良くないストレス反応の一つに、反芻思考があります。同じ事を何度も考えたり、ぐるぐる思考といって悩みがループしてしまいます。反芻思考には2種類あり、一つは勝手に悩みが反芻してしまう侵入型反芻思考と、自分から積極的に思考を反芻させる積極的反芻思考があります。
 
侵入型反芻思考は本人の意志と関係なく思考がループし、フラッシュバックするので鬱や強迫神経症にも繋がる苦しいタイプのストレスです。悩み多き芸術家にはこのタイプも多く、悩みや過去の出来事に心を奪われてしまい目の前の問題に手がつけられないことがあります。
 
一方で積極的反芻思考は、あえて自分から悩みや反芻思考を引っ張り出して徹底的に向き合う作業です。会社経営者や新しいアイデアを思いつく時など目の前の課題に取りかかっている場面でプラスに働きます。
 
ずっと同じ事を考え続けることは、それだけ解決したいエネルギーがあるということ。あえて自分からとことん考えることで、感情や思考を視覚化していきます。エキスプレッションライティングという心や頭に感じたことを全て吐き出す心理テクニックがありますが、まさにこれです。自主的に反芻思考を書き出して紙に書き出すことで心の内側を徹底的に引っ張り出し、客観的に捉えることができます。紙に書き出していくと、無限に続いていた悩みや思考も、いつか必ず尽きます。

そしてこれは侵入型反芻思考の対策になります。対象から逃げているといつまでもついてきますが、立ち向かってしまえばその対象はそれほど怖くは無かった事に気づきます

©Nintendo

心理学では、恐怖症の改善の為にあえて避けている対象に飛びこむ暴露療法というものがありますが、それに通じるものがあります。
 
私も人生に悩んだ時期があって、ノート一杯にこれまでの人生やら悩みを書き出したことがります。終わった後は人生がスッキリして前に進むスペースが心の中に出来た感覚でした。書くのに3日、4日ぐらいは必要だったかな。
 
無理矢理思い出して侵入型反芻思考になるぐらいだったら、自主的に紙に書き出して出てこなくなるまで反芻して、不安に打ち勝ったほうがいいです。怒りや嫌いな事も書きまくるとどうでも良くなりますよ。

まとめ 不安をエネルギーに

不安はエネルギーの源。不安が強い人はそれだけ生きるエネルギーに溢れていると言えます。不安はチャレンジ反応で、ドキドキしてエネルギーを巡らせることで目の前の課題を乗り越える為のシステムです。最後に生き生きとした生活を送る為のヒントをまとめます。

■ドキドキ成分アドレナリンを活かせ
試験前に緊張したときは「どうしよう」とネガティブに考えるのでは無く、「目の前の課題に取り組むための集中力を高めてくれているのだ」と認識しましょう。本番前に不安やストレスを感じない方が危ないです。慣れてリラックスすると気が抜けて凡ミスが増えるのはこのため。本番前にアドレナリンを出し、ドキドキして万全に目の前の課題を乗り越える闘争モードに切り替えているのです。

■自分よりも大きなものに挑戦する
人生全体を見て、自分一人の目標だけ設定すると、それが達成したときにだらけてしまいます。大きなものに大きな目標を置き、大きな枠組みの中での自分の役割や目標を考えるといいでしょう。この辺りはアドラー心理学に通じるものがあります。

■燃え尽き症候群対策
燃え尽き症候群(バーンアウト)とは、頑張りすぎてエネルギーが枯渇してしまう症状のことです。不安の力はこうした燃え尽きの症状にも効果的です。不安をエネルギーの源だと捉え、焦りの感情は自分に対して「パフォーマンスを向上させ、まだまだ向上心があり、前に進む余地を残しているんだ」というメッセージと意味づけ(リアプレイザル)することでエネルギーに変換していきましょう。

■自分を応援してくれる人を見つける。
自分を応援してくれる人を見つけるのもいい方法です。人は自分が応援されていると感じるとパフォーマンスが向上します。もし、身近に応援している人がいなければ、「自分は何をやっても応援されないんだ」と落ち込む前に自分が誰かを応援してあげましょう。そのお返しとして相手も自分を応援してくれます。頑張っている人を応援するマインドセットが結果的に自分にも応援を呼び寄せます。

関連記事

怒りやストレスを感じたときに効くリアプレイザルとは
「ストレスと友達になる方法」ケリー・マクゴニカル TED動画レビュー
アメリカ心理学会が伝える6つのストレス神話
「やれば出来る」の研究「マインドセット MINDSET」キャロル・S・ドゥエック まとめとレビュー
自分は出来るという感覚「自己効力感」アルバート・バンデューラ
【保存版】アドラー心理学まとめ すべての悩みは人間関係である

参考・出典

vol.169 若返りホルモンとも呼ばれるDHEAの秘密
強迫神経症

 
前の記事モニター要らず?パソコンのモニターをゲームプレイで使う方法 キャプチャーボードの活用法
次の記事セルフ・ライセンシング(モラルライセンシング)とは?良いことをした後に自分に甘くなる現象