もうどうにでもなれ効果(The What The Hell Effect)の原因と対策

もうどうにでもなれ効果(The What The Hell Effect)とは何か目標を立てているとき、ちょっとした誘惑に負けたことで「毒を食らわば皿まで」という感じで自分の自制心の抑制が効かなくなる心理状態のことです。

もうどうにでもなれ!自制心の暴走

もうどうにでもなれ効果は日常の至る所で見られます。

・ダイエットで減量のための目標を立てていた。ちゃんと禁欲生活を守っていたのに、年末年始の人付き合いでどうしても食べなくてはならない日が出来てしまった。もう今日はたくさん食べてしまったからアイスとかラーメンとか一気に食べてしまおう!とドカ食い。

・毎日勉強を3時間すると決めていたのに、学校や仕事から帰宅して夜遅く。3時間も勉強出来そうにない。今日はもう勉強は辞めた、リラックスの日だ!と決めて一回も勉強せずに一日を過ごす。

・1万円を千円に崩した時にあっと言う間に使ってしまう。千円を百円にばらしたときに無駄に缶ジュースとかコンビニとかでたくさん使ってしまう。

・ずっと綺麗な所だったのに、一箇所落書きが出来ると次第にゴミや落書きが増えて荒れた場所になる。

・ゲームは一日1時間!だけど気づいたら今日は90分もやってしまった。もうどうにでもなれ、寝落ちするまでゲームしよう!

・大学受験に失敗した。就活にも失敗した。私は終わりだ。もう人生がどうにでもなれ、と思って今自分に出来る努力を放棄する。

・ギャンブルで負けてしまった。このままではもう終わりだ。どうせ終わりなら、全財産をかけて一発逆転を狙うとするか!

もうどうにでもなれ効果は完璧に目標を達成することにこだわる完璧主義が陥りやすい現象です。

もうどうにでもなれ効果は拡散する性質がある

一つのところで「もうどうにでもなれ効果」が起こると、他の全ての生活の側面でも発動します。

・ダイエット中の人がラーメンやピザを食べてしまったら、他のところでも気が緩み衝動買いをしてしまったり、普段よりも一層自分に甘くなります。

・何か一つ大きな挫折があり、それに劣等感を感じている人は他の分野でも自分を卑下したり、どうでもいいと無気力になりがちになります。(自信が持てないループに入る)

一つの判断の甘さや悪い結果が人生の他の側面でも影響し、自暴自棄に陥ってしまうのですね。

もうどうにでもなれ効果が発生しやすい場面は?


完璧主義な人が「もうどうにでもなれ効果」に陥り易いのですが、以下の目標を抱えている人も陥りやすいです。

■短期目標しかない
「今日は健康的な生活をしよう」と短期目標しか持っていないと人は簡単に誘惑に負けます。長期的に未来の展望がないため、今日ぐらいはまぁいっか、と視野が狭くなり、小さな「もうどうにでもなれ効果」を積み重ねてしまいます。(運動習慣のない人が)今日は運動できなかった→明日運動しよう!→明日になった→やっぱり今日も運動できなかった→明日は必ず運動しよう→以下ループ…

■何かを辞める目標、禁止目標を持っているとき
「パンダを想像しないでください」と言われるとパンダを想像してしまうのが人間。何かを禁止することでその対象への執着がより一層強くなってしまい、一旦自制心が外れると洪水のようにその対象に溺れてしまいます。

「もうどうにでもなれ効果」はいかに踏みとどまるかが重要です。

もうどうにでもなれ効果の対策

もうどうにでもなれ効果をどのように対策すれば良いのでしょうか。

■長期の目標を意識する
大きな自分の将来的なビジョンを持つことが重要です。例えば「夏までに堂々と水着が着られる自分になりたい!」のであれば、何かを食べようとするときその大きな目標を思い出すことで目の前のその一口が脂肪の元だと気づき、誘惑から踏みとどまることが出来ます。今自分が誘惑から踏みとどまることが出来たら、大きな目標に向けて前進することができるという感覚を得るのが重要です。

■禁止目標を辞めて、代わりの行動を見つける
何かを禁止する、悪い習慣を辞めることはとても難しいです。行動をやめるのではなく他の行動に置き換えましょう。

・痩せるためにお菓子を食べない!→お菓子を食べては良いが、ポテチとか甘いものではなくナッツ類やヨーグルトなどにしよう。

・ソシャゲを辞めたい。ガチャ課金を辞めたい。→他の楽しみを見つける、趣味を見つける、友達を作って一緒に家庭用ゲームで遊んでみる。

・長時間のネットやスマフォいじりを辞めたい→空いた時間は読書したり、簡単なストレッチや筋トレをしてみる。

■達成ではなく挫折から立ち直った回数を数える
目標を達成した日をカレンダーに印を付けたりして自分が前に進んでいる感覚を持つことも重要ですが、完璧主義を加速し一度のミスでもうどうにでもなれ効果を誘発してしまう場合があります。

自制心を高めるには逆に失敗や挫折から立ち直った回数を数えるのが効果的です。「自分は失敗から学ぶことができた」と解釈できるため、失敗をすることが経験値となり成長を実感出来るからです。

何よりも挫折から立ち直った回数を数える事は、「自分は失敗しても立ち直ることが出来るんだ」と自信になります。ちょっとの失敗でもうろたえることはなくなり、「失敗から立ち直れる」という自信が不安や自制心の暴走を抑えてくれます。

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参考・出典

How The What-The-Hell Effect Impacts Your Willpower
The What-The-Hell Effect

 
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