eスポーツのこれからの展望について分かる!黒川塾63「海外eスポーツ事情とeスポーツの未来に向けて」体験レポート

先日2018年9月19日(水)に黒川塾63「海外eスポーツ事情とeスポーツの未来に向けて」がデジタルハリウッド大学御茶ノ水ソラシティで開かれました。黒川塾とはゲームを中心としたエンターテイメントの勉強会のこと。今回も参加したのでその内容をまとめます。私が黒川塾で体験したeスポーツに関しての回は今回で2度目。eスポーツについて知りたい方は以下の記事も読んでいただけるとより理解が進みます。

前回→黒川塾59 「eスポーツの展望とゲーム依存症を考察する会」に参加してきた【前編】eスポーツのこれから 法律、JeSU、施設、利権について
  →黒川塾59 「eスポーツの展望とゲーム依存症を考察する会」に参加してきた【後編】ガチャと射幸性とゲーム依存

黒川塾63「海外eスポーツ事情とeスポーツの未来に向けて」ゲスト
司会  黒川文雄
ゲスト 木曽崇(きそたかし)カジノ研究家
    谷口純也 FPS「Counter-Strike」の日本人トッププレーヤー(noppo)
    江尻勝DeToNator代表 

明日(20日)から東京ゲームショウが始まるので、スケジュール調整が大変だったそうです。日本のeスポーツはまだまだで、今年がeスポーツ元年と言われているが、このままの流れでは来年もeスポーツ元年と言われるのでは?とのこと。海外を参考に日本のeスポーツをどう盛り上げていくか、そして解決しなくてはならない問題点は何か?がテーマです。

ゲスト

木曽崇(きそたかし)さん
オリンピック、今のeスポーツ。ガチャの問題など、今ある問題に切り込み、どのように前向きに対応していくかを検討していく。業界の外からゲーム業界の人が言い出しにくいことを言う役割。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)でカジノ研究の日本における第一人者。

谷口純也さん
noppoというハンドルネームで活躍していたFPS「Counter-Strike」の日本人トッププレーヤー。10年以上前、単身スウェーデンに入り、世界大会に出場した。

江尻勝さん
プロゲーマーのチーム運営などをしているDeToNator(デトネーター)代表。前職は美容師で、美容師を辞めて、宅建取ったりネットショッピングを始めたり色んな事業をしていた。その中でeスポーツがない時代にデトネーターをスタート。パートナーさんを見つけ始め、2014年頃から事業が形になり始めた。eスポーツを意識してやっている訳ではなく、自分の目線で現状のeスポーツについて語りたい。

日本のeスポーツのこれから 講演まとめ・抄録

ゲーム業界との関わり

木曽:カジノ研究家として賞金や施設の風営法の問題が専門。ゲーム業界にいる人が言えないことをビシッと言う役目。(黒川さんいわく、木曽さんがいなかったら、ソーシャルゲームなどで景表法がクリアにならなかったという。)これまでは法律のなんとなくの自己解釈が業界文化だった先に業界でやって、あとから規制が追いついてきた。伝統的なギャンブル業界が対処してきた先行して法律が存在している分野(施設や景品)の問題はゲーム業界の人には規則が厳しいと思われている。

谷口:2003年前半に蒲田のレッドゾーン(PCがいっぱい入ったゲームセンター)で、当時は学生だったけど、ゲームが楽しくてeスポーツ始めた。当時はeスポーツという意識はなかった。純粋に面白いからハマっていった。ネット大戦の環境がなく、大勢と戦いたい、大きな世界で戦いたいと思い、当時最先端だったスウェーデンに単身乗り込んだ。勉強は得意ではなくて、このまま勉強を続けていいのだろうか?なにか特出した物を持った方がいいのではないか?と思い、漠然とした思いで自分の得意な分野にかけようと16歳の時にきめた

世界大会では世界と日本のレベルの差がありすぎて、日本にいた頃の練習だと勝てないため、世界で戦える練習をやらなくてはいけないと思っていた。チームを組んで戦うゲームだったので、モチベーションが高い人を集めるのが日本では不可能だった。

世界のeスポーツは本当にレベルが高く、他のスポーツと同じ労力と努力がいる分野。当時一番強いスウェーデンに留学したが、大変だった。スウェーデン語の塾に一年通って下地をつくって、ビザとかを準備した。スウェーデンは移民問題で簡単に留学できない国だったので、学生ビザで留学した。

谷口さんのスウェーデンでの苦労
谷口さんのスウェーデンの話では、白人社会で人種差別(外国人差別)の問題など、非常に大変だった話が印象に残りました。税金がすごく高いのですが、移民が税金を使うので、ヘイトを受けたそうです。外国人に厳しい国柄で、国の中でのルールがきっちりしているため、国民番号がないと国民として扱われず、アパートすら借りられない何も出来ない状況だったとのこと。谷口さんは学校にすがるしかなく、友達にパソコンを貸してもらったり、住まわせてもらったり、人と人とのコネクションだけで生きてきたといいます。IRC(参考)というチャットルームで日本が好きなスウェーデン人と出会い仲良くなったそうです。そのスウェーデン人に空港までピックアップして貰った上に、「カウンターストライク」のプロチームも紹介して貰ったそうです。彼はいまブリザード社で働いているとのこと。このような恵まれた出会いに助けられた場面が多かったとのことです。

海外に挑戦していく&日本のeスポーツの特異性

江尻:積極的に他がやらないところで自分たちのチャレンジをしていった。海外での苦労としては、外国の文化にどれだけ適応できるかが大事。国によってやり方がある。国によってゲームに対する向き合い方、お金の価値観が全然違う。どれだけ理解して、どううまく立ち回るのか理解するのに時間がかかる。

木曽:日本が世界と同調する必要性はないと思う。日本独自であってかまわない。ただ、日本が世界に売ってでられない理由が一点あって、日本市場はどうしてもコンソール中心で育った背景がある。eスポーツはネットワークでのマッチング対戦が大前提で、マッチングできない限りゲームタイトルが盛り上がることに限界がでてしまう。市場がガラパゴスになりやすいし、世界との競争でも不利になってしまう。オリンピック、アジア大会などはプレイヤー人口で決まってしまう。日本でしか流行らないゲームがオリンピック競技にはならないでしょう。

江尻:ネットワークの問題が本当に難しい。いつか限界が来てしまう。どれだけ日本で強くなってもマッチングの問題が残る。海外で練習する流れになるけれど、それができないのが現状。2016年から海外にむけてやっている背景には、日本の市場は目に見えて大きくはならないという思いがある。それなら、自分たちから世界市場に行くしか選択肢はない。パートナー様にも理解してもらうことは、日本のシーンからただ離れるのではなく、世界で結果をだすことで、こういう道もあるんだよ、と示していきたい。どれだけ日本でトップになっても、同じルーティンを繰り返しているだけでは次に行けない。ビジネスという視点だと大きな事をやりたいと思うけれど、日本ではそもそも条件が整わず難しい。興行や配信としてのビジネスがまだまだ未熟。段階を経て成長しなくちゃいけない。市場を育てながら海外で実績をだすなどしていかなくてはならない。企業としては忍耐力が求められる時期。

谷口:まさに日本で対戦相手がいない時期にゲームを始めていた。当時(2003,2004年頃)はインターネットはあってもADSLで、海を越えるとラグが高くなり、まともに戦えなかった。唯一韓国だけ一緒に対戦できたが、相性のいいサーバーを見つけるのに1時間~2時間かかった。なぜ当時スウェーデンが強いのかというと、ヨーロッパは陸地で繋がっているため色んな国と対戦できる土壌があった。その中で切磋琢磨されて非常に高い物が生まれてきていた。日本は島国であるから、いかに海外の大会で成果を出せるかが重要になる。

日本の会社主催のドメスティックなタイトルでは国際展開は難しい。やはり、日本だけで大きな賞金を作り出して、選手が生活できるようになるには視聴者も増やしていかなくてはならない。観戦者が増えることで広告価値が増える。世界大会のレベルとなると、何百万人が見ており、動画も何百万再生される。大企業は特に若者に自分の製品を売るのが難しいため、若い層が見るeスポーツを活用することでこれまでアプローチできなかった層に商品をアピール出来る。

江尻:競技的なものの主流は海外にある。海外ではバッチバチの競争が繰り広げられている。競技的にやってきた人が引退してストリーマー=ゲームを伝える人になり、プロにも2種類分かれている。自分たちができることは下支えの分野。デトネーターとしては、今度塾を開きたい。別にプロにならなくてもよい、習い事の一つとしてゲームで努力をすることで成功体験を伝えていきたい。日本は日本独自のeスポーツでいいと思う。ウイレレとかストリートファイターVとか。日本と世界は展開を別に分けて考えている。

谷口さん:かつてはeスポーツ・オンラインゲームは「カウンターストライク」とかがフィーチャーされてきたが、今は論調が変わってドメスティックな手の届きやすいタイトルがPRされるようになった。長い間eスポーツを見てきたが、タイトルの移り変わりが激しい。スウェーデンではカウンターストライクはおじいちゃんらのプロチームがあるほど。日本ではコミュニティが不足している。ヨーロッパでは昔から家庭用ゲームよりもパソコンゲームでの下地があった。ゲームをしない友達も、みんな「カウンターストライクやっていたよ」と知っている。それぐらいPCゲームが認知されている文化がある

jesu(一般社団法人日本eスポーツ連合)の果たすべき役割

木曽さん:日本のeスポーツ組織jesuはゲームパブリッシャーが背後にいる。だから、賞金やプロ制度に力を入れるのではなく、本来なら権利関係の問題や手続きをしていくべき。ゲームセンターで野良の大会を開きたいときに、今の現状だと窓口が複数あり大変な状況。権利関係の許諾手続きが煩雑なのをシンプルにまとめて欲しい。権利問題は彼らしかできないことなのに、賞金とかオリンピックとかの脇道につっこんでしまっていると感じている。身近な権利関係の手続きの問題をまず優先して解決させていったほうがいい。

jesuさんの果たすべき役割はあって、なすべき役割はあるから、そこに特化して欲しいと思う。プロ制度や賞金とかお金の匂いのする分野ばかりつっこんでいる印象。でも元々jesuは非営利団体で儲かる主体はパブリッシャーにある。存在意義を問い直す時期。

数字の大切さ 成績記録の積み重ねスタッツについて

黒川:公式の記録、大会のレコードを残す組織が必要。そこをみれば分かるようなデータベース的なものが必要ではないか。

木曽:ギャンブルの分野では個人の成績の積み上げをスタッツという。スタッツはとても重視されるが、集めるのに苦労する。管理が大変すぎるのが課題。プロ野球のスタッツもちょっと前までは手作業でチェックしていた。お金の匂いがないとなかなか管理しようという気にならない。スタックを転じて商売する動機付けが必要。手間がかかる割にはお金になりにくい分野なのでみんなやりたがらない。

江尻:チームのバリューを高めるには、データであったり数字が一番の指標となる。デトネーターは2014年が転機で、数字の重要性を知って数字を全部取るようになった。数値の蓄積を元に信用が作られる。分かってきたことは、大きい数字がすべてではないということ。継続性の方が大切。大きい数字も大切だけど、その数字がどういう分野で刺さるのか。小さな数字でも継続性があってファンがいるのなら投資してもいいということになる。今は、eスポーツのビジネスのガワ(外側の見かけの枠組みのこと)だけが肥大化し、すぐに何かお金が手に入ると錯覚してしまう。企業様になにがプラスになり、自分たちはこういう価値を提供するから、案件を検討してくれ、と考える機会をまず提供するお金があればモチベーションが担保される。確かに分かるけど、そこじゃなくて、自分たちの現状でどういう結果を残し何をやったかが重要

谷口:数字は非常に大切。社内では数字を元に審議していく。モバイル、コンソール、PCなどいろんな分野がある。このチームはPCタイトルに強い!このチームはモバイルタイトルに強い!といった理解がないと数字や成果は取れない。

恵まれている現状の日本のeスポーツを取り巻く環境

江尻:日本では環境に文句言う人ばかり。それをいうなら「海外行ったら?」と思ってしまう。環境を要求するのなら、結果をますます求められる。プロとして生きて行くのであれば、自分たちの価値を見いだして、なぜ日本でお金がでないのかを理解しないといけない。メディアでは日本のeスポーツは遅れていると言われているが、シャドウバースでの1億円の大会とか、最近は日本でも盛り上がりを見せるeスポーツの土壌が出来てきている。豪華にやっているところはやっているし、決して日本が遅れているわけではない。選手たちの行動で、例えばもっと海外で成果を出したり世に出て評価されるべきで、それを手伝わなくてはいけない。盛り上がっているところをちゃんと見て、それで判断して欲しい。

谷口さん:いち元eスポーツプレイヤーとして、昔と比べて今は断然環境が良くなっている。かつては一年に一回に大会があるかどうか不透明の中、それを目指して努力していた。今はパブリッシャーさんが頑張ってくれて、大会も年に2~3回行われることが保障されている世界で活躍すれば、夢をつかめるチャンスも提供されている。大会で結果を出しても大金が手に入る保障がされていなかった時代から見てみると、今はとんでもなくeスポーツが恵まれた時代。

オリンピックとeスポーツ3つの乗り越えるべき問題

木曽&黒川:アジア大会はほとんどテンセントが独占している。ゲーム大会は開催地域によってどのタイトルを選定するかの配慮がある(同じサッカーゲームなら、アメリカならウイニングイレブンではなくFIFAなど)。北京大会で麻雀などのマインドスポーツを公式競技にする動きがあり、オリンピックで自分の国が得意な競技を入れる動きと同じ構図が働いている。

キラーゲームは不要というオリンピックバッハ会長の声明では暴力表現が問題となっており、それを取り除かなくてはいけないという。暴力や破廉恥表現はオリンピック表現にそぐわないという話は“そもそも論”として言われていたこと。

eスポーツがオリンピック化をするための3つの乗り越えなくてはならない問題
1, 暴力、性表現
2, 管理団体、統一団体、ルールを決める団体の不在
現状、全部が違うルールで大会をしている。管理団体つくって、最終的にオリンピック公式ルールを作るようにする。例えば麻雀なら日本、中国、アメリカでルールが全然違う。統一しないとオリンピック競技にはならない。中国は麻雀をオリンピック競技申請する際にちゃんと国際ルールの統一機関を作った。eスポーツも同様にしなければいけない。最終的にルールを決めるのはゲームパブリッシャーになるので、ルールを統一団体に移管できるのかどうか疑問が残る。
3, 知的財産の問題
最終的にはこのパブリッシャーの問題に行き着く。ゲームコンテンツを使った大会や放映には必ず知的財産保有者に許可どりが必要となる。残念ながらオリンピックという放映権をビジネスにしているイベントとはかみ合わない仕組みになっている。著作権の整理がつかないのが現状。これは世界でも同じで、全世界で違うタイトルに絞ってそれぞれ放送されている。権利窓口や、管理団体がバラバラで調整に時間がかかるため。オリンピックは版権ビジネスで、放映権を売って収入を得ている。例えばコンテンツの中でサッカーは誰の知財ではない。しかしゲームは第三者の許可が要る。許可が無ければ放送できないものをどう彼らのビジネスモデルと結びつけるか。

江尻:オリンピックに関してはタイトルありき。タイトルが決まっていないと育成が出来ない。決まったとしてもタイトルが続くかわからない。人をそこに割り当てて、やりなさいと言えない現状。未知数なことが多すぎる。オリンピックは通過点の一つでしかない。オリンピックの聞こえがいいから、みんなこれをやれば盛り上がるよというけれど、eスポーツ市場が成長した時の通過点でしかない。市場を作って人を増やして、その通過点の一つとしてオリンピックがある。ビジネスを期待している人の多くが実際の中身を知ると目の輝きが消えていく。盛り上がるのはいいけれど、今は前提としての土台を作っている最中。土台作りを一緒に手伝っていくのなら一緒にやりましょう。

谷口:オリンピックの問題点が解決されれば、世界中でeスポーツの認知度があがるのは間違いない。現状だとゲームを知らない人が見たら何をやっているのか分からないゲームシステムが多い。もっと一般の人に分かりやすくしていく必要がある。今のままだと例えオリンピックで採用されてもすぐに無くなってしまうかもしれない。パブリッシャーさんとも連動して、もっと一般の人にも分かりやすいように、ゲームを整えていく必要がある

黒川:ストリートファイターVのカプコンカップの例から、メーカー側のチューニングが途中ではいってしまうとキャラの感触も異なってしまう。それに対応するのがプロだけれど、ルールを統一するのはパブリッシャーということになり、管理問題を解決させるのは難しいと思う。バッハ会長はキラーゲームなどの暴力的な表現の入ったゲームは出来ないと言うけれど、それなら実際何やるのだろう?暴力も性表現もないゲームに何があるのか。
→木曽:スポーツゲーム、カードゲーム、パズルゲームなど。ピョンチャンではスタークラフトやウィンタースポーツゲームが採用された。

谷口:eスポーツ畑で育った者としては、暴力表現を無くしたものが想像できない。むしろ暴力表現はマックス。テロリスト対警察どっちが勝つかみたいな。現実に出来ないことをやるのがゲームの面白さ。一般の人にはすぐに理解して貰えないことだけど、eスポーツの根源はそこにあると思う。

黒川:できないことができるのがゲーム。PS4の「できないことができるのが最高だ。」のシールをパソコンに貼っているぐらい好き。ある種の自己表現、自己実現がゲームでは出来る。オリンピックだと公序良俗を意識させるため、それに沿うゲームが出来たら一番ベスト。でもそれだとハイパーオリンピックまで戻らないといけないかも…?

江尻:自分たちがやるのはゲームをつかってやるビジネス。それも選手がいて成り立つこと。どう継続してやるか、ちゃんとした根拠や理論が要る。何をしてもeスポーツならお金が集まるという幻想的なものが蔓延している。何をしたいか、投資や生まれたお金で何をしたいか、どんなリターンが欲しいか。そこにリンクや共感するものを見いだしてビジネスを進めていきたい。

谷口:今までeスポーツってオリンピックとか視野に入れていなかった。ところが今はオリンピックですらeスポーツを気にするぐらい認知度が上がってきた。パブリッシャーがオリンピックで認めるようなタイトルを開発していく流れになるのではないか。

黒川:オリンピックは権利ビジネスだからいつか一緒に盛り上がるのでは?と思う。

木曽:オリンピック組織委員会がeスポーツの知財だけに配慮するとは思えない。彼らのビジネスモデルとeスポーツのビジネスモデルは見事にバッティングしてしまう。ゲームパブリッシャーが放映権の一部を放棄するしか無いと思う。もしくはテトリスの版権が切れれば…もしくはjesuさん自身がゲームを作るとか。

質疑応答

最後に質疑応答をまとめます。

質問1,放映権と配信について:放映プラットフォームが変わると得られる利益が変わってくるが、どのように考えているか?

谷口:日本でも世界でも、ルール・基準自体がない。eスポーツの視聴率、ローカルテレビの視聴率と今のeスポーツのストリーマー、数字にどれだけ価値があるか。海外では数字を出している。いろんなプラットフォームで配信したときに、だいたいどれだけの価値があると出てくる。

江尻:テレビ的なものと配信、見る人の見方が違う。テレビはチャンネルを変えるのが当たり前で、CMがすぐに入る。しかし、配信は見始めたら5,6時間ずっと見る人が多い。テレビ側からするとあり得ない話。映画でも長くて3時間でダレてくる。配信は流しっぱなしで見る事もあるので、長時間配信は当たり前。むしろもう終わっちゃうの!という感覚すらある。視聴スタイルの新しい価値観を(ゲーム配信)は構築しているといってもいい。この新しいマネタイズの価値観がどこにリーチするかが問題。数字としてもっと出していきたいが、日本での放映権の数字はまだまだ低い。

木曽:そもそも既存メディアに対して放映権を売っていく意味があるの?って思っている。デジタル上で展開されていくゲームは自己配信に向いているコンテンツ。でもゲーム配信はファンが無料でみる文化が定着している。誰かにカメラで撮ったものを誰かに売っていく伝統的なビジネスモデルに執着することに意味あるの?と思う。有料チャンネルにして、入会してまで見る人がどのぐらいいるのか分からない。いろんなやりかたで直接ストリーミングから収益を得ればいいと思う。

質問2,オンラインでの視聴環境、オフラインでのイベントについて

実際にお金を払うオフラインイベントなどの日本での展開はどうなる?という質問。

木曽:現場でイベントに参加するのは放送を見るのとは違う価値で、そこにお金を払う人はいる。現場に行った人にどんな価値が提供できるかが大事。そこまではまだ成熟していない。まずは一部のファンで成り立つようにするといい。格闘技とか特にそうで、チケット価格は高額だけれどちゃんと売れる。すごく少数の強烈なファンで持っている興行という形もある。いきなりプロ野球とかの大きな器を目指さずに、まずは小さい観客で成り立つ分野を目指していく。

黒川さん:rizin(ライジン)というひいきのスポーツがあるけれど、30万円もするリングサイドの席はすぐ埋まる。限られた人に絞り、客層も大規模スポーツとは違う。

江尻:日本のゲームイベントはパブリッシャーが行う無料のPRのイベントという文化になっている。やるとしたら、どれだけ人を集められるかが重要になるし、まだまだビジネスモデルで成立する段階ではない。やるのなら小規模イベントで試行を重ねるべき。

谷口:海外の大会では何千円、何万円というチケット制が成立している。憶測だけど、パブリッシャーとうまく協業していると思う。日本でチケット制のオフラインイベントとなると、パブリッシャーさんがNGを出す。他社のもので利益を出すのはNGという認識が根強い。オフラインイベントではお客さんと一緒に実際にゲームをプレイしてゲームの面白さを伝えるようなイベントをしている。

質問3,オリンピックとeスポーツについて

オリンピック競技はただでさえ大量にあり、マイナーな競技も多い。ゲームがeスポーツ、マインドスポーツとして競技に認定されてもピストル競技などのマイナータイトルよりもさらにマイナータイトルになるのでは?お金だけ掛かって意味が無いのでは。ゲームがオリンピックに参加することの価値とは。

木曽:私の周りのeスポーツの人もオリンピックが世界一を決める大会にはならないと予想している。eスポーツ化する=版権ビジネス化するということ。第3社が権利を持っている大会が世界一を決める大会にはならないと思う。サッカーのワールドカップと同じように、オリンピックはワールドカップより下だけど、参加することに意義があるようにしていくと考えている。そうしないとビジネス自体が成り立たない。

江尻:オリンピック化にはあまり興味を持っていない立場。ゲームがオリンピックに参加することは無理矢理感が強く、他のスポーツに失礼では?と思う。マインドスポーツだから~とか他の種目と色々比べて、彼らも身体を動かしていないじゃないか!とケンカをする必要性はないと思う。相手方にしたらなんで俺らがやり玉にあげられるんだ!となるし、そういう議論が嫌で仕方が無い。相手に対して、スポーツに対して敬意を感じられないのがダメだと思う。むしろゲームはオリンピックに後から入って申し訳ないと謙虚に思わないといけない。ほかの競技とも比べずに、eスポーツ(ゲーム)のいいところを伝えて行けたらいい。

谷口:まだeスポーツの広告効果は低いのが現状。ただeスポーツはまだ若いスポーツ。プレイヤーも20代30代が中心。将来的にeスポーツが一般教育や義務教育で受ける柔道や水泳のような種目となり、「老若男女誰もがeスポーツを経験している」という状況になればオリンピックにが採用されるのでは?と思う。まだ歴史は浅く、焦る必要は無い。

感想

普段よりもたくさんの人が来て、eスポーツに関心が高まっていることを実感しました。私自身はゲームに反対する親の元で育ったので果たして本当にeスポーツは成立するのか?とまだ疑心暗鬼な部分を感じますが、世界全体として見るとゲームで盛り上がる現在の流れはとても歓迎するべき事で、ゲームが大好きな私としては嬉しく思います。

教養として、現代のエンターテイメントを学ぶのに黒川塾ほど最適な勉強会は無いと思います。業界の人に限らず、テーマに興味を持った人なら勇気を出して参加してみると普段メディアやニュースでは知り得ない生の現場の声が聞けていい刺激になります。黒川さんいわく、ミートアップという言葉嫌いだけど、つながりやコミュニティが出来たら嬉しいとのこと。黒川塾を通してなにかつながりが起こり、そこから新しい何かが生まれればいいとのことでした。今回のテーマもまた近いうちにまたやりたいとの意気込みを見せていました。

記事やメディアからも学ぶことができますが、ぜひ皆さんも参加してライブ感を体感してみてください。ライブで体感することで記憶や知識が体験としてずっと残ります。

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参考

黒川塾 63「海外eスポーツ事情とeスポーツの未来に向けて」 木曾崇(カジノ研究家)+江尻勝(DETONATOR代表) +谷口純也(eスポーツ エバンジェリスト) +黒川文雄 2018年9月19日(水)開催

 
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