ジャンプ流 vol.25 荒木飛呂彦 ジョジョの奇妙な冒険 要約&まとめ

長いことまとめてきたジャンプ流も今回で最終号。ジャンプ漫画家の創作の秘訣を探るジャンプ流。今回は「ジョジョの奇妙な冒険」で有名な漫画家、荒木飛呂彦さんの創作の秘訣を探ります。荒木さんが漫画家になった経緯や、創作活動・クリエイティブ活動のヒントとなる知識をまとめました。

書誌情報 
「ジャンプ流 vol.25 まるごと 荒木飛呂彦」 集英社 2016/12/31

デビュー秘話

・両親ともに絵が大好きで、マンガも含め絵に関連する本をたくさん買っていた。そんな環境だったので、マンガは子供のころから読んでいた。
・ジャンプも創刊号から読んでおり、マンガ好きの友達も多く、他の少年マンガ雑誌を分担して回し読みをしていた。
絵も描けば描くだけ褒めて貰えた
・投稿を始めたのは中学時代。
・マンガに対する意識が低かった時代。マンガを描いているだけでイケていない空気があった。マンガを描いていることは人には言わず、こっそり教科書の下で原稿を描いていく感じだった。
マンガを描くことは凄く魅力的で、辞めようとはちっとも思わなかった描いていて楽しいし、音楽などに比べて自分の持つ世界観を一番出しやすかった
・当時のマンガ業界もイケイケで、いろんなタイプの名作や新しい表現方法をみんなが積極的に模索している時代だった。
・同世代のゆでたまご先生がジャンプでヒット作を出しているのを見て、これはもう勉強している場合じゃ無い、自分も急がねば!と焦った。
商業マンガ家としてやっていくには、作品を描くことと、認められること、この2つの闘いに勝たなければならない
・マンガ家を目指すに当たってネガティブな感情は無かった。マンガ家という仕事に就くことを賭けのように捉えるのではなく、マンガで成功するビジョン、道筋というものが漠然と見えていた
・登山での道のりを示す地図、跳び箱を超えていけるような確信。そんなものがマンガに対してあり、妙な自信めいたものを抱いていた。
・当時描いていたのが、西部劇や推理小説の短編のような世界を31ページの中に展開させたものだった。
・少年誌らしいスーパーヒーローを描こうという気持ちはあまりなくて、漠然と他の作家とは違うものじゃ無いとダメだろうと思っていた。
・その結果、自分が興味を持っていた人間同士の駆け引きを作品のテーマに据えて描いた。
・当時の受賞作品と自分の作品の何が違うのかを知る為に集英社に持ち込みを始めた。
・マンガについて勉強した時期では、映画を観るときもその世界に生きるキャラクターをより重視してみるようにした年に200~300本ぐらい、全部メモして分析をした
既存のマンガもたくさん分析をした
・当時は今ほどにはマンガを描く事に関しての情報や資料が無く、Gペンの使い方といったテクニック本しか無く、それでは足りなかった。
・そこで「映画術 ヒッチコック・トリュフォー」というヒッチコックが作劇術を語る本と出会った。自分の好きな映画監督デ・パルマやスピルバーグもヒッチコックを参考にしたといい、カット割りやプロットの技術はとても勉強になった。

・絵柄についてはかなり悩んでおり、遠くからでもその先生の絵だと分かるような絵柄をずっと探していた
・「魔少年ビーティー」はちょうどその頃の作品で、好きだった白土三平先生の絵柄の影響を受けている。魔少年という名前でなかなか連載会議を通らなかったものの、1年半ぐらいの期間は研究や準備で必要な時間だったかもしれない。

「魔少年ビーティー」


・原稿が間に合わなさそうなときは電車で4時間掛けて集英社に行き、会議室で缶詰になったりもしていた。
・「バオー来訪者」の連載が決まってから東京に出てきた。

「バオー来訪者」


・80年代はバブルのため、非常に刺激が多かった時代。時代の特徴的なアイコンを作品に取り入れて個性が出せないかを真剣に考えていた
・その延長線から生まれたのが「ゴージャス★アイリン」で、読む人の記憶に残るよういろんな冒険をした作品。

「ゴージャス★アイリン」


・「ジョジョの奇妙な冒険」は当時シュワルツェネッガーやスタローンのようなマッチョ系スターが活躍する映画が流行しており、究極の肉体とは?を突き詰め、そこに善と悪の対決や究極の強さといった少年マンガらしいテーマを加えて描いた作品
・同時に印象に残る絵についても研究を続けていて、イタリア旅行に行ったとき彫刻の「ひねる」ポーズをみてこれだ!とキャラクターの造形に取り入れた。
・ミケランジェロの彫刻作品などは、実物を見るのと本物を見るので全く違う。ポージングについても実際に立体として存在するものを見ないと得られない何かがあった。
・誰も描いていないポーズを追求するために、自分の鏡の前でポーズをとったり、ヨガ教室に取材に行ったりもした。
・ジョジョは人気作となり、8部まで続く作品となっている。部が変わるごとに、新鮮なものにしようという意識を保ち、テーマは時代の空気を感じながら自分で「いい!」と思うものに挑戦している
・連載を続けて自分で描けるとは思ってもいなかったテーマや人物が描けるようになったり、自分で描いていて新鮮に感じるアイデアが自然に湧いてくるようになった。そういう変化を書き手自身の変化として楽しめるのがマンガの楽しさ
・ジョジョを描いていると、世界から闘いが無くなることは無いのだろうな、と思えてくる。戦争以外にも恋愛や、人と人との間には常に闘いが生まれている
・だからこそジョジョはバトルを一番大切な要素として扱っている。戦う意志のないキャラクターは極力出さず、自分の正義に従って、他者や運命とぶつかり合える人物を作り、ストーリーを構築していく。そうやって常に前に進もうとする人間の姿を描くのが少年マンガ
・ルーヴル美術館のバンドデシネ(フランスなどのマンガ芸術)と比較すると、日本のマンガは1枚絵が連続するものではなく、ずっと連続した読み物となっている。読み手が疲れないよう濃い部分は細部までこってり描いて、あっさり描くところは軽いタッチで描いていく。全体を計算して創るのがマンガ
エンターテイメントをこれからも作っていきたい
変化する方が自然であり、楽しい

技術面

・部が変わるごとに新しいテーマを設定し、常に同じところにとどまることなく今までやったこと長い領域に挑戦していく
挑戦を続けるためには、常にインプットを辞めないことが大事
・取材では現地の細かな体感を大切にしている。
・映画や音楽、TVからも今の感性を取り入れている。
・作品の打ち合わせでは雑談が重要で、そこから興味のあることを拾い上げ、吸収していく。
マンガなどを研究して、物語を読ませるテクニックを研究していく。それは蓄積され、マンガを描くための地図となる
一番重要なのはキャラクター。映画でも物語より人物を見に行く
・キャラクターの設定では、その人物のクセや学歴、両親に至るまで考え、その人がどういう過去を背負ってきたか掘り下げることでキャラの行動、動機付けを骨太なものとしていく。
マンガの4大要素は「キャラ」「世界観」「ストーリー」「テーマ」の4つ。バランスが良ければ読みやすく、どれか一つに特出していれば特徴的といえる。「こち亀」はキャラメインで、「AKIRA」は世界観がメイン。
キャラと世界観からストーリーが生まれ、その後ろにテーマがある。それを「絵」という最強のツールで表現していく
・マンガに個性を与えるための奇妙なポーズはリアルタッチの画面にファンタジー感をもたらす効果もある。
16世紀のルネサンス美術から着想を得ている。
・彫刻は実際に見ると存在感がまるで違う。体感できる、記憶に残る空間性を自分なりに解釈して取り入れている。
・スタンドの着想はローマ旅行のボルゲーゼ美術館で見たアポロとダフネ像から得ている。

アポロとダフネ像


・ファッションの着想は海外ブランドのエッセンスや時代の最新を表現するために一種奇妙さを持つ前衛的なデザインになっている。ファッションでいう”モード”にアンテナを張っている。
配色は常識に囚われない。色は絵の中で変わっていく。空でさえ青では無く赤で塗ったりと、自由自在。
・読者の手を止めないためにリズムを大事にしている。リズムはコマ割りで作っていける文章と同様にコマの大小やアップロングというカメラ距離など。途中で引っかかるセリフや違和感を加えて興味を抱かせる工夫もしている。セリフは文法の正しさよりもストーリーのテンポを邪魔しないセリフを優先している
・特徴的なセリフはほとんどが“天然”で生まれている。
コマ割りはマンガを研究して身につけるのが一番
・擬音は映像作品における効果音と同じ。
「面白い」と感じたものを研究し、自分だけのものを作り出していく。自分が「描きたい」ものを見失わず最後まで描ききる

DVDより

・コマ割りはカメラで撮っているような画面の流れを意識したい。一つの流れの中でカメラの小回りをして行きたい。原稿にアタリを入れていくのは、まるでカメラで撮影しているようなイメージ。
・ネームでは何となくだから、実際に描いてみないと分からない部分がある。ライブ感がある。
・人物の頭部をうつむかせるだけで全然違う。
絵の中に空間を作りたい。読者にその世界に入っていって貰いたい。絵には空間性が必要。画面の視点がどこにあるか、人物のどこに読者がいるか。駐車場のシーンであれば、その空間の奥行きを表現し、あたかも読者がそこに居るような感じを演出したい
・立ちポーズに気品が欲しい。去って行くシーンもダラダラ去っていくのでは無く、カッコよく去らせたい。ハードボイルドな感じ。美学。
・人物がぽつんと残された感じでも、まっすぐにただたたずんでいるよりは、ちょっと横を向いて去って行く方が効果的。
・描いていて楽しいのは、「姿勢の方向」で意味や表現が変わってくるところ。顔でも微妙にちょっと傾きが違うだけで意味が全然違う。猫背にするときもある。それだけで何かしら意味を伝える事が出来るのが楽しい。
人体のパーツは全部繋がった流れがある
・表情の表現では目の重要性が言われるが、口元も重要。ちょっとの線や点を加えたり確度を変えたりするだけで笑ったり、怒りといった感情が表現できる。その変化が面白い。
・マンガはなんだかんだで絵があってのものだと思う。絵を描いているからマンガ。
・一目で分かるシルエットが重要。遠くに居ても分かる感じ
・劇画調だけど、マンガとしてのデザイン性や象徴性を意識して気をつけてデザインは作っている。
・敵役も含め、シルエットが被らないようにするのが基本。キャラはほとんど着替えず、ずっと同じ服を着ている。脱がなくていい。服もキャラクターの一部として作っている。
・二人が並んだ時、10cmの身長差はほとんどマンガでは変わらない。気をつけないとドンドン小さくなっていく。作画をして行くなかで、ライブ感で頭身は描いていく。

・「これじゃない」と感じたら、ペン入れした後でも直していく。
・マンガは面積が決まっている。映像のように挿入などが出来ない。それがいつも嫌だった。特に少年ジャンプはカットもページも増やして貰えない。
・19ページというマンガを読むリズムがぼくと合わない。どう書いても21。自然に21になる。2ページいつもどこを削ろうか頭を悩ませてしまう。週刊は厳格に19ページ厳守。2ページ足りないのが毎週の悩み。(19ページの理由は36ページずつ印刷しているから。)

・ペンは何でもいい。サインペンで描きにくいところを先にやったりしている。
・サインペンの弱点は同じ太さであることと、消しゴムに弱いこと。本当はサインペンで全部描きたいぐらい。
・使用しているインクは墨汁を薄くしているもの。

・絵柄について。30年近く画業をしてきて、自然に変わっていく。余り同じものを描かないようにはしている。時代により、ちょっと軽くしようとか、重い絵にしようとかは意識している。ポイントは陰影の入れ方の違い。昔は勢いがあり、重量感を重要視していた。今は白いコマを増やし、軽やかな箇所もある。
・耐水性サインペンやマーカーみたいなものでベタをつけている。
・陰影で立体感、距離感を描き出す。
・ペンはあくまで道しるべを付けるのみ。メインは陰影。影で人物を見せていき、画面を締めていく。
・影が強く入るところにベタを入れていく。

・眼球の丸さもしっかり立体を意識して表現している。サインペンもフル活用。
・キャラの表情の微妙さにも気をつける。ちょっと付け足したり変化させたりしただけで笑ったり怒ったりする。そういうところが難しく、楽しい。

・重力を意識し、体重がどこに掛かっているかを意識する。
絵の中に空間、空気感、立体感を作り出すことを意識する。

・少年マンガは太く眉をかく決まりがあり、細くするときに凄く苦労した。描いてて気持ち悪い。眉が細いと悪役とか、脇役みたいな気分になっていく。
・時代が流れ、細い眉の主人公でも受け入れられるように。

・顔料インクの筆ペンを使う。筆は腱鞘炎とかになりにくい。表情が豊か。ペンよりも筆でこのまま描きたいぐらい。
・絵を描き込んでいくのは、楽しくて無限にやれる工程。どこで辞めるのかは気分と作者次第。絵は無限に描ける。描いていると愛情が湧いてずっとやりたくなってしまう。
・ずっと描き込んでいきたい気がする。それが絵なのかも。

・印刷されたのと見比べて、線を太くしようか細くしようかと考える。
・効果線をいれるとまた違ってくる。印刷された雑誌版と見比べたりして、罫線とか実際の仕上がりをみて研究して次回の原稿に活かしていく。

・馬が好きで、馬が守り神だと思っている。

・人物で流行らないが、自動車とか日常シーンでリアリティが欲しい場合、写真を取り込んで加工したものを使うこともある。
・エアブラシを背景に使う時はイーゼルで。カラーインク、リキテックスで色を塗っている。

・取材は自分で写真を撮っている。取材旅行も時間を作る。1週間ぐらい原稿を描き溜めしといて、年に2回ほど10日〜2週間ぐらいの旅行休暇を入れる。
・椅子は腰に負担が掛からないものを使う。
・ケント紙では無く、変色しない画用紙的な紙を使っている。耐水性という理由から証券用インクも使ったりしている。
・シナリオを描いてからネームに移る。

・長く続けていく内に、この内容は何ページ描けばいいのか分かってくる。
・気分では動かない。気分が乗ったら仕事をするでは連載は出来ない。気分に関係なく、仕事の時間でしっかり仕事をやる。
・超トップシークレットのノートを持っている。アイデアを書き留めるノートで、持ち歩いている。
・新キャラは先に自分で分かる形でデザインして清書していく。キャラクターのシルエットから考えていく。少年マンガは手首にはめるものが欲しい。上と下のバランスをみて、一目見てどのキャラだと分かるのが重要。
・画材は耐水性にこだわっているだけ。そのまま色が塗れるから。
・美の基本としてお気に入りのモデルの写真を飾っている。

・ジャンプで連載することは、なんでマンガを描くのかに繋がっている。マンガは読者や世間の人に新しいアイデアとか絵や考えを見せるために書いている今まで無かった文化とか世界を見せるためにある。少年ジャンプはその伝統が強いので、それを目指して描いている。

マンガ家を目指す人たちへ

・自分がジャンプに連載していたときは、若い雑誌だった。これからジャンプは伝統が重くのしかかってくる。新しいものを読者に示すぞ、という精神。そこを目指して欲しい。

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