人間は社会的動物で、どうしても集団・組織でのストレスは逃れることはできません。経済学者のアルバート・ハーシュマンは、人が満足のいかない状況に対処する方法を4通つのタイプに分類しました。
不満の対象が仕事であれ、対人関係であれ、政治であれ、すべての対処法は「離脱」・「発言」・「粘り・忠誠心」・「無視」の4パターンになるといいます。
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状況対処の4つのタイプ
「離脱 exit」
離脱はその状況から完全に身を引くことです。別の環境に身を移します。
「発言 voice」
発言とは、その状況を積極的に改善しようと行動することです。
「粘り・忠誠心 loyalty」
粘りは歯を食いしばって努力することですが、要は不満を抱きつつも現状を受け入れることです。最初は我慢して会社に忠誠心を尽くすものの、自分を押し殺していくうちに隷属関係になってしまい、自分が死ぬので長続きしません。
「無視 neglect」
無視は不満のある現状にとどまるけれども、何も現実を変えるような努力や行動をしないことです。適度にクビにならない程度に仕事をしたり、嫌な相手がいないときに趣味を見つけて距離をとったり、問題そのものから背を向けることです。
コントロール感覚とコミットメント感覚が行動を決める
この中のどの対処法を選ぶかは、その人が持っている「コントロール感覚(状況の決定権が自分にある気持ち)」と「コミットメント感覚(状況に積極的に関与したい気持ち)」が関係しているとのこと。自分が組織をコントロール出来ると感じているほど組織を向上させるべく「発言」が増え、アルバイトなど組織での身分が下なほどコミットメント感覚が低く、「無視」や「粘り・忠誠心」戦略をとりやすくなります。
最も組織を向上させるのは「発言」ですが、これが難しい。組織の中で特異性信頼も必要になります。現実の場面では特に直属の上司の影響が強く、状況を変えるための現実的な選択肢は「離脱するか」・「発言するか」になるでしょう。自分を保つために、発言よりも離脱を優先した方がいい場合もあります。
日本では嫌な状況でも我慢し続けることが美徳とされていますが、それでは限界があるのではないでしょうか。一度しかない人生、自分の声を大切にしつつも、リスクポートフォリオをバランス良く保ち、必要であればいつでも立ち去れるために準備をしておくことが重要です。具体的には収入源を一つに絞るのではなく副業をしたり、自分の軸を一つの集団や組織に依存しすぎないようにするのがいいのではと思います。
参考・出典
・「ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」が出来る時代」アダム・グラント (著)シェリル・サンドバーグ (解説)楠木 建 (監訳) 三笠書房 (2016/6/24)
・Caryl E. Rusbult, Dan Farrell, Glen Rogers, a nd Arch G. Mainous III, “Impact of Exchange Variables on Exit, Voice, Loyalty, and Neglect: An Integrative Model of Responses to Declining Job Satisfaction,” Aca demy of Management Journal 31 (1988): 599–627; Michael J. Withey and William H. Cooper, “Predicting Exit, Voice, Loyalty, and Neglect,” Administrative Science Quarterly 34 (1989): 521–39.
・アルバート・O・ハーシュマン(Wikipedia)