【まとめと要約】「一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学」cis(著)レビュー

個人投資家で日本でトップレベルの資産(230億~)を持つcisさんの「一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学」を読了しました。cisさんの生き様はまさにプロギャンブラー。まがりなりにも株取引で個人資産日本トップレベルまで築いた男の思考法を見ていきます。

株取引の本質はギャンブル。マネーゲームである。

投資家というと企業の株を買って会社を応援する行為とも考えられますが、cisさんは完全にゲームとして捉えています。ゲームや他のギャンブルなどで培った経験が株取引に活かせる場面がとても多く、株取引の本質は技術と偶然性とリスクとリターンが混じり合った最高のゲームだと言います。そのため本書で紹介される投資法はデイトレードなどの短期投資についての話がメインとなります。

株の勝ち方についての本は意味がないとバッサリ。cisさんのいう方法論はいたってシンプル。だけど実行するのががとても難しい。自分で試行錯誤して、体で掴む部分もとても大きいと述べています。

本能に打ち勝つ

本書が他の株テクニック本と違うのは、短期の株式投資の本質的な考え方を述べているところ。巷にあるようなうわべのテクニックではなく、どうすれば勝てるのか、なぜ負けるのか、人間心理が陥りやすい罠にも言及しています。株取引でもっとも大切になるのが人間のバイアスや本能に打ち勝つことだと言います。

この例として、ランダム要素について、人は自分の都合の良いように解釈する傾向があるといいます。例えばコイン投げゲームで、表にかけたのに裏が出て負けてしまった。この場合負ける確率は50パーセント。しかし、これが9回も裏が連続したとしたら、人はどう思うでしょうか。人は9回連続で裏が出た時、次こそは表が出るだろうと思い込んでしまいます。現実はいつコインを投げても50パーセントの確率で負けることには変わりがないのに、裏が続くと次に表が出る確率を多く見積もってしまう。これこそが人間心理の罠です。これまでの投資行動が現在の判断を歪めるサンクコストバイアスに陥る傾向があるとも言えます。確率に関しては、数千とか数万とか大きく試行回数を重ねれば50パーセントに収まるけれど、数回~十数回のような試行回数だと連続して偏ることはよくあり、ランダム要素は人間に都合良くバランスをとってはくれないという現実を受け入れる必要があります。(ソシャゲのガチャでもこういう心理はありますね。)

上がる時は上がる、下がる時は下がる

株取引というマネーゲームにいかに勝つか。これは本当に単純で、

上がっている株を買う。下がっている株は買わない。買った株が下がったら売る。

をちゃんと実行できるかどうかにあると言います。株は完全な確率ゲームはなく、下がったから次は上がるだろうとバランスを取ってくれるものでもない。だからこそシンプルに今上がっている株を持ち、下がっている株を売ることが重要。勝手な予想はしないで、今上がっている株は保有すること。

cisさんは押し目買いナンピン買いには否定的。相場のことは相場に聞くしかなく、自分の予想は隅に置いて、まずは目の前の値動きや流れを見極める事を重視しています。勝手な自分の予想で、割安だとか、割高だとか判断しないことが重要。

重要なのはトータルの損益

相場で負けてしまう人の多くは損切りが出来ず、利益が出たときに直ぐに利益を確定してしまう傾向があります。でも勝つためにはその逆の発想が必要です。損切りをいかに素早く行い、利益が出ている株を保有するか。一番重要なのはトータルの損益です。短期的には小さな負けが続いたとしても、一つの大きな勝ちがあれば取り戻せるのです。

株でいちばん大切なのは迅速な損切り。失敗から逃げてはダメで、失敗は当然としていかに最小にとどめるか。

大きな損をしないことが最も重要で、そのために失敗を受け入れる迅速な損切りが必要不可欠になります。負けた株を保有する塩漬けは失敗を受け入れることが出来ていないから。損を認めたくない人間的な気持ちが結果として大きな損に繋がってしまうのです。ここまで来ると、損切りが出来ない人は投資には向いていない、と言えますね。

大きく儲けるチャンスは転がっている

人間の感情が大きく揺さぶられた時ほどチャンスであるとのこと。人々の恐怖が大きければ大きいほど大きく稼げるチャンスだと言います。倒産する噂がある企業の株などは特に狙い目で、復活したときの相場の反発がものすごいからです。

恐怖を感じるときに人は視野が狭くなり短絡的な行動に走りがち。場を冷静に見られているからこそ、僕はこうした大きな勝負が出来る。

ピンチとチャンスは紙一重であり、cisさんの場合はリスクヘッジすらリターンを薄めるものでしかないとバッサリ。大きな勝ちが期待できるときは、一気に投資して、結果は結果として受け入れるといいます。

ロジックを重視。仮説を考える力。

経済の知識はあくまでも参考程度。一番重要なのは目の前の株が「今買われている株なのか、売られている株なのか」を見極める事。そのために仮説やロジックを考え、何かしらの関連性や規則性を見いだしていく力が重要とのこと。例えば全然別の業種だけど株価が連動して動く銘柄など、相場を見ている事でしか分からない事も多いのです。

冷静に場と自分を見つめる力

cisさんが株で負け続けた時の話もあります。自分で割安と思っていても相場はその通りには動かない。結局自分の判断はいい加減なもので、現在の株価こそが全てであり、株式市場は公平や平等で動くものではないのです。ひたすら値動きを見て、自分の理論や仮説を何度も修正していく。株の板に張り付くことで見えてくる動きがある。全てはマーケットから学んでいるといいます。

割安とか割高とか、将来この会社は業績が伸びるはずだとか、そういった要素は、自分が勝手に思い込んでいるに過ぎない。買っている人ほど、短期の値動き、かつチャートや指数組み入れなどの理由がある株を買っていた。
今ある優位性に張る。

その他気になったところのまとめ&メモ

・不動産投資をしてみたけれど上手くいかなかった。→税金とか書類作成が面倒くさく、大家としての苦労が大きいため。固定資産税など、投資の割に収益が出ないのだとか。
・仲間を集めて投資を教えたけれどうまくいかなかった。お金が絡むとその人の本能的な部分が出る。
・株式市場において自分を客観的に見ることが出来ない人は負けてしまう。
・株の損切りは得意でも、人の損切りは苦手。
・ルールを運用する立場が一番力を持つ。
・自分と他人を比較する発想は持たない。
・オフ会など人との交流を通して学べる事も多い。匿名掲示板2ちゃんねるのオフ会で知り合った投資で勝っている人たちから多くを学んだ。奥さんとは2ちゃんねるのスレッドをきっかけに出会った。
・早い人はいつでも早く、遅い人はいつでも遅い。行動を起こす早さの重要性。投資家としては早さが重要。
・不況時の赤字企業への長期投資はアリ。紙切れになるリスクを背負って転落企業を買うのは夢がある。
・無限に努力をしていればたいていの人には勝てるようになる。
・ギャンブルを制する者は株を制す。

「相場は仕事にもなり、趣味にもなり、ゲームにもなる。最新かつ最先端の学問であり、経済活動でもある。最先端だから未来が予想できない。究極に近い”不完全情報ゲーム”。日々やることが勉強になり、実力をつけることになり、お金にもなる。」
「頭がめちゃくちゃ良くても勝てるとは限らない。判断や行動が早いことも大切。人脈だったり、情報だったり、資金調達力だったり、いろいろな側面からの攻略法もある。そういった総合力での勝負だから、ゲームとして壮大。これほどスケールが大きなゲームは他にない。」
「資本主義は人類史上最高のゲームかもしれない。」

総評

インスピレーション:★★★★★★★★+
満足度:95%

これまで読んだ投資本の中ではダントツで刺激を貰えた良著です。テクニックでは無く、株取引の本質や投資を失敗する人が陥りやすい心理が学べます。ちゃんと自身の過去の失敗話も書いてあるのが好印象。これだけ財を築いても最初から勝ち続けている訳ではなく、投資を始めた頃はたくさんの損失を出していて、cisさんの生い立ちやなぜ投資家になったのかのドラマが面白く一気に最後まで読んでしまいました。

cisさんはゲームで投資のスキルを磨いた部分があり、ゲームが好きでなかったら投資家にはなれていなかったと言います。私がcisさんを知ったのは、アメリカに留学していた時にたまたま遊んでいたスクエニのソシャゲDQMSL(ドラゴンクエストモンスターズスーパーライト)の廃課金をしている個人投資家だと知ったのが最初。本書を読むまでメディア露出があったB・N・Fさんと混同していました。cisさん自身は本書が初の自著であり、友達の企画に応えた形で、印税も貰う事もなくボランティアで本書の制作に応じたとのこと。

投資ゲームに勝つための戦略はとてもシンプル。いかに自分を客観視して、失敗を受け入れ損切りを素早く行うか。超短期投資の戦場を生き残る上での軸となる考え方が学べます。相場のことは相場に聞くしか無く、RPGゲームのように毎日相場と向き合うことでレベルアップをすることができると言うから面白い。人生は勝負の連続です。一人のギャンブラーの生き方から、何か触発されるものを得る事はあると思います。

(かくいう私はDeNA株を損切り出来ずに大赤字…。まさに本書で言う失敗を受け入れられない人の例に入っています。もっと早く本書と出会いたかった!)

「一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学」
cis(著)
KADOKAWA 2018/12/21

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参考・出典

cis(Twitter)
cis(投資家)Wikipedia

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