「思い起こしやすさ」の心理学 簡単に思いつくモノほど重要と感じる傾向

思い起こしやすさ」について面白い研究があったのでシェアします。

簡単に思いつくものほど重要であると感じる

心理学者のノルベルト・シュワルツ(Norbert Schwarz)によると、人は「簡単に思いつくものほど一般的で重要なもの」として認識するといいます。人生の良い側面をテーマにした幸福度評価に関しての実験では、人生の良いところを12点あげるよりも、3点あげるように指示した場合の方が幸福度が高くなるのだとか。

良い点を3点思い浮かべるのは簡単です。
・恵まれた教育を受けた
・優しいパートナーと出会えた
・楽しい仕事に巡り会えた
など、人によって3つまでなら他にも色々と考え出すことができるでしょう。

しかし人生の良いところを12点も思い起こすとなると話は変わります。家族と仕事だけではなく、更に人生の個別で細かな点まで考えなくてはなりません。

この思いつくのに苦労したことが人生の満足度を下げるのです。自分はこんなに考えたのにいいところを思いつけなかったから、自分の人生なんてさほど意味が無いのでは…と結論づけてしまうのです。

たかが「想起のしやすさ・情報のアクセスのしやすさ」が人の幸福度・判断に影響を与えてしまうのです

私たちは生まれつきネガティブな要素に敏感

私たちは生得的に悪いところに目をつきやすいネガティビティバイアスを持っているため、悪いことであれば直ぐに思いつくことが出来ます。何か不満がある人や人生の満足度が低いと感じる時は、悪い側面ばかり考えてネガティブな面ばかりが想起しやすくなっている状態だと言えるでしょう。

想起のしやすさ」がキーポイントなので、悪い側面がすぐに思いつかなければ欠点がなく優れたものだと感じやすくなります。何かに飛び抜けて優れた人の欠点が見えなくなったりする社会心理学で言うハロー効果も、この認知する情報の「アクセスのしやすさ」に起因していると言えます(長所ばかり印象に残って長所を想起しやすくなっているから)。

情報の正しいか正しくないかは関係なく、その人の持つ情報に対しての「想起のしやすさ」が重要なのです。

別の側面から言えば、重要な目標や人生の価値観を直ぐに想起できるように明確にすることは、人にとってそれだけ重要だといえます。自分が何をしたいのか分からなくなったときに思考を整理するために具体的な目標を紙に書き出すのが有効だと言われるのは、思考を視覚化することで明確にし、情報のアクセスを高めているからだと言えます。

参考

「ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」が出来る時代」 アダム・グラント (著) シェリル・サンドバーグ (解説) 楠木 建 (監訳) 三笠書房 (2016/6/24)
ノルベルト・シュワルツ Norbert Schwarz (Wikipedia)
Norbert Schwarz, Herbert Bless, Fritz Strack, Gisela Klumpp, Helga Rittenauer-Schatka, and Annette Simons, “Ease of Retrieval as Information: Another Look at the Availability Heuristic,” Journal of Personality and Social Psychology 61 (1991): 195–202

 
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