悩みに関する古典的解法書 「道は開ける」デール・カーネギー まとめ 要約 考察

道は開ける

道は開ける

私は自己啓発はどれか古典を数冊読めば良いと考えていて、そのうちの一冊に入るのがデールカーネギーの「道は開ける」です。書店の自己啓発コーナーには必ず置いてあると言っても良い本書。特に3月や4月は環境の変化などで落ち着きの無い心境を抱える人も多いと思います。本書から学べる悩まないためのヒントを要約+考察しました。

1.今日という一日の区切りで生きる。

「今日だけは頑張ってみよう、今日だけは乗り越えよう」と今日を一区切りにして行動を考えます。今日という枠に思考を制限することで永遠に続くかもしれない苦難や悩みから目の前の行動に集中することに切り替えることができます。

「明日以降のことは配慮すべきだが、心配する必要は無い。」「過去と未来を鉄の扉で閉ざし、今日一日を生きる。」

2.起こりうる最悪の事態を事前に想定して、受け入れる準備をしておく。

悩みは尽きないものですが、その多くは最悪の事態を避けよう、どうにかしようという不安から来ています。発想の転換として、最悪の事態を想定することで、実際にその事が起こったときの心の備えをする事が出来ます。最悪の事態を受け入れた上で、その最悪の状況からどう立ち直るかの具体的道筋が見えてきます。実際には心配事が現実となることは非常に少ないですが、万が一の最悪の状況を想定しておくことで事前に心の準備をすることができます。

3.悩みや懸念は「見える化」してしっかり対処していく。

悩みの種や今の状況を紙に書き出し、それに対して自分がどう対処できるのかを冷静に見つめます。頭の中でぐるぐる悩み続けるのでは無く、自分の思考をちゃんと「見える化」して整理することです。「この問題に対して自分は今どのような行動を取っているのか?それは効果的に働いているのだろうか?」を書き出していきます。

臨床心理学で言う認知行動的な方法です。何に困っているか書き出すだけで思考のモヤモヤが整理され、それだけで悩まないでいられることも。ただ、この方法は自分と向き合う作業なので心理的先延ばしが起こりやすいところが欠点です。実際に紙に書き出すことが良いと分かっていてもできない人が多いので、そうした人は信頼できる誰かの助けを借りてみるのも良いと思います。

私は日記を書くのが習慣になっているので、こうした手法は得意。実際にやってしまうとかなりスッキリする方法です。内省的で考えすぎな人ほど効果的です。

4.悩みを追い払うには忙しい環境に身を置く。

人が最も悩みを抱えやすいのは、実は暇なとき。悩みの悪魔は暇の時間を付け狙って心に忍び込んできます。良からぬ考え、ネガティブな感情、どうでも良いことや気患いから脱却するには、何か作業で忙しくしていることが重要です。考えても解決出来ないのであれば、悩んで消耗するのではなく現実逃避のアクティビティ(ゲームや映画)も有効です。

本人にとって多忙であることは生産的な行動と認識しやすく、実際には生産性や仕事ができることには関係しないのですが、悩んで消耗するぐらいなら何かに没頭する、仕事や雑務をこなすことが有効になるでしょう。
参考→【まとめと要約】集中力に関する洞察を得られる 「大事なことに集中する。」カル・ニューポート ダイヤモンド社

5.小さなことに煩わされない。

人生は余りにも短く、小事に煩わされている暇は無いともいえます。小さなストレスや悩みは積み重なって大きなダメージになるので、そうした小さなストレスに気づき、「今自分はくだらないことで悩んでいないか?」と自己客観視をすることが大事です。一年前自分が何に悩んでいたか、大部分は忘れていることが多いでしょう。小さな事にくよくよしないで建設的な行動を起こしていくことが重要です。

現代でいう小さなストレスはスマホやネット、SNSなどで注意が散漫するマルチタスクでしょう。こうした小さなストレスが脳に負担をかけ蓄積していきます。

6.不可抗力には逆らわず、受け入れる。既に起こってしまったことは受け入れる。

自然災害や就活での失敗など、自分がコントロール出来ない部分での不幸や失敗は気に病む必要はありません。自分で最善を出したのであれば、結果はどうであれ後悔して過去を気に病む必要はないです。避けられない失敗や運命を大事にとらえていつまでも執着するのではなく、柳に風のようにしなやかな心で目の前の事態を受け流していくことが大事です。過去のことにエネルギーを浪費するのではなく、過去の経験から学び、それを今に活かしていくことが重要です。

7.考えていることがその人を規定する。

常に考えている事、今考えていることがその人の人生を決定づけます。

「明けても暮れても考えている事柄、それがその人なのだ」ラルフ・ウォルド・エマーソン
「人は起こることよりも起こることをどう評価するのかによって傷つくのだ」モンテーニュ
「我々の人生とは、我々の思考がつくり上げるものに他ならない。」マルクス・アウレリウス「自省録」

こちらはキャロルデュエック博士のマインドセットとも繋がる話です。

8.意識的に元気な振る舞いをする。

行動から気分を変える方法です。これについてはTestosterone著の「筋トレが最強のソリューションである」を読むと納得すると思います。元気が出ない時ほど、自分は最近運動しているか?と考えてみましょう。

9.仕返しや嫌いな人の事については考えない。

自分を嫌う人や批判する人、彼らについて考えたとしても、彼らの事を変えることは出来ないし、考えるだけ無駄です。同様に仕返しや復讐もエネルギーの無駄です。そのエネルギーをより生産的に使い、他者の事についてくよくよしないことが重要です。アドラー心理学で言う課題の分離に通じる考えですね。

10.感謝を大切にする。

感謝の念を持ち、相手からの見返りを求めないこと、相手に期待しないことが無駄に悩まないために必要な心構えです。自己憐憫や憤慨の気持ちになるよりかは、利他的行動や感謝の感情を持つ事で今自分の持っているものに目が行くようになります。私たちはつい足りないもの、自分が人と比べて劣っている部分にばかり意識が向きがちですが、感謝を意識することで「実際は多くのものを既に持っている」「実は今とても恵まれている」という考え方に切り替える事ができます。感謝の念そのものの効果というよりも、感謝を念を持つことで自分がいかに恵まれた環境にいることを気づく力が悩みを撃退する、ということでしょう。

本書はキリスト教の影響が随所に見られますが、感謝の項目についてはその影響が色濃いです。

11.自己を知り、自分らしく生きる。

自分に素直に、自分らしく生きることです。嘘をつかず、本来の自分で生きましょう。他人と違うのはむしろ自分の個性であると思いましょう。特に日本の学校教育では個性はないがしろにされ、就活の場面では自分とは違うものになりやすいです。自分を知ることの重要性、自己分析をして自分を知りましょう。

12.不運や逆境から学ぶ。

今自分が苦しい状況に置かれているのなら、その状況から何が学べるのか、この状況を乗り越える事で自分は何を手に入れる事が出来るのか?を考えます。人生万事塞翁が馬とも言いますし、マイナスをプラスに、欠点を長所に出来ないか考えてみましょう。

「どん底まで落ちたとしても死にはしない。そこから這い上がれば良いだけ。」

13.他人や他者のために何か出来ないか考える。意識を他人の気持ちにフォーカスしてみる。

悩みの多くは自分に注意や関心が集中しすぎているから起こるもの。人は基本的に自分のことしか考えていません。自分のことばかりに向きがちな意識を他人や自分以外の存在に向けてみることで共感能力を高め、自分が他人に何ができるかを考えることができます。他人からの感謝は仕事のやりがいにもつながりますし、他人からの目線で自分を見つめ直すことでこれまで見えなかった自分の側面が見えて来ることもあります。

14.批判を気にしないために。

建設的な批判は成長に繋がりますが、攻撃を目的とした批判は隠れた賛辞であることが多いので、気にする必要はありません。これらの誹謗中傷は自分よりも優れた人を下に置きたい嫉妬からきています。相手が自分から「あなたよりも劣っている」ことをアピールしているようなものです。

「死んだ犬を蹴飛ばすものは居ない。相手が自分より大きくて、優れた存在だからこそ脅威と感じて蹴落としたくなるのだ」「相手は非難によって優越感を得て、野蛮な満足感に浸る。」

辛辣な批判や悪口はただの憂さ晴らしやストレス解消、注目を浴びるためになされていることも多いです。自分が何かしら影響力を持ったとき、注目を浴びているからこそ批判が来るので、批判が来るということは自分が何らかの力を持っていることの証拠になります。

15.非難に傷つくか決めるのは自分自身の心。

非難が来たとして、それを気に病むかどうかを決めるのは自分次第です。人は誰でも四六時中自分自身のことばかり考えています。だからこそネガティブな意見に敏感になるのですが、多くの人は他人の事など知ったこっちゃないというのが本音です。

自分の心で正しいと感じているのであれば、何も他人の意見に自分の意見を合わせたり、振り回される必要はありません。先の話ともつながりますが、あらゆる批判を無視するのでは無く、不当な批判は無視しましょう。何かをしようとする時、「何か言われるのでは無いか」と恐れて行動出来ない人も多いですが、大きなことをしてもしなくても悪口を言われるし、生きている以上陰口からは逃れられないので、それならば自分の心で正しいと思う事を信じてそれに従いましょう。

「「人の上に立つ限り、非難を免れることは不可能だ。気にしないようにするしか手は無い。」その時以来、私は、いつも最善を尽くすことを心がけ、あとは古傘をかざして非難の雨で首筋を濡らさないようにしている。」

自分を信じ、最後までやり抜く決意。ちなみにこの他者の意見や感情を気にしないで批判をスルーできる力は、人の性格の暗黒面ダークトライアドの一つサイコパス的特質がもっともプラスに働くことが示唆されています。→参考「動じない人の正体「サイコパス秘められた能力」 ケヴィン・ダットン(著) まとめ 要約 レビュー

16.結局は自己責任であることを受け入れる。

今ある苦境や問題は結局は自分の振るまいがもたらした結果である事が多いです。人はそもそも過ちを犯すものです。自分も間違った振る舞いをする事を認め、冷静にそれと向き合い改善して行くことが重要です。売り言葉に買い言葉で非難に反応してしまったとか、誰からもよく思われようとして結局は誰からも好かれなかったことなど、人として生きる以上うまくいかない場面はあって当然です。

これは自分をありのままに受け入れる話とも通じ、失敗を許さない完璧主義ほど現状に不満を持ち、自己批判をして自分を追い詰めます。セルフコンパッション能力を鍛えて、自分を許し、失敗や挫折を含めた完璧ではない自分の存在を受け入れられるようになりましょう。

17.疲れは精神的疲労から来ている。擦り切れる前にちゃんと休む。

疲労は驚くべき速度で蓄積しますが、その原因は心配事や悩み事など精神的緊張が元となっていることがほとんどです。実際の肉体労働は考えられているほど人の体にとっては負担になりません。深刻な不調や疲労、倦怠感をもたらすのは、悩みや挫折、後悔といった精神的な緊張です。そのためこうした疲れが溜まる前にきちんと休息することが重要です。

一日の終わりに激しい疲労感や神経がピリピリするような擦り切れ感があるのであれば、その日は生産性を発揮できていない証拠です。ちゃんと休息を入れたり、気分転換を取る時間を加えたほうがむしろ効率はよくなります。本書ではイギリスの政治家ウィストンチャーチルやアメリカの実業家ジョンロックフェラーを例に出し、彼らは昼寝を欠かさず、疲れが蓄積する前にちゃんと休んだから長時間働けて疲れ知らずだったと言います。

休息とは何もしない=罪悪感を感じる行為では無く、回復という積極的な行為です。休むことも仕事のうちだといえますね。今でいうマインドフルネスや瞑想、自然の中での散歩といった軽い運動、デジタル断ちをするのも良いでしょう。休み上手が仕事上手。気分転換ができる遊び上手が仕事上手につながります。

現代に多いマルチタスクも作業の切り替え(選択的注意の切り替え時)にかなりの人の集中力を奪います。マルチタスクを避け、優先順位を決めて問題を解決していくいきましょう。疲労は驚くべき速度で蓄積します。疲れる前にちゃんと休みましょう。

最後に不眠症については不眠症自体よりも、不眠症に悩むことそれ自体が悪さをしています。日中に肉体をちゃんと動かし、生産的に活動することが重要。なお、睡眠に関しては西野精治著「最高の睡眠」がエビデンスに基づき、睡眠について包括的に学べる一冊となっています。

総評

本書は著者デールカーネギーが古今東西の「悩み対策」に関しての記述や事例をまとめ上げた悩みの解法書の古典です。私も今では統計的(科学的)手法を踏んだエビデンスベイスドの心理学に傾倒していますが、その前はこうした自己啓発にどっぷりと浸っていました。本書を初めて読んだ15年前ぐらいは凄く感動しましたが、今になって読み返すと、まぁ当たり前の事だよなぁと思います。それだけ自分が成長したって事ですかね。

本書のユニークなところはたくさんの悩みの解決に至る考え方や事例を紹介しているところです。この中から自分に合いそうな考え方を採用すればいいので変に身構える必要がないので楽。古臭さや時代を感じさせる表現も所々にありますが、本書で学べる本質は時代を超えたものがあると思います。だからこそ古典としてちゃんと残っているのだろうな…。以前まとめた「7つの習慣」は小難しい記述と分類であたかも難しい学問(であるかのような教義性)を装っていてセミナー商売の匂いがするから好きじゃ無い。本書は読みにくさはあるものの優しく平易です。親戚の優しいおじさんが悩み解決の方法を提示しているかのような親しみやすさがあります。

自己啓発の弱点である「それができたら苦労しないよ」という部分も感じられますが、それでも包括的に悩みに対する解法を示した本は貴重。悩みを解決するヒントを提供してくれることは間違いありません。

結局は「本当に悩みを解決したい」という決意を持つことが重要です。悩みを解決出来るのは自分自身にしかできませんからね。

著者D・カーネギーの著作はCDブック等も出ていて、私も昔図書館で借りたり、iTunesストアで英語版のオーディオブックを買ったこともあります。しかし、本の内容をそのまま朗読しているので、冗長に感じられると思います。彼の教えは本記事でまとめたように、とてもシンプルで今すぐにも実践できるものばかりなので、ぜひピンときたものから実行に移していきましょう。

■英語版 平易なので英語リーディングの練習にも最適。

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