ジャンプ漫画家の創作の秘訣を探るジャンプ流。今回は「トリコ」「世紀末リーダー伝たけし!」で有名な漫画家、島袋光年さんの創作の秘訣を探ります。島袋さんが漫画家になった経緯や、創作活動・クリエイティブ活動のヒントとなる知識をまとめました。
「ジャンプ流 vol.16 まるごと 島袋光年」 集英社 2016/08/18
目次(Contents)
デビュー秘話
・ジャンプを読み始めたのはTVアニメをしていた「キン肉マン」がきっかけ。
・キン肉マンは初めの頃はギャクマンガで、ごく自然にジャンプに憧れるようになった。
・初めて原稿用紙とペンでマンガを書き上げたのが中学3年生の時。月例賞ホップステップ賞に投稿した。それから高校生になってもずっと描いて月例賞に投稿することを続けていた。
・高校2年の時に自信作が出来て投稿したのだけれど、次の号で最終候補になっていた。まったく予期していなかったこともあり、それまでの人生で一番嬉しかった。それからは本気でマンガ家になりたいと思うようになった。
・高校卒業後、自分でお金を貯めて進学すると嘘をついて上京した。親戚の家に世話になりながら、密かにマンガを描いて持ち込みを始めて行った。
・最初に持ち込んだのが不良モノのストーリーマンガ。描きたいものがあまり定まってなかったので、とにかく思いついたものを描いて持っていった。ストーリーマンガのつもりで描いていたのだけれど、担当の矢作さんからギャク部門の赤塚賞に出すことを薦められ、「発進!!友達いないいない部」が佳作に引っかかって、更に「出陣!!ナルト高校剣道部」で本誌デビューを果たした。この時期、担当にネームを見せる上でダメだったネームを直すことはせず、新たに別のネームを作ることで次の打ち合わせに持っていくということをした。
・最初から面白いものを直してもっと面白くするのならいいが、面白くないものを直してちょっとだけ面白くしても、いいものにはならない。新人時代から今も一貫してそうしている。
・予定していた連載作品が掲載できなくなった場合の代原発生のために、読み切りの1本を担当者に言われて描いていた。これが大ヒット連載の「世紀末リーダー伝たけし!」の読みきり版だった。
・一度見たら忘れられないあの変な顔だけは昔からずっと考えていた。小学生などの設定は後付けで。それまで何を描いていいのかわからない時期が続いていて、描きたいキャラクターもフワフワしていた。たけしというキャラクターを描いてみたら、こんな話もいける、あんな話も描けそうだ、と色々浮かんできた。連載としてやれそうだと手応えを感じることが出来た。
・チャンスを掴んだものの、アシスタント経験が無いため苦労の連続だった。最初の5,6話でネタ切れになってしまい、そこからしばらくは大変だった。
・初めての連載で右も左も分からず、自分にアシスタント経験が無かったため、どうやってアシスタントさんに作業をお願いすればいいのか分からなかった。レギュラーアシスタントが揃い、仕事が安定するまで半年以上かかった。
・常にフルスイングで、記憶に残るような作品を描いていきたい。
技術面
・物語もアイデアもビジュアルから着想を始めている。
・シーンや食材のビジュアルを思い浮かべ、ストーリーやアイデアを作っていく。
・常に読者が最初に目にするビジュアルイメージを大切にする。
・キャラクター作りでも設定や性格よりもビジュアルが先にあることが多い。性格と見た目が一致していることを意識している。
・連載作品では引きを意識している。回の最後に続きを読ませる仕組みをつくり、次回作に読者を引っ張る仕掛け。引きのポイントは驚かせること。この先どうなっちゃうの!?と思わせる。
・冒頭のつかみも重要。ポイントは引きと同じく期待感や驚きの他に、今どこで何が起こっているのか一目で分かるようにすること。状況が伝わらないと読者はついて行けなくなる。
・おいしさを伝えるために擬音を活用する。映画における音楽の役割のように、マンガでも音の表現が重要。小さな音を見せるためにフキダシを使って見やすくしたり。
・シンプルな笑いを重視し、顔や動きを極端に変にしたり、ぱっと見で面白いと感じられる笑いを重視している。
・驚きの基本は「怖さ」。恐ろしい場面を描くときは普段使うGペンではなく丸ペンで細い線を重ねたり、普段とは違う違和感を出すように。普段は温和そうな人に恐ろしい表情をさせたり、読者に不意打ちを食らわせる。
・アクションを描く上で重視しているのがキャラクターの位置関係などの構図。シーンの動きの流れが一目で分かるようにして、読者の読むリズムをスムーズにしている。読みやすさがマンガそのものの印象を左右している。
・普段から図鑑や本を読むことで知識を蓄え、作品にウンチク話として盛り込むと作中の設定に説得力をもたらすことが出来る。
・いきなり下描きから入っても、頭の中ではネームの形になっている。
・ネームは昔も今も大変。無理に起きていてもアイデアが浮かばないときがあるので、眠くなったら寝る。
・大きなモノを描くときは、対比させるモノを一緒に描く。
・マンガ家になって良かったことは満員電車に乗らなくてもいいことと、好きで始めたことが続けられること。
DVDより
・下書きで線がビシッと入る訳ではない。スピード重視でどんどんあげていくイメージ。
・たまに全部見えなくなるくらい消しゴムで下書きの線画消えてしまう事もある…。
・ペン入れはなんとなくざっくりと。ガリガリ描くので線が汚くなってしまう。とにかくスピード重視。誰と戦っているのかっという感じでスピード重視。カラー原稿は後で色が入るから軽く線画を済ませる。
・色彩はキャラごとに塗る色が決まっている。新しいキャラは最初に色を決めるのが大変で時間も掛かる。トリコは顔が怖いので、肌を明るめに塗っていたり、明るめの服を着せたりしている。あまりキャラがキツくしすぎないようにしている。同じ青でも違う時もある。肌とか髪の色とかもうすこし違う色の時があり、その時の絵の感じ、色の気分だったりで変わっている。塗る数が多いときは、決まっている箇所の色の配置は保留して、他の所を優先して塗っている。
・コピックは、影の部分をぼかしてグラデーションを付けるよりは、ばきっとした感じの影の線のラインを引いてしまう。コピックはやりやすい方。未だに難しく、苦手であると感じている。
・スタッフと一緒に食事をしている。料理の資料がたくさん。猛獣、動物描くときの資料もよく使う。
・アシスタントさんはとは長い付き合い。最初の頃からいるので7年半ぐらいずっと変わっていない。和気藹々とやっていく感じ。
・映像作品から影響を受けている。
・原稿は求めるサイズがないので自分で手作りしている(ケント紙)。余白やスペースにちょこちょこ練習やアイデアを書きたい。余白に余裕がある方が好き。
・Gペンは筆圧が強かったので、すぐひらいてしまう。
・ネームは1分後に自分が分かればいい。
・ジャンプの連載については、ミュージシャンは何万人の前でライブをするのに対し、マンガ家は読者と会う機会こそないが、世界中の何百万人に読まれている。それが凄い。そこに連載出来ているのが嬉しい。
漫画家を目指す人たちへ
・マンガは、マンガを長くやっているプロでも難しくて、どうすればいいのか分からず大変な時もある。具体的にアドバイスするとしたら、描くこと。それ以外にないと思う。
・自分でマンガを描いて、自分で読んで、更に人に読ませて、人から客観的な意見を聞かないと先のステップにいけないと思う。時間が経つのはものすごく早いので、もうどんどん描いてください!
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