ジャンプ流vol.5 藤巻忠俊 黒子のバスケ まとめ&要約 キセキの舞台裏に迫る!

ジャンプ漫画家の創作の秘訣を探るジャンプ流。今回は「黒子のバスケ」で有名な漫画家、藤巻忠俊さんの創作の秘訣を探ります。藤巻さんが漫画家になった経緯や、創作活動・クリエイティブ活動のヒントとなる知識をまとめました。

◆書誌情報
「ジャンプ流 vol.5 まるごと 藤巻忠俊」
集英社 2016/03/03

デビュー秘話

・小さな頃から絵が得意だった。小学生の頃には描いた絵が100円で売れたこともあったという。その時から絵を仕事にすることができるかもしれないという漠然とした意識はあった。
・中学生の時に同級生の存在がきっかけでマンガを描き始めた。彼から“マンガの描き方”という本を貰って、本格的にマンガを描くようになった。
最初は描けなかったが、日常的に画材に触れることで漫画家への意識が具体的になっていった
・高校生の頃、漫画コンクールで入賞したこともあって、手応えは持っていた。しかしマンガ家になることを親に反対されたり、周囲のみんなに流されたりでとりあえず大学を受験。その時すでに受かったら途中で辞めて漫画家になってやる!と思っていた
・大学に入ってからマンガを1本描いて、大学を辞めて持ち込みを始めた。意志が弱いので、普通に大学生活を過ごしちゃうと安易に就職という選択肢に流れちゃうんだろうな、と思った
・本当にやりたいマンガ家になるためには周囲に流されるのではなく、退路を断つしかないと考えて大学を辞めた。そこからはジャンプ編集部への持ち込みを繰り返す日々だった。
・ジャンプに持ち込んだとき、初代担当の斎藤さんに顔を覚えて貰わなかった。「誰だっけ?」の言葉が火を付けた。「この人に絶対顔を覚えさせてやる!」と変なスイッチが入った。
持ち込みの回数で勝負し、自分の可能性を切り拓くやり方が実を結んだ。
・決して順風満帆に進んだわけではなく、大学を辞めた直後は先行きが見えず、将来への不安と恐怖のあまり涙したこともあった
当時はレベルが低かったけれど、数をこなしてダメ出しを貰うことで何か得るものがあるだろうと意識して、たくさん持ち込んだ
・このネームはダメだろうな、と自分で思っていても、とにかく1回持っていった。このときの経験は今でもためになっている。
・当時はファンタジー系の作品を星の数ほど描いたものの、全部ボツになった。それをやめてスポーツ系を描いたら担当の斎藤さんのリアクションが少し変わった。
・編集者との衝突が糧になった。元々ファンタジー系作品を描くことが第一志望だったが、柔軟な姿勢で路線変更をしてスポーツ系で自分を試すことにした
・たくさん持ち込みをしたのは自分にどんなジャンルが向いているのかを知るため。
・自分が好きなジャンルと向いているジャンルは別。あのとき担当の斎藤さんがお色気マンガがうまいといってくれたらそっちに行っていたかもしれない。
・連載が決まったときはまさか自分の原稿が連載会議を通るとは思っていなくて心の準備が出来ていなかった。
・担当の斎藤さんと根本的に趣味が違うのと、バスケにもそこまで詳しくなかったから客観的な意見や感想をはっきり言ってくれたのが助かった。
連載中は休みなしで、昼夜逆転生活
・マンガ家になって嬉しかったことはファンや周囲の方のリアクションが貰えること。
自分の作品を客観的に見る事が得意。客観的な視線は作品を描く上で大切

技術面

・連載を始めた頃は絵にコンプレックスを持っていた。連載をしていれば大なり小なり画力は上がっていく
描くときには線1本でもうまくなってやろう、と全コマ100%全力で描こうという意識を持って取り組んでいた
うまくなってやろう、という意識を持ちながら数をこなしたことが上達に繋がった
画力の向上には数をこなすことが大前提で、その上で漠然と書き続けるのではなく何らかの「意識」を持つことが必要
・負けん気が強いことがプラスに働いた。マンガの連載は椅子取りゲームで競争社会。
・自分の中で節目となる目標を持つ。いくつまでに連載出来なければマンガ家を諦めるとか。締め切りを設けることで集中して目標に取り組める。
・マンガ家としてやっていくにも、マンガ家以外の体験が武器になる。色んなアルバイトをしていたことが良かった。
色んなタイプの人と出会って観察することが大事。自分と全然違うタイプの人物像を描こうとしたとき、そこに実感があるかないかでは大きく違ってくる(台詞やちょっとした仕草で見え方は変わる)
マンガは自己表現の最高の手段。描いている時はきついけれど、周りの人が喜んでくれるから頑張れる。

主人公は格好良く。理想のヒーロー像として描いていく
・クールキャラの対比として真逆のキャラクターを用意することで、コントラストで目立たせる。
説得力を持たせるにはある程度のリアリティが必要
・汗も大事な小道具。心情風景や時間の経過を雄弁に物語る要素。
・元々ファンタジーの作品を描いてきたので、その技法や演出をバスケマンガに取り入れている。
・リアリティには気を配る。たとえファンタジーな話でも100mジャンプする選手や火の玉を発射する選手は出てきてはいけないし、筋肉の動きやバスケの動作としての姿勢に嘘があってはいけない。
・マンガではどんなものでも作者が想像するままに描くことが出来る。だからこそ描くべきものと描かないものを明確に線引きをして、作者オリジナルの世界を作っていく。
わかりやすさを重視し、ルールを知らない人が読んでも面白いこと、途中から読んでも面白いことを1つの指針として描いている
・コマ割りは状況を把握しやすく。基本に忠実で、見せ場に変則的コマを割り当てる工夫を。
・8~9割はセオリーに沿った基本を行う。マンガというメディアの特性をしり、暗黙的ルールを知る(読者の視線は右上から左下に動くなど)。
・初心者ほど基本に忠実に四角いコマ割りをしたほうがよい。場面に応じた「コマの大きさ」で工夫をする。
・スピード感を出すのであれば人物は左に。読者が視線を移したときコマの右から左に動くため、もうそこには居ない感覚を作り出せる。
・ページめくりを有効に活かす。めくったときに奇襲されている場面など、驚きを要素を入れる。
・ストーリーは大まかな流れは決め、細部は流れに任せる。よく出来たキャラは勝手に動く。作者でも予想のつかない動きをすることがあり、その都度当初のストーリーを変えたりすることも。
・少年マンガはかっこよく、わかりやすく!が軸。
・アップでの描線は太くする。引きのコマは細い線で描く。
・斜線を使うことで動きが出る。斜線の線の方向は必ず統一する
・大ゴマや引きの絵では状況を分かりやすく見せる努力をする。見せるべき要素とそうでない要素をきちんと整理する

DVDよりメモ

・自分の中で色々とチェックポイントがある。一発で線画が決まることは少ない。
・下書きはラフに行う。あんまり形を決めないで、最低限スポーツしている人物として不自然の無いように、シルエットを整えていく。間違えたらホワイトで消せばいいので、修正前提でジャカジャカ描いていく
・漫画用のGペンは線が描ける方向が決まっているので、それに合わせて描いていく。
光源、どこから光が来ているかを意識する
目が一番重要で、ウェイトが掛かるところ
・全部アナログ作業で制作している。
・「こういう絵が描きたい」というシーンがあって、そこに向けてストーリーをスタートする。
・「3×3 EYES(サザンアイズ)」という作品の画集が衝撃的だった。一番最初に買った画集的な作品。

・ざっくりしたプロットノートを作っている。大筋を決めたあとは細部まで一気に描いていく。
・ジャンプは生き残るのが厳しいが、その分チャンスもある。ジャンプっ子だったので、自然にジャンプに応募した。

マンガ家を目指す人たちへ

・技術的なことよりも、なんだかんだで大事なのはガッツ、根性、体力
自分で過去のマンガを見返した時、つたなくて見ていられないほどでも、つたない中でも必死にはやったんじゃないかな
・色々勉強するのは大事だけど、大元となる気合いやガッツは持っていて欲しい

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