ジャンプ流 vol.22 浅田弘幸 テガミバチ 要約&まとめ

ジャンプ漫画家の創作の秘訣を探るジャンプ流。今回は月刊のジャンプSQ.の「テガミバチ」で有名な漫画家、浅田弘幸さんの創作の秘訣を探ります。浅田さんが漫画家になった経緯や、創作活動・クリエイティブ活動のヒントとなる知識をまとめました。

書誌情報 
「ジャンプ流 vol.22 まるごと 浅田弘幸」 集英社 2016/11/17

デビュー秘話

・幼稚園の年長くらい時、絵を描いた時に先生から褒められたことが絵を好きになったきっかけ。
褒められたくて絵やマンガを描き続け、幼い頃から漫画家を強く意識していた
・小学生の時に藤子不二雄A先生の「まんが道」を読んで、最初にマンガとはどういうものかを感じ取った。マンガを描くことに誇りを持っていいことを教えてくれた

・江口寿史先生の作品を読んで強く影響を受けた。
・高校卒業後は友人の話を聞いて、興味を持った理美容学校に入り美容の道へ。美容学校に通っているときもマンガは描き続けていて、マンガ家になりたい気持ちは捨てられなかった。
自分の気持ちと向き合い、中途半端な自分が嫌になって、まずは自分のやりたいことを精一杯やろうと思った
・一念発起し、バイトをしながら投稿用マンガを描き始めた。
・ずっとマンガは描いていたが、一本も完成させたことが無かったので、最後まで描ききることを目標に。
・月刊少年ジャンプに「幽界へ…」を描き、空き時間で描いた「その子のおつかい」も評価され、それぞれストーリー部門とギャグ部門で準入選と努力賞を勝ち取った。
・賞を取ったことは人生が変わってしまったと思うくらい、本当に嬉しかった。自分が思いきり打ち込めることで認められて、パッと自分の未来が拓けたように感じた
・受賞後は本格的に漫画家を目指し、アシスタント経験をすることに。たまたまその時アシスタントの募集をしていた小谷憲一先生とは家も近く、運命的なものを感じた。
一日中マンガだけのことを考え、他の同世代の人とマンガの話ばかりしながらマンガを描くという経験はとても貴重だった。悔しい思いをしたり、お互い情報交換をして切磋琢磨できた
・アシスタントのままではいけないと思い、ひたすら自分の作品を描いていたが、ボツが続いた。
・ボツが続き、もうどうにでもなれ、と半分悪ふざけのノリでオモチャとのタイアップ企画のマンガを描いたら、面白いマンガと認識された。それが初連載の「BADだねヨシオくん!」だった。

BADだねヨシオくん!


・担当の茂木さんは厳しい人で、月45ページは大変だとアシスタントの手配をお願いしたが、「アシスタントなんて10年早い、一人で描きなさい」と言われた。かなりスパルタに叩きこまれた。
編集者の予想を作者が超えることが大事
・描きたいこと、表現したいことを生涯追求していきたい。
絵は志を持って描き続ければ勝手に上手くなる。大事なのは、自分の中にあるものを表現という形にできるかどうか
いくら絵や話作りがうまくても、自分自身を込めた表現で無ければ読者には響かない
絵の上達には観察することが重要。日常の中で人の骨格やシルエットを観察して、それをどう自分のものとして表現し、伝えられるか試行錯誤していく

技術面

・ネーミングはぴったり来る語感を重視している。
キャラクター作りで重要なのは過去。そのキャラの過去にどんなことがあったのかを掘り下げていくことで、性格や中身がしっかりした動くキャラが出来る。
・男性キャラは体型や面立ちの骨格を意識することが重要
・服の着こなしで性格を表現していく。
・ギャグは物語をシリアスにし過ぎないように、物語を明るくする要素。
・先に絵とキャラ描写だけで伝わる唯一無二の世界を作っていく。説明・ナレーションは後。
・光と影の表現を重視。雰囲気演出にトーンをフル活用している。
・ベタもしっかり塗り込まれたベタと、かすれがあるベタとで使い分けている。かすれのあるベタは重くなりすぎない印象に。
・レイヤーマスクを重ねていく塗り方。デジタルでは試行錯誤の中で、自分が思ってもいない色が出てくることもある。
・独特の空気感はパソコンによるテクスチャーを利用した効果を活かしている。

DVDより

色鉛筆による作画
・洋服を着せる前に、そのキャラの裸と骨格を想像して描いている。帽子を被せるときも頭の位置や胸の位置などを意識している。
・作者は自分の物語に没頭しながら作業できる。
・色鉛筆で線画を描き上げ、最後の仕上げのカラーは基本的にデジタルで行っている。色鉛筆ならではの味を大切にしている。
・影の部分もカラーの前にだいたい色鉛筆で付けてしまう。フォトショップのレベル補正で少し上げて、コンピュータで合わせたときに影に見えるようにキチンと整える。
・こだわりすぎて描き込みすぎてしまうことも。

一色だと奥行きが出ないので、何色か重ねて色の深みを出していく。印刷には出ない色を好んでしまう。アナログで描いている頃は、浅田さんの絵は肉眼でしか見えません、色分解しないと見えませんと言われた。いくら苦しんで絵を描き上げても肝心の色が印刷で出ない事が多い。そのためコンピューターなら色味が出るのでカラーをパソコンで塗るようになった。変な色味が好き。
・白黒の原稿は薄墨使っちゃ行けない、つけペンで書かなきゃ行けない、と制約が多い。
カラーだと表現が無限なので、楽しんでカラーを描いている。でも色んな色を使うのは得意では無い。色数を絞ってその中で雰囲気ある画面をつくる。
・アナログで描いている時はカラーインクと透明水彩しか使わなかった。決めた色しか使わない。自分の中で制約をつけている。色の制約はフォトショップになっても変わらない。テガミバチはコンセプトから青と紫と自分の中で決めて、それを忠実に守っている。
・消しゴムで消せる色鉛筆を使っている。
・とにかく楽しんで描く。
・物語がないと絵が描けない、こういうシーンでこういう表情だ、というのがないと。
・色紙に書くような者を丁寧に書こうと。お話と言うよりは、カワイイの描きたいな。
・色鉛筆は自由だ。使う理由。消せる色鉛筆を使っている。
・パソコンに入れてフォトショップに仕上げていくので、影みたいなところが最初から入っていると、そこを活かして絵に重厚感が生きてくる。
防止だから色をつけますとかやっていない、普段は影だけ。色鉛筆楽しい。マンガも色鉛筆で描きたいぐらい。

・大林宣彦先生の作品に影響を受けている。
・マリア像の像をよく買ってしまう。子供の頃、お坊さんから女の神様がついている、と言われたことがある。なんとなく自分を守ってくれるイメージでつい買ってしまう。
・小学校の時読んだ「マンガ道」はバイブル。横浜に住んでいたが、上京する気になった。
・まず始めにネタ出しや世界観の設定、名称チェックや作品の世界観をしっかりと構築する。地に足ついてないと下絵が描けない。とにかく世界だけしっかり作って、個別具体的な内容は話の流れに合わせていく
キャラデザについては、結局は中身が一番大事。設定画は描かず、基本的には最初に出てくるコマ(マンガの流れ)でデザインを決めていく。

・ネームの前にシナリオを作っている。
月刊誌は一本の映画みたいに起承転結を作る

・ペン先は立川のGペンを使っている。堅いので疲れない。ゼブラのGペンは柔らかく、線に強弱がつくけれど疲れる。用途によってメーカーの使い分けをしている。
・ベタ用の筆ペン。ジャンプSQは印刷が凄くいい。筆ペンのかすれた感じがいい感じに印刷に出てくれる。

・カラーはデジタルで。塗りつぶしレイヤーなどで全体に色をいれ、消しゴムツールでマスクの穴を空けるようにして塗っていく。色は後からでも変えられる。色が乗るべきところにマスクを描けていくイメージ。(レイヤーマスクを使って塗っている。)
・実際に塗っているのは影と、ハイライト。白い光の部分だけ。後はレイヤー全面に色をベタっと塗っている。
・テクスチャを自分で作って、色んな乗せ方で検討したりしている。古い紙のシミがいい感じなので、切り取って取り込んだり、ジーパンを取り込んで、加工して背景の不思議な空気感の演出に使ったり。木目のかすれたラインを活かしたり。
・デジタル作業はハウツー本とか何も読まずにやってきたので、かなりオリジナルなやり方になっている。そのため基本的なことを未だに知らない。マスクって何?とか。自分の道具として使い方を発見してやっている。未だに発見があるから楽しんでやれている。

・ジャンプは月刊のほうでデビュー。画業30周年になるが、ジャンプにこれだけ長く居ながら週刊で連載をしていない。月刊誌の漫画家として、週刊の人とは違うことを描こうとやってきた。週刊の人よりもう1段階、2段階上を目指している。そういう感じでやってきた。

マンガ家を目指す人たちへ

・絵がどうのこうのというが、絵は描いていれば、志さえあれば勝手に上手くなる何を表現するか、自分の中でどういうものを表現するのかが一番大事。自分の表現として、一番気持ちいいところを探していくのが重要

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